カイゾーのブログ - Kaizo's Blog

くだものナイフを片手に一人悪の組織と戦いつづける少年の日記(嘘)

夢を与える  綿矢りさ

2008-06-09 22:25:24 | 綿矢りさ
夢を与えるとは、他人の夢であり続けることなのだ。だから夢を与える側は夢を見てはいけない。 役者という誰もがあこがれる職業。幸か不幸か幼くしてその職に就いてしまった少女の物語。ある意味における人生の成功者をここまでかというほどに貶める。プラスのベクトルとマイナスのベクトルを同じ人間に同居させ、一次元的な良し悪し、単純な世界観を徹底的に排除する。平家物語の諸行無常か、ニーチェのニヒリズムか。とにかく . . . 本文を読む

インストール  綿矢りさ

2005-12-02 12:37:22 | 綿矢りさ
 小説のネタといえば愛か死だ。セカチューこと『世界の中心で愛を叫ぶ』は愛する人の死を書いた典型的な売るための小説だ。同期の芥川賞受賞者、金原ひとみの『蛇にピアス』は性と殺人という形で愛と死を語る。村上龍然り、山田詠美然り。村上春樹は少し違う気がするがでも彼の小説もまた性と死を書いていることは否定できない。  ところが綿矢りさは愛と死を意識的にか無意識的にか避けているようだ。だから愛と死にしか興味が . . . 本文を読む

You can keep it.  綿矢りさ

2005-10-30 17:54:04 | 綿矢りさ
 文庫版『インストール』のおまけ。姫のペンネームは本名ではないらしい。それでワタヤから思い浮かぶのはどうしても村上春樹の『ねじまき鳥クロニクル』に出てくる綿谷ノボルまたはワタヤノボルになってしまう。彼女がそれを意図したかどうかは知らないが、彼女が彼もしくはそれを知っている可能性は結構高いと思われる。  大階段に続く広い中庭には、もちろん日光は降り注いでいて、違う季節なら学生が座っているはずの白い . . . 本文を読む