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主夫の徒然なるままに

毎日の夕食作りに奮闘する主夫の独り言

「あした死ぬ幸福の王子」飲茶

2024年07月09日 | 哲学
「あした死ぬ幸福の王子」飲茶著を読んだ。 副題は、ストーリーで学ぶ「ハイデガー哲学」



 この本を買いに走った理由は、2つ。
 飲茶氏の著書、特に哲学に関する多くの本は、読みやすく、分かり易く、おもしろいとつくづく感じていたからだ。特に、『「最強! 」のニーチェ入門: 幸福になる哲学 』などは、勇気づけられた人も多いだろうと推測される感動の本だと思う。
 もう一つの理由は、大学時代、若い教授にハイデガーの「存在と時間」を3回読めといわれて、懸命に3回読ん経験がある。その結果、わかったことは、2つ。ひとつは、何が書いてあるかほとんど理解できなかったこと。2つ目は、「お互いが理解できることは何か」をひとつひとつ確認しながら、一歩一歩話を進めるという途方もないしつこさを見せつけられたこと。
 とにかく、わからないまま。その教授の次の示唆を待っていたが、翌年、教授は、アメリカへ留学し、結局、2度と会うことがなかった。

 

目次に目を通すと懐かしさがあふれてきた。

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< あした死ぬ幸福の王子 >
目次
序章 宣告

第1章 死の哲学者

もし明日死ぬとしたら、何をする?
「死とは何か?」を考える前に
人間の思考の「限界」とは?
「存在」とは、思考の土台である
人はなぜ死を恐れるのか?

第2章 現存在

「人間とは何か?」ハイデガーの答え
人間は「いつか必ず死ぬ不幸な存在」なのか?

第3章道具体系

人間以外は、すべて「道具」である
「道具」がなければ、私たちは生きていけない
では、人間も「道具」なのか?
人はみな、「幸福な王子」として生まれてくる

第4章 本来的生き方

多くの人間が「非本来的」に生きている
人間と動物の「決定的な違い」とは?
「他者の視線」で人生を決めていないか?
死が持つ五つの特徴
死がもたらす「思いがけない贈り物」とは?

第5章 死の先駆的覚悟

大切な人の余命を知ったら、あなたはどうする?
死など忘れて、毎日楽しく生きてはいけないのか?
今この瞬間も「死」を覚悟して生きよ


第6章 良心の呼び声
「良心」がなければ、死とは向き合えない
あなたを襲う「無力感」の正体
何気ない日常の中で、目をそらしてはいけないもの
あなたにとって、「かけがえのない存在」とは?


第7章 時間(被投性と企投性)

「二つの時間」を比較する
過去とは、勝手に放り込まれた世界
未来とは、ひとつしか選べない世界
現在とは、無力さを突きつけられる世界
あなただけが選べる、たったひとつの可能性
人は「絶対に手に入らないもの」を求めている

第8章 世界内存在

「死の恐怖」とどう向き合えばいいのか?

終章 幸福の王子

エピローグ
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 まるで絵本を読んでいるような雰囲気で始まる。サソリに刺されて死ぬ運命の王子、「明日、自分が死ぬのだとしたら、それが〜」よくあるパターンの通俗小説のような出だしから、深刻さを増す限界状況を次々と経験し、物語が進行する。 ある老人との出会いから、ハイデガーの哲学を知る。物語が、哲学的になる。

 うまくストーリーにのせて、難解なハイデガーの哲学を一般の読者に分かりやすく解説してくれて楽しくなる。もし、「死」や「生き方」みたいなところでモヤモヤしているなら読む価値は大きいと思う。

 ーーー
 今思うに、「存在」という認識論が、「死」を境に、「どう存在するか」、つまり、どう生きるかという「倫理」の問題にすり替わってしまっていると感じる。そのため、ハイデガーも当時の「実存主義」哲学者のひとりとしてくくられるのだろう。ただし、第一次世界大戦と第二次世界大戦での数百万の虐殺と戦死を背景にした時代であれば、当然の哲学だったかもしれない。そして、今、第三次世界大戦前とも言えそうな現在に「私たちの存在」をもう一度、立ち止まって考えよう、とハイデガーが伝えているのかもしれない。










「ハンナ・アーレント」森分大輔著

2022年08月30日 | 哲学
映画「ハンナ・アーレント」が公開されたのは2013年頃で、10年近く前になる。アイヒマンの印象が強くて内容の記憶が曖昧であったので、この本を手に取ってみた。
 ハンナ・アーレントは、ドイツ生まれのユダヤ系哲学者、政治理論家。ナチス戦犯のアドルフ・アイヒマンの裁判の傍聴記録が有名である。


 現代の世界でプーチン率いるロシアがウクライナに進行しているが、これは、ナチスと同じ全体主義、帝国主義じゃないかと思っている人は少なからずいるのではないだろうか。 また、旧統一教会の激しい人間支配に全体主義・帝国主義を想起する人も多いのではないだろうか。

 政治学者・森分大輔氏によるこの新書は、「アーレントの思想」をわかりやすく描き出していると感じた。特に「『全体主義の起原』-人間性への軽蔑」、「『エルサレムのアイヒマン』-悪の凡庸さをめぐる考察」にはのめり込んで読んでしまった。
 
 なぜ、ロシアの人々は、自分たちの現状を全体主義と感じないのか。なぜ、旧統一教会の信者は、自分たちの行いの意味や価値を感じ取れないのか。そう思うならこの本を読んでほしいと思う。


 『19世紀末植民地を争奪する「帝国主義」→現地人を未開な野蛮人とする「人種主義」→植民地争奪戦に乗り遅れたドイツやロシアは、自民族の究極的な優位性を唱える「汎民族運動」→中欧・東欧の民族的少数者たちの支配を正当化する「民族的ナショナリズム」、ユダヤ人を異種と見る「種族的ナショナリズム」→反ユダヤ主義。→全体主義へ。
 モップ=20世紀初頭、環境の変化によって生じた自由競争の敗者、あらゆる階層から吐き出された脱落者。現代の一般大衆ともよべるある人々、例えば、トランプ崇拝者の白人労働者。
 モップの台頭→官僚制=組織に忠実であり、出世を第一義、歯車→思考の停止→人権の終焉。
 予言としてのイデオロギー→すべての人間を組織に組み込み、淘汰される人間をイデオロギーから恣意的に区分→決定に疑義を挟まない全体主義による社会の支配→秘密警察とテロ(暴力)、絶滅収容所へ。』

 「エルサレムのアイヒマン」は「悪の凡庸さ」として有名であるが、アーレントの精緻な考察は、読むに値する。常識的な判断を下す前にこの「悪の凡庸さ」を考え返さなくてはならない。


 今、世界を恐怖に落とし込めようとしている「プーチンの戦争」、日本に巣くう宗教と言う名のカルト。アーレントの「全体主義の起源」、その他の著作は、これからの世界に有益なものとなると確信する。




<ホテルでランチ>
じゃらんのポイントでランチしました。眺め最高!
下関グランドホテル、牛頬肉の赤ワイン煮込み。



<東洋の哲人たち「史上最強の哲学入門」> 飲茶著

2022年02月22日 | 哲学
 東洋人でありながら、東洋哲学に疎いことはよくあることで、例えば、西洋音楽は、詳しいが、日本の伝統音楽にはほとんど無知という人も多い。東洋の知的な偉人を知らないということは無いが、ほとんど名前だけしか知らないという人も多いはずで、私もその一人である。系統的に東洋の知の歴史を勉強できたのは、この本が初めだ。
自分なりに復習。

・・・・・・・・
◆インド哲学 悟りの真理
(1)ヤージュニャヴァルキヤ
東洋哲学の源流 自己の探求 
凡我一如(ぼんがいちによ) 宇宙と我の同一を知る=解脱(永遠の至福)を求めて(苦行へ)

(2)釈迦
中道 
自己の本質、真理→悟り 
四諦(したい)<苦から>→八正道(はっしょうどう)<正しい生き方>→無我
 
(3)龍樹
般若心経<色即是空、空即是色>=「物質には実体がなく、実態がないことが物質である」
空の哲学=あらゆる物事現象は相互の関係性で成り立ち、確固たる実態がそこに存在しているわけではない
般若=智慧→呪文へ

◆中国哲学 タオの真理
春秋戦国時代の群雄割拠のなかの必要性から「政治哲学」
(4)孔子
儒教「論語」 「仁」=他者を慈しみむ思いやりの心 「礼」=仁を態度で示す

(5)墨子
兼愛=ひろく あいする
(6)孟子
性善説 仁による王道政治 のちのルソーの政治に等しい
(7)荀子
性悪説→国家としての礼 国家の成すべきこと

(8)韓非子
法家(ほうか)の完成
書「韓非子」強い国家をつくるための政策をまとめた書
「形名参同」=言葉と事実を一致させる
→始皇帝へ
(9)老子
道家(どうか)
「道(タオ)」
「無為自然」 インド哲学と同等の境地
「上善は水の如し」 

(10)荘子
東洋哲学の最大の表現者=老子の後継者 老荘思想

◆日本の哲学 禅の真理
聖徳太子=日本の東洋哲学の歴史が始まる
最澄、空海=密教 呪術のもちこみ
法然の他力本願 念仏=南無阿弥陀仏(助けてください、阿弥陀さま)
(11)親鸞
他力本学+悪人往生 悪人にならざるを得ない現実の地獄だから他力が可能。
日本の誇る究極の 仏教哲学の境地=念仏
(12)栄西
考案=なぞなぞ→思考の停止
(13)道元
正法願蔵(しょうほうげんぞう)
只管打座(しかんだざ)=ひたすら座戦にうちこむ

西洋哲学とは大きく異なり、また、インド、中国、日本へと続く東洋哲学の流れについての最終章。

最後に、彼の著者名の由来が語られる。

・・・・・・

理想的な東洋哲学入門書に出会えた。嬉しい。


<主夫の作る夕食>
鶏の肩肉を使って照り焼きチキンを作ってみた。
スーパーで初めて鶏肩肉を見つけたので早速、購入調理してみた。美味しかったよ。



<思い出の一枚>
ラオスのお寺



「最強のニーチェ入門」飲茶

2022年02月16日 | 哲学
 飲茶著の「史上最強の哲学入門」を読んで、そのわかりやすさに感動したので、「最強のニーチェ入門」を読むことにした。「先生」と「女の子」の対話形式で進んでいく。以前読んだ「ニーチェが京都にやってきて17歳の私に哲学のこと教えてくれた。」原田まりる著の本(レビュー済み)となんとなく方法論が似ているけれども、こちらが「ニーチェ」一本に絞っている点さらに詳しくなっている。ただし、どちらも読みごたえのある、そして理解するのに面白い本であることは確かである。



 大学4年生の時に、出身校である北九州市の東筑高校で、倫理の教育実習をやった。今から考えると、あまりに無謀、あまりに無知だった自分が、この本によるところの黒哲学=実存主義を中心に「時間」についての説明をした。そんなことをした自分が、本当に浅はかだったとしか言いようがない。もし、その時、この本に出合っていたら、と思う。こうやってニーチェの哲学を説明をすれば、対象がニーチェであり、高校生であったのでどれほど受ける授業となったことか悔やまれる。
 
 後半では、著者と哲学、著者とニーチェので出会いが、述べられているが、それも素晴らしい。著者の実体験をさらしだすところに哲学とニーチェへの熱量がずしんと伝わってくる。とにかく、もっと早くこの本に出合いたかった。


<主夫の作る夕食>
大好きな青梗菜と水餃子のスープ



<思い出の一枚>
バレンタインデーにちなんで。
ブルジュハリファの世界一高い場所にあるレストラン、アトモスフィアでお茶の時間を楽しみました。


「史上最強の哲学入門」読みました(3)神様の「真理」(4)存在の「真理」

2022年02月05日 | 哲学
「史上最強の哲学入門」飲茶
第三章は<神様の「真理」>
第四章は<存在の「真理」>
ますます楽しく勉強させてもらった。


<3><神様の真理>
▼1. エピクロス   
― ストア派「禁欲主義」から「快楽主義」へ「普通でいいよ」「神様のことなんて気にしなくていいよ」

▼2. イエス・キリスト 
― ユダヤ教 選民思想 ⇒ 救世主イエス 「汝の隣人を愛せよ」「神の愛を信じて生きよう」

▼3. アウグスティヌス 
- 懺悔的教義 私たちは自ら罪深い存在であることを認め、神の慈悲によって救われる =>誰でも実践可能な大衆的(みんなの)宗教となる

▼4. トマス・アクィナス 
― スコラ哲学  神学VS哲学 哲学は神学のはしため(哲学の上に神学がある)

▼5. ニーチェ 
― 宗教や道徳は弱者のルサンチマン(恨み) 
― 神は死んだ 超人思想 力への意思 永劫回帰
―「宗教や道徳に頼らず、自分の力で後悔することのない自分自身を生きる」


<4><存在の「真理」>

▼1. ヘラクレイトス
―「存在」は変化する 万物流転説

▼2. パルメニデス 
― 「存在」は変化しない 万物不変説

▼3. デモクリトス 
―「存在」は原子でてきている 原子論 =「存在」の変化と不変を統合

▼4. ニュートン 
― 原子論の存在から2000年を超えて、ニュートン力学が地上でも天空でも「存在」は、同じ法則で動く。 科学の神様=万有引力の法則

▼5. バークリー 
― 人間の精神が知覚するから物質が存在する

▼6. フッサール
― 主観的な意識体験=「現象」から、どのような人間の判断が作られるか=「現象学」
― 人間のどんな考えや理論だろうと「こういう意識体験からこう考えた」という形跡に還元=現象学的還元  存在の起源にもどる

▼7.  ハイデッガー 
― 存在と時間 =「存在を問いかける人間とはいったい何か」⇒「人間は自らの死を自覚することで人間になる」  ⇒ 「存在なき存在論」、「人間哲学に」

▼8.  ソシュール 
― 記号論 =言語とは、差異(区別)のシステム」
― 存在とは存在に「価値」を見いだす存在がいて、はじめて存在する

 
非常にわかりやすい口調で解説する哲学入門書、勉強になりました。
<神様の「真理」> 日本人にはわかりにくい宗教の問題、特にキリスト教をとりまく歴史の混とんは、ニーチェの登場によって滅多切りにされるのだが、この著者のニーチェの解説本を読んでみようと思った。

<存在の「真理」> 「存在」とは何か? 「存在する」とはどういう意味か。なぜか魅了するこの問いかけに多くの哲学者が戦いをいどんだ。その戦い、じつに面白いと言ったら怒られるだろうか。

楽しい一冊に出会えて幸運でした!



<主夫の作る夕食>
チーズ入り鶏の揚げ物 大根葉






<想い出の一枚>
北京 鳥の巣