新古今和歌集の部屋

鴨長明方丈記之抄 大原出家2 又百分が一に及ばず


ふれば、又百分が一だにも及ばすと。かく

いふ程に齢はとし/"\にかたぶき、すみかは折〃

にせばし。其家の有様よのつねならず。ひ

ろさはわづかに方丈、たかさは七尺がうち也。

所をおもひさだめざるがゆへに地をしめて

作らず。土居をくみ、打おほひをふきて

つぎめごとにかけがねをかけたり。もし心に、か

なはぬことあらば、やすく外に移さんが為

也。其改め造る時いくばくの煩ひか有。つむ

所わづかに二両也。車の力をむくふる外は

更に用途いらず。いま日野山の奥に跡

 
 
 
ふれば、又百分が一だにも及ばすと。かくいふ程に、齢は年々にかた
ぶき、栖は折々にせばし。その家の有様、世の常ならず。広さはわづ
かに方丈、高さは七尺がうち也。所を思ひ定めざるがゆへに、地を占
めて作らず。土居を組み、打覆ひを葺て、継ぎ目ごとに、掛け金を掛
けたり。もし、心にかなはぬ事あらば、易く外に移さんが為也。その
改め造る、いくばくの煩ひか有る。積む所、わづかに二両。車の力
を報ふる外は、更に用途いらず。いま日野山の奥に跡
 

(参考)前田家本
ぶれば、また百分が一に及ばず。とかくいふほどに、齢は歳々に高く
すみかは折々に狭し。その家のありさま、よの常に似ず。広さはわづ
かに方丈、高さは七尺がうちなり。所を思ひ定めざるが故に、地を占
めて造らず。土居を組み、内覆ひを葺きて、継ぎ目毎に、掛け金を掛
けたり。もし、心に叶はぬ事有らば、易く他に移さんが為也。その
改め造る、幾許の煩ひかある。積む所僅かに二両也。車の力
を報う程には他の用途要らず。今、比叡の山の奥に跡
 

(参考)大福光寺本
フレハ又百分カ一ニオヨハス。トカクイフホトニ齢ハ歳々ニタカク
スミカハヲリヲリニセハシ。ソノ家ノアリサマヨノツネニモニス。ヒロサハワツ
カニ方丈タカサハ七尺カウチ也。所ヲゝモヒサタメサルカユヘニ地ヲシ
メテツクラス。ツチヰヲクミウチヲホヰヲフキテツキメコトニカケカネヲカ
ケタリ若心ニカナハヌ事アラハヤスクホカヘウツサムカタメナリソノ
アラタメツクルイクハクノワツラヒカアルツムトコロワツカニ二両クルマノチカラ
ヲムクフホカニハサラニ他ノヨウトウイラス。イマ日野山ノヲクニアト

 
ふみつくえ 文机也。
 
すびつ 㷁?也。
よすが たよりなり。
 
ひめがき すこしきかき
 なり。
 
 
名を外山といふ。正木のかづ
ら 古今の大うた所の中
 
 
※ひめがき迄の部分は、流布本にのみ存する文の解説。
 
※古今の大うた所の
古今集巻第二十 大歌所歌 神遊の歌
 取物の歌
深山にはあられ降るらし外山なる正木のかづら色づきにけり
 
 
大原音無の瀧
 
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