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『新・本格推理〈02〉黄色い部屋の殺人者』 アンソロジー

2023年03月12日 18時49分56秒 | ■読書
本格推理小説の公募アンソロジー『新・本格推理〈02〉黄色い部屋の殺人者』を読みました。
二階堂黎人が編集、鮎川哲也が監修している作品です。

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『十角館の殺人』の登場から15年。
優秀な作家が斬新作を数多く発表しつづけたことで、本格推理はブームを越え、今やムーブメントとして定着した。
さて、次なる書き手はどこにいるのか?―今回、二階堂編集長のもとに応募された力編は約100作。
厳選された優秀作が必ず読者の期待を上回る。
過去の入選者が続々長編デビューする本格シリーズ最新作。
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論理的でフェアな謎解きに主眼を置いた本格推理の短編を募集する企画として発行された『本格推理』(全15巻)を引き継いだ『新・本格推理』の第2作にあたる作品… 2002年(平成14年)の刊行で、以下の8篇が収録されています。

 ■十年の密室・十分の消失 東篤哉
 ■恐怖時代の一事件 後藤紀子
 ■月の兎 愛理修
 ■湖岸道路のイリュージョン 宇田俊吾、春永保
 ■収録作家8人へのアンケート
 ■ジグソー失踪パズル 堀燐太郎
 ■時計台の恐怖 天宮蠍人
 ■窮鼠の悲しみ 鷹将純一郎
 ■『樽の木荘』の悲劇 長谷川順子、田辺正幸
 ■未来の大推理作家たちのために 二階堂黎人

さすが応募約100篇の作品から選ばれた8篇… どれも面白かったですねー

雪の降る山中で山小屋が幻のように消えていくという建物消失の大掛かりなトリックが印象的な東篤哉(この後、東川篤哉名義でデビュー)の『十年の密室・十分の消失』、

フランス革命後の時代を舞台にした独特の雰囲気を持ち、真っ暗な袋小路での不可解な殺人と結末の展開が印象的な後藤紀子の『恐怖時代の一事件』、

月から現れた兎(バニーガール)とちょっと惚けた味の探偵役とのやり取りが愉しくコメディー・タッチだけど、海水に浸された洋館の奇妙な殺人の謎を解くという、しっかりとした本格推理が愉しめる愛理修の『月の兎』、

クルマの消失という不思議な出来事の謎解き、単純だけど巧いなと感じた宇田俊吾と春永保の『湖岸道路のイリュージョン』、

チェスに関する蘊蓄とダイイング・メッセージ(アライヴ・メッセージ?)の使い方が印象的な堀燐太郎の『ジグソー失踪パズル』、

人間消失というテーマは興味深いものの、事件性がなくトリックが単純過ぎて物足りない印象で、シリーズ中の息抜きの一篇という感じの天宮蠍人の『時計台の恐怖』、

なかなか難しい誘拐モノを扱った作品で、現金受け渡しのトリックが印象的だし、サスペンスとしての展開や結末のひねりが素晴らしい鷹将純一郎の『窮鼠の悲しみ』、

1942年(昭和17年)の大連、旅順を舞台にした独特の雰囲気を持ち、雪に残った足跡や雪上に残された外套や中折れ帽子、黄金仮面のお面等の謎解きが愉しめ、結末にあっと言わせる長谷川順子と田辺正幸(この後、加賀美雅之名義でデビュー)の『『樽の木荘』の悲劇』、

甲乙つけがたい作品ばかりでしたが、どれか選べと言われれば、『窮鼠の悲しみ』と『『樽の木荘』の悲劇』かな、いずれも物語としての完成度が高く、ミステリ作品としてもホントに巧いと感じました… 『『樽の木荘』の悲劇』を読み終えて、鮎川哲也の『ペトロフ事件』や『楡の木荘の殺人』を読んでみたくなりました、、、

次点としては、ユーモアあふれる『十年の密室・十分の消失』と『月の兎』、独特の世界観を持った『恐怖時代の一事件』かな… 全てデビュー前の作家の作品のようですが、プロレベルの佳作ばかりでした。面白かった♪

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