『アインシュタインの相対性理論』 M. ボルン,東京図書
● 第VII章 6. 数学と実在
こうして問題は,公理の起源に帰着される.公理は点,直線,平面その他の概念について厳密に成り立つ少数の命題を含んでいる.これらは普通の科学あるいは日常生活の命題とは異なり経験に源を発していない.したがって,これらの命題が絶対的に確実であることを保証する根拠はこれ[経験]以外のところに求めなければならない.カント(1781年)によれば,時間と空間は直観の形態であり,アプリオリ,すなわち,すべての経験にさきだち経験を可能ならしめているのである.
[・・・ ではあるが,このような哲学理論に判断を下すのは差し控えるとして ・・・]
わたしたちが扱うのは空間と時間の物理学であり,知識の源としての直観から離れようとしている科学であり,直観よりももっと精密な規準を要求している.
したがって,実際に主張されているのは,空間(実は時空)における一致,すなわち認識可能な2つの物質の点が同時刻に同一場所に重なる,ということだけである.
[・・・]
ミンコフスキーの言葉でいえば,これは物質の世界線の交叉によって時空連続体のなかに記録された世界点である.物理学はこのような``記録された世界点"の間の関係を論ずる学問である.
数学理論はこれらの関係を論理的にまとめたものである.
現実の世界に適用できる学説としての幾何学は,物理学の他の分野にくらべて特に有利な地位を占めているわけではない.物理学の他の分野におけると同様,形の概念もまた物体の現実のふるまいと同じやりかたで条件づけられている.幾何学に特別の地位をあてがうことはできない.
直線は定義により光線,慣性運動の軌道,剛体を固定された2つの点のまわりに回転するときの不動点の集合,その他の物理的ななにものかである.このように定義された直線がユークリッド幾何学で主張されている性質をもっているかどうかは,経験によってのみ決定される.
●7. 時空連続体の計量
[粗筋] 4次元連続体にガウス座標を導入すれば,一般相対性原理より広い前提が形式的には含まれている.この相対化の一般理論(数学的方法)を,物理学的考察,特に等価原理と結び付けなければならない.
適当に基準系を選べば,世界の任意の箇所で十分小さな領域に対して,重力場を消去することができる.このような基準系は無数にある.それらは互いに等速直線運動をしており,そこでは特殊相対性理論の法則が成立する.
この小さな領域では
G = s^2= x^2+y^2+z^2-(ct)^2
なる量は不変量であり,[・・・] 世界線OPが空間的なら,sは2点O,P(x,y,z,t)が同時的となる基準系で測ったOPの距離であり,時間的ならs=ictであり,tはOとPが同一場所で生起する基準系でのOとPの生起の時間間隔(4次元間隔という)である.
一般相対性理論によれば,物理法則はガウス座標の任意の変換に対する不変式で表される.
*ガウス座標
曲がった曲面(例えば,紙を水でぬらして,まるめてから広げて乾かしたような感じの,シワシワになった平面)では,無限小の領域ではユークリッド幾何が成り立つが,より一般的な理論が必要となる,曲線群で網の目のように覆ったとき,縦横に当たる曲線にそれぞれ番号を割り当てる.網目の結び目は縦横にあたる曲線の番号の組で与えられる.このような曲面上の点の指定方法をガウス座標という.ユークリッド幾何学は典型的な遠隔作用理論であり,ガウスの曲面論は近接理論である.近接作用と場の理論に基づく理論にはガウスの理論にならったものが要求される.
※ こういうことから,ガウスが三角形の内角の和が本当に2直角であるかどうかを測量で確かめようとしたという話が逸話になっているのかも知れない.
* 一般相対性原理
真の物理法則は,任意に運動するすべての基準系でまったく同じ形をとらなければならない.これは特殊相対性原理の拡張を意味する.
* 等価原理
重力質量と慣性質量の一致の法則.