今日は息抜きに
ローマのキツネと日本のタヌキ
と言うテーマで書きましょう。
私は、この夏、ローマで野生のキツネの写真を撮ることに成功した。姿は何度か見ていたが、肝心の時にカメラを持っていなかった。この朝早く、芝生の上をゆっくり歩いている姿を見つけた。場所は神学校の敷地の中。距離にして50~60メートルはあったが、デジカメを構える気配でこっちを向いた瞬間をとらえた。そしてシャッター音でさっと姿を消した。まるで幻を見たようだったがたった1枚だが、映像は残った。神学校の周りには、キツネも、いたちも、ハリネズミもいる。広い牧草地と森に囲まれた郊外だから、当然と言えば当然だが・・・
ちょっと胸にキュンと来るような、そんな雰囲気感じしませんか。周りの牧草地は飼料用の麦の一種を植えている。その実を食べて野ネズミが繁殖する。その野ネズミをキツネが狙うという食物連鎖らしい。子育て中かもしれない。
夏休みに日本に帰ってきた。ローマに向けて関空を発つ前に、この春にアシジをご案内したご夫婦の家に泊めていただいた。少年時代からの夢、堺市周辺の天皇御陵、古墳群を案内してもらうことになった。最大の仁徳陵古墳を見た後、近くの御廟山(ごびょうやま)古墳に回った。住宅に囲まれた静かな堀には鴨やシラサギがいた。
この古墳、すんでのところで墳丘を崩し、濠を埋め、宅地に造成されそうになったそうだ。濠に橋を架け、そこを重機が渡ってまさに墳丘を崩しにかかろうとした時、住民の反対運動で造成工事が未然に防がれ、橋は破壊されて、以来太古の静けさを取り戻したという。車をおいて、宅地を抜けて、濠に沿って歩みを進めると、やがてその壊された橋が見えてきた。
おや?橋の上に何かいるぞ!・・・もう少し近づいて見て驚いた。どうやらタヌキ?ではないか。
馬鹿にどっしり落ち着いている。最初の写真のローマのキツネより尻尾は短いが太く、全体にポッテリ太って色も濃いい。目の周りが黒いのも、まさにタヌキそのものだ。目を移すと、あっ!まだいた。
こいつ、壊れたコンクリートの橋の上に、ポニヨッ と臥せっている。メタボ体質そのものだ。・・・おや、まだいるぞ。
こいつら一体ここで何をしているのだ?
もっといる! ワッ、いっぱいいる。
どいつもこいつも、まあ恥ずかしげもなくコロコロ太って。タヌキ汁にしたらさぞ美味かろうと思った。
お濠に守られて、天敵がいないせいか、実に平和な顔をしている。ひと山ほどある古墳のどこかに穴を掘り、餌になるものも豊富なのだろう。こんなに人里の真ん中にありながら・・・・。
わたしは、人を見てさっと姿を消したローマの痩せた孤独なキツネの方が、愛おしいと思った。
今回は、哲学も、宗教も、寓意も何もありません。ただ、野生の動物の写真だけ。たまにはいいでしょう?
《おしまい》