北信濃寺社彫刻と宮彫師

―天賦の才でケヤキに命を吹き込んだ名人がいた―

■01A 問御所町屋台(長野市) ながの祇園祭

2018年06月24日 | 01 山崎儀作

明治6年に山嵜儀作(長野市妻科)によって作られた、問御所町の屋台です。2018年(平成30)のながの祇園祭では置き屋台として披露されます。儀作の作った彫物を中心に紹介します。

後方破風入の鬼女の拡大 顔の表情、指も繊細に表現されています。

 

屋台全体像

1.腰巻部分 (赤い部分) 題材「近江八景」。前後に2枚、左右側面に6枚、計8枚。左右表記は進行方向に対して。

 

 

腰巻① 左側面後部「瀬田の夕照」 琵琶湖にかかった橋。瀬田橋の左には旅人。

腰巻② 後方部「唐崎の夜雨」 有名な琵琶湖畔の唐崎社の松に雨がかかっています。大きな一本松と雨。

腰巻③ 前方部「三井の晩鐘」 右に三井寺(みいでら)。その左に鐘楼。(中世、長野の善光寺は三井寺の末寺でした。)

腰巻④ 右側面後部「比良の暮雪」 ふっくらと地面や、木に雪がつもっている風景です。右奥は比良山系。

腰巻⑤ 左側面中部「粟津の晴嵐」 琵琶湖の岸辺のお城(膳所城・ぜぜじょう)。膳所(ぜぜ)から瀬田までの松並木に強風がふきつける場面。琵琶湖では漁をしている舟。

腰巻⑥ 右側面中部「堅田の落雁」  浮御堂の脇の田に雁が休んでいます。

腰巻⑦ 左側面前部「矢橋の帰帆」 琵琶湖で漁を終え、矢橋の船着き場に舟が帰ってきます。

腰巻⑧ 右側面前部「石山の秋月」 大津にある石山寺(いしやまでら)と月(下の囲い部)

近江八景は、琵琶湖は当然ですが、神仏混合時代の比叡山延暦寺と日吉(ひえ・ひよし)神社とも縁が深い場所が多いです。

三井(みい)寺は同じ天台宗の延暦寺と親密な関係(時に敵対関係)で、日吉神社の山王祭は、唐崎神社、膳所(ぜぜ)に関係します。山王祭と日吉神社の由緒を理解すると、もっと深まると思いますが、ここでは省略。

*山嵜儀作は、明治22年頃に佐久の蕃松院本堂の欄間「近江八景」を手掛けています。以前のGooブログ参照ください。

https://blog.goo.ne.jp/jinnsoinn/e/77e05cacd3078a1ed8561afeae83fd72

https://blog.goo.ne.jp/jinnsoinn/e/68669812dfd4231f1eed2474cce677a8

 

2.破風入と欄間

前面)「素戔嗚命の八岐大蛇退治」。 下の欄間には八つの龍頭と三つの酒樽があります。素戔嗚命の左にはクシナダヒメがいます。

この欄間は、他の欄間の「龍」と意味が異なります。よく見ると8つ顔があります。

 

・拡大 スサノオノミコトとクシナダヒメ

 

下の欄間部「八岐大蛇」

八岐大蛇の頭 (丸部)   計8つ。

 

 

後面)「鬼女紅葉伝説」 長野市鬼無里に伝説が残っています。鬼無里には、紅葉のゆかりの場所が今も残っています。

山嵜家に残された下絵(同寸法) 右の鬼は抜けています。

 

 

・拡大 鬼女紅葉の髪をつかむ平惟茂(これもち)。背景も紅葉です。

 

3)欄間(緑色部分) 前後にも欄間あります。 題材は「龍」。龍が単体と複数いる欄間があります。

 

 

4)蹴込(けこみ)(水色部分) 前後左右の4枚。 題材は「水鳥」。

 ・拡大

 

5)前方部の天井    題材は「鳳凰」(金箔)。

 

6)懸魚(げぎょ)  「菊」「桐」

 

*2018年7月6日に組み立てられ、7-8日にトイーゴ広場に置かれます。是非、近くで山嵜儀作の彫物を満喫してください。

また、8日に置き屋台で披露される東町屋台、巡行される西後町の屋台も山嵜儀作のものです。


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