戦争が廊下の奥に立っていた 白泉
句郎 「戦争が廊下の奥に立ってゐた」。一九三九年に渡邊白泉が詠んだ句だ。
華女 無季の句ね。
句郎 白泉がこの句を詠んだ二年後、日本は真珠湾攻撃をしているから。白泉は忍び寄る戦争を予感して詠んだのかもしれないなぁー。
華女 俳人は世の動きに敏感だったのね。
句郎 僕は芭蕉の俳句を読み、芭蕉は自分の生きた時代を深く深く経験したことを詠んでいるんだなと感じたことがあるんだ。
華女 どんな句にそんなことを感じたの。
句郎 例えば、「秋深き隣は何する人ぞ」。隣近所の付き合いが緊密だったであろう時代に孤独の影が忍びより始めていた。そんなことを感じさせる句だよね。
華女 でもこの句、「秋深し」じゃないのよね。
句郎 「秋深き」であっても、難しい言葉を使ってしまうと近代的自我とも言えそうなものが芽生え始めているんだなと感じるんだ。
華女 そう言えば、言えなくもないかなと思うわ。
句郎 そうでしょ。芭蕉もまた時代、社会に対して敏感に感じる人だったんじゃないかな。
華女 確かにそうなのかもしれないわ。
句郎 孫崎享さんの話を聞いたんだ。アメリカは初め日本に「旗を上げよ」と言った。日本が戦場に旗を上げたら、今度は軍隊を出せと言う。自衛隊を海外に派遣したら、次は血を流せと言ってきたとね。
華女 日本は戦争する国になり始めているのね。
句郎 今まさに、日本中の庶民の家の廊下の奥には戦争が立ち始めているのかもしれないよ。
華女 ホントにそうだったら、嫌ね。
句郎 アメリカは冷戦終了後、軍事費を削減し、そのお金を経済成長に使う選択もあったが、その道は選ばず、軍事力を維持し、世界に君臨する道を選んだ。その結果、経済力が弱体化してしまった。その結果、日本に軍事費の負担を強制してきているとね。孫崎さんは話していた。
華女 テレビのニュース番組を見ると日米同盟は大事だと言っているわ。
句郎 日本の政府は今、日米同盟ファーストだから。国民の生活より日米同盟が大事だから。
華女 そんなことないんじゃないの。
句郎 だって、年金は減額だし、医療費は今まで七五歳になると一割負担だったのが二割負担になってきているからね。
華女 消費税も増税よね。
句郎 そうでしょ。それなのに在日米軍への思いやり予算は年間七六一二億円も使っているみたいだよ。その予算も増えていくみたいだしね。
華女 そうなの。高齢者の医療費負担は重くしないでほしいわ。どうして軍事費を増やしていくのかしら。
句郎 中国や北朝鮮の脅威があるからだと新聞やテレビで言っているからなんじゃないかな。
華女 中国は軍事費を増やしているとニュースは伝えているわね。
句郎 だから私たち日本は軍事費は増やしません。軍事費は削減します。こういえば、中国は日本への脅威を感じなくなるんじゃないかな。
華女 それがいいのよ。その方が中国の人々の生活も豊かになるものね。