伊良部一郎。精神科医。なぜかわからないが稀有の注射フェチ。この作品のいいところって言うのはほかにいろいろあるだろうけれど、とにかく僕は注射シーンがお気に入りなのです。ブックマークをしたいくらいに。よって私的に注射のシーンを抜粋します。
「さあ、座って、座って」着席を促された。どういうわけか、患者用スツールの前には注射台が用意されていて、それをポンポンとたたいた。いきなり注射? 公平は眉間に皺を . . . 本文を読む
伊良部一郎、医学博士、伊良部総合病院神経科勤務。注射フェチ。神経科のある総合病院地下はそんなに混雑していないというかガラガラなので人気の医師ではないようだ。患者が来るととにかく注射する。
「ストレスの原因を探るとか、それを排除する工夫を練るとか、そういうの、ぼくはやらないから」
とのことだ。こういった治療は「何の役にも立たない」らしい。かといって投薬をするわけでもなく、毎日注射はしているが、 . . . 本文を読む
本作はチチトランと読むらしい。間違ってもチチトタマゴとは読まないでくださいとのことだが、むしろ読者が牛乳と卵を連想することを狙った感さえあるように思われる。
さて、その内容であるが、母の豊胸手術とその子供の生理についての葛藤やら倫理観やら違和感などなどがひたすら語られる。私の想像力が稚拙なのか、いまひとつその切実さ、真剣さが伝わってこない。
この子供である緑子は母に口でしゃべることをせず . . . 本文を読む
脊髄小脳変性症によりなくなった木藤亜也さんの闘病日記である。彼女は先生に勧められたらしいが病気のときはどうも日記を書くものらしい。気づいたことを書き留めておくことは病気に対する防衛反応なのだろうか? あるいは何もすることがなくて暇だからだろうか? しかしインターネットなるものが現れた今日ではかなり多くの人がオンラインで日記を公開しているので誰でもすることなのかもしれない。
最初の2年くらいは彼 . . . 本文を読む
初洋書感想ですよ。作者はレオナルド=ディカプリオ主演の映画『ザ・ビーチ』の原作者らしいです。
主人公さんが殴られて気絶して昏睡状態になっちゃう話なんですけど。なんていうか自分の意識の中の世界というかそんな感じの世界を彷徨うんですよね。で、絵とかあって文章もそんなにみっちり書いてあるわけじゃないんで以外と読めるかなと思ったんですが最後のほう訳がわかりませんでしたwまあ現実と非現実が交差したような . . . 本文を読む
踏んだ蛇に蛇の世界に入ろうと誘われる話。蛇がお母さんになっちゃってでも母に電話をかけると母は居るみたいなとても変な世界なのですが、でもなんか違和感なく話が進んで行くみたいなちょっとおかしな話です。
古典的な雰囲気があるのですがでも古典はもっとユーモアに富んでいます。この作品はどういう意図で芥川賞なんやろう?ちょっと僕には測りかねまする。
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芥川賞作家は結構好きな人が多いのですよ。で、芥川龍之介はというと、これが初めてなのです。まあ短編集だから他にもいろいろ読みましたけどとりあえずこれ。文語調の文章がすごく芥川って感じがしますね。あの夏目漱石さんが絶賛したそうで龍之介は金之助よりも後の時代の人だったのですね。
で、内容はというと鼻の長い人の話で、どのくらい長いかというと一人で飯が上手く食えないほど長いのです。まあその人についての笑 . . . 本文を読む
事実を淡々と書き連ねることが好きだってーのは『門』のところで書いたので今回はこれ。
同じ町内にある、しかしたまにしか訪れることのない、母や兄夫婦や甥姪のさんざめく家に帰ると、どうもいけない。今さら嫁に行けだの仕事をやめろだの、言われるわけではない。その種の居心地のわるさを感じることは、とうの昔になくなっていた。ただ、なんとなしに釈然としないのだ。たとえば、身の丈ちょうどの服を何枚もあつらえ . . . 本文を読む
20世紀は自由主義と社会主義の対立の世紀である。(と思う。。)ヒトラーがマルクシズムを敵視し続けて最終的にソ連に侵攻したために第2次大戦は連合国(含ソ連)vs枢軸国(ドイツ)の色合いが濃くなっているが、もともとドイツ(と日本)はソ連と不可侵条約を締結しており、三国同盟は四国同盟になる可能性さえあった。ソ連の侵攻はイギリス攻略の行き詰まりの結果なのである。実際ヒトラーはその著書『わが闘争』の中で『 . . . 本文を読む