KANCHAN'S AID STATION 4~感情的マラソン論

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2008別府大分毎日マラソン雑感~U-23世代の新ヒーロー

2008年02月09日 | マラソン観戦記
予想外のスポーツの結果に対して、「嬉しい誤算」などと言うのは、ある意味で失礼というか、自身の不見識を棚に上げた上から目線の言葉のような気がしてならない。

そんなわけで、今年の別大毎日マラソンは反省しきりである。参加メンバーの顔ぶれを見て、展望記事では「穏当な」表現をしたが、ストレートに
「こんなレース、全国放送するだけの値打ちがあるのかよ。」
と書こうかとも思ったのだった。それほど、少なかった。

これならむしろ、丸亀ハーフマラソンを全国生中継した方が、全国のマラソン・ファンには喜ばれてのではないかと思いつつ、そのレースに参加した帰りの車の中でラジオ中継を聞いていた。留守番録画はしていたが、「帰ってからのお楽しみ」にするほどでもないかなと思っていたのだ。

ところが、22歳の初マラソンのランナーが2時間11分台のタイムで優勝、日本人2位のランナーも初マラソン、という感じの良い結果だった。

優勝した旭化成の足立知弥は、一般参加。しかし、地元大分出身とあってか招待選手同様に紹介ビデオが作られていた。事前の期待は小さくなかったのだろう。

改めてビデオで見ると、見どころは多かった。

なにより、優勝した足立。結果がわかっているから言えることかもしれないが実にいい顔をしているなと思った。去年の福岡での佐藤敦之とも共通する、いい顔で走っていた。もちろん、「イケメン」という意味ではない。「マラソンを走れる顔」をしていた。

中間点過ぎて独走しながら終盤に失速したエリジャ・ムタイらケニアのランナーが母国の政情不安のせいか、ベストコンディションではなかったようではあるが、外国人ランナーも健闘していた。終盤の追い上げで足立に迫ったラシド・キスリ。モロッコのランナーというと、カリド・ハヌーシのように小柄というイメージがあるが長身のストライド走法の走りはかなり印象に残る。3位のウエストコット、いかにもオーストラリアらしい、筋肉質な体型だ。今後注目したいランナーたちだ。北京に出てくるだろうか。

招待選手たちが不振だった。野田道胤は途中で立ち止まりながらも7位でゴールしたものの、水口紀幸はリタイア。初マラソンで注目された太田貴之は24位完走がやっと。前述の日本人2位は4位の竹安昌彦。中電工のランナーとしてはメジャー大会初入賞ではあるまいか。ただし、前のナンバーカードが取れてしまっていたが問題はなかったのだろうか?6位は三菱重工長崎の渡辺洋一。このチームのランナーは必ずメジャー大会にきっちり入賞してくるが、サブテンや優勝には縁がない。今後のレースに注目しよう。7位には木庭啓。旭化成からエスビー食品に移籍し、今回がベストタイムだが、16分台で終わるようなランナーじゃないはずだ。

今年3月で休部になる地元の実業団チーム、東芝LSI杵築からは10年前に優勝した清水昭以外の全てのランナーが参加し、10位の宮崎時男はじめ全員が完走をした。1人でも、今後も競技を続けられることを祈りたい。

さて、優勝した足立だが、全くノーマークだったのは、今年のニューイヤー駅伝にも出てなかったからだろう。入社4年目で、ニューイヤーに出たのは2位になった昨年の6区を走った1度だけ。大分高校時代にはインターハイにも都大路とも無縁だったというが、彼のトラックの記録が目を引いた。5000mが13分47秒8、10000mが28分36秒31。

どちらも昨年マークしたばかりだ。これだけの記録を出しても、ニューイヤー駅伝に出られないというのが旭化成というチームの層の厚さだが、ちょうど今年の箱根駅伝を走った、彼と同学年にあたる4年生のランナーたちの中で、彼の記録を上回るランナーがどのくらいいるかと思って調べてみたら、

松岡佑起(順天堂大)、伊達秀晃(東海大)、北村聡(日本体育大)、上野裕一郎(中央大)

5000も10000も上回っているのは、この4人だけなのだ。一学年下にも、佐藤悠基(東海大)、竹澤健介(早稲田大)しかいない。

この例だけで、旭化成の指導が、箱根駅伝を目指す関東の大学のそれを上回っている、と断じるわけにはいかないだろう。よほど足立にとっては、旭化成の競技環境が相性が良かったとは言えるだろうが。しかし、今春実業団で競技を続ける伊達や松岡たちはこのニュースをどのような想いで聞いただろうか。

昨年、陸連は男子の長距離の強化に際し「U-23世代」に重点を置く方針を表明していた。その中心となるのは先述の学生ランナーたちだが、その中に高卒の足立が割って入ってきた感じだ。同年代のライバルだけではなく、同じチームの先輩たち、昨年の世界選手権代表でびわ湖で北京五輪代表を狙う佐藤智之や久保田満らにも影響を与えそうだ。

そのためにも、やはり次のレースが重要だ。谷口浩美さんや森下広一さんは別大で初マラソン初優勝だったが、谷口さんは次のマラソンで2位、森下さんは優勝した。このところ、日本人男子ランナーはマラソンに2回続けて勝てるランナーがいない。足立もまだまだ課題がある。5km15分ジャストのペースにも対応できるようになって欲しい。30km過ぎて解説の宗茂さんに
「もう足が止まってますね。」
と言われてからも崩れなかった粘りは大きな武器だ。

ともあれ、北京以後に希望が見えるレースになって良かったと思う。



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