重力を,無限の淵をたどって,われわれの地平へ戻ってくるのだが,そこは,何か異常な,禁忌の領域であり,孤立した点である.というように,われわれの地平に張られた了解を破るものであるとイメージしてみる.あるいは,そのような世界を,技術が制御可能であり,産業化できるなら,放射能を原理的に除去できる可能性もあるのかもしれないが,大げさにいえば,宇宙を飲み込む程のブラックホールを実験装置で作り出すことが簡単にできるようでなければ,不可能である.放射能というものは,そう考えていいだろうか.正しくは,それは,プランク質量に相当するエネルギーをということだろうか.つまり,放射能の本質と,われわれが放射線に対して抱いているイメージの大きなズレが問題なのだろうか.
もちろん,放射能現象がなければ,物質も生物も存在し得ないという意味では,なくしてもらっても困るのではある.原子爆弾や原子炉から放出された放射性物質の除去とはレベルが違うのだろうが.科学者が,科学者としての態度を放り捨てて,科学の悪用に専心するなどということはあってはならないが,原発だけでなく,経済でも政治でも,そういう風潮を感じる.ウムウムである.安易にお膳立てに走り,安易に自らの保身や利便に制度を悪用する.それは,ひいては,ご都合人脈のねつ造共犯で,学問が形成されることにさえなるかもしれない.学会も,ねつ造人脈の下部機関でしかなくなる可能性もある.ウムウムである.例えば,ソ連の国家機関が,アメリカの軍がそういうことをやるとしたら,誰がそれを正せるだろうか.もちろん,そういう危険もはらんでいるが,おそらく,実際には,そこまでひどいことは珍しいのだろう.無限に延びた線を実際たどることはできないが,人間のやることは,大方は,見渡せる範囲で,ごまかそうという程度のことではなかろうか.
質量というものは,ある意味,解析的延長の限界の保存を示す量と考えることもできるだろうか.例えば,電子とミューオンのように,質量のみの異なる,重複する粒子が存在するということは,あるいはワールドシートもそうだろうか,そのような延長が,粒子質量のみの違いとして,その限界が保存されることを意味していると考えられないだろうか.相互作用の統一のためには,それを媒介する重い粒子が存在するということから,重力の作用が,相互作用の微細な構造的な破れを通じて,影響してくるというシナリオにも見える.それはまた,重力の影響による,時空構造が混合的に様々なモードをもっていて,それが基幹となる構造をめぐって絡みあっているというイメージになるだろうか.
重力の化身は,おそらくそういうところに現れる可能性があるということになるから,GPSの機能をもった重力化身の出現位置情報探査システム付き携帯端末というデバイスもあってもよさそうである.
エネルギーおよび運動量の保存則が,場の反作用という形で,特定の観点では保存則を破るものを,一般性へ拡張する役割を果たしている,というように,物質の存在しない重力場の方程式から物質の存在する重力場の方程式への拡張(ニュートンの△φ=0に対応する方程式からポアッソン△φ=4πKρに対応する方程式へ)で,(「物質のエネルギ-・テンソルの導入の仕方」に、従って「方程式の形」に)制限を与えている,と読んでみる(アインシュタイン『一般相対性理論の基礎』).E=mc^2という有名な式は,宇宙方程式(物理の統一方程式)という文脈においては,何を意味しているのだろうか.陽子崩壊やニュ-トリノ振動あるいはレプトン振動のような問題ともつながっているということだろうか(ワインバーグ「陽子崩壊を探る」).対称性や保存則が物理方程式の形に根拠を与える制限の役割をしていると書かれてある(『素粒子論』など). 解析性の保存は,どうなのだろう.その物理的必然性の理論がワールドシートということだろうか.複素数場.
ストリング理論,超ストリング理論ときて,M理論が最も有望な超大統一理論の候補であると認められるようになってきたと,ストリング理論やM理論の研究者は言っている.ストリング理論は南部博士らの提唱らしいが(ある意味では),クォークのバッグ模型もストリング・ブラックホール情報理論の先駆けなら,それも南部博士らに起源を負うということだろうか.
ストリング理論だ,M理論だ,超大統一理論だと,小難しい理論を,僕ちゃんはちゃんと判るけど,ひがみ屋の連中がいるから気をつけなくちゃ,なんてさもしい動機ではない.などと余計な言い訳を付け加えておこう.もちろん,難しくて,よくわからないのである.物理専攻の学生でも,ストリング理論の基礎のための数学や物理の知識を習得するのに何年もかかる上に,その間には,当の理論はさらに理論的進展を遂げていて,なかなか追っ付かないということらしい.場の粒子は電磁場の粒子である光子のように,スピンが整数(つまり,ボーズ粒子(ボソン))で質量が0であるが,そのような場の粒子は,光子と重力子以外にはないとか,そうであるはずの場の粒子が何故異常な質量(重さ)をもつ粒子になるのかとか,言葉としては,素人でも(私でも)感じは掴めるのであるが.非摂動的な双対性の発見が,ストリング理論の根底に,11次元表現であるM理論が唯一の理論として横たわっていることを納得するだけの根拠を与えるとかなると,そういうものだろうと思うしかないのである.
そもそもstring理論は,その,1次元の振動する弦すなわちstringの特定の振動(あるいは量子状態)を特定の粒子に対応させるというstring相互作用の描写は,K中間子の謎に起源をもつということだろうか.対応する相対性理論的な対象として,時空の光円錐があるということだろうか.ボーズ粒子とフェルミ粒子の区別の統計性を物理の本質的な情報性として改変するという意味もあるのだろう.一般相対性理論と量子力学を調和させる,すなわち統一することに伴う克服すべき幾つかの問題のなかに,摂動論でどうしても消せない発散の問題がある(ultraviolet divergences).摂動展開の次数を増していっても,ニュートンの定数が長さの二乗に比例することから,どうしても発散を取り除けないからだそうである.さらに,ストリング理論には,stringのもつ無限の自由度に伴う零点振動に起因する無限大というような,無限の内部自由度に起因する新たな発散が現れるそうである(『素粒子論』).
【コーヒーブレーク】
景色を眺めながら,あれこれと思いに耽る.木々のざわめきに,小鳥たちのさえずりにうながされて,心の中のさざ波が心地よく音のない音楽を奏でている.などと,平和な気分で,ものを考えることが通常あり得るだろうか.観察の中に貫入し,その揺り動かしの気ままさを見極めながら,あるいは,移り行くシーンの連続の中で,あるいは,いくつもの屈折を経て,再来したシーンを突き抜けて,ものごとを考えている自分を見出すことの方が普通ではなかろうか.そういう移り行きの軌跡にへばりついた自分の意識の影を,見つめる自分を形づくっていく,<思い>とはそういうものではなかろうか.<思い>においては,<点>とは,いかなるものなのだろう.伸縮する軌跡,その時空の構成において要請される<点>という概念は,どういうものになるのだろう.流転における点をつなぐ軌跡の内的な闘争をストリングとよぶのだろうか.弦は奏で,奏でられる音は様々な音楽を作り出す.私の音楽への苦手意識の原因には,多分,ストリングの闘争的本性が根底にあるからだといえないだろうか.音楽の先生なら「といえない」と評価するだろうが.
stringのスケールとして,またコンパクト余剰次元を特徴づけるスケールとして,プランク・スケールが目安だから,プランク・スケールがどれ程のものかみてみると,
プランク長=1.6×10^(-33)cm、
プランク時間=10^(-48)秒,
プランク・エネルギー(質量)=1.2×10^{19}GeV/c^2,GeVはギガ電子ボルトすなわち10億電子ボルト.
である.例えば,プランク長は,次元解析によって,光速c,ニュートンの重力定数G,プランク定数h(ここではディラック定数h/2πをhで表す)から長さの次元をもつように組み合わせたもの(√(hG/c^3))である.ストリング理論は,重力を含む相対論的量子力学理論であり,stringは長さのスケールで特徴づけられる.また,プランク・エネルギーは,強い力と電弱相互作用が統一されるエネルギースケール10^(15)GeVから10^(16)GeVに近いらしいが,2,3桁から4桁ほど違うようにもみえる.陽子質量がおよそ1GeV/c^2弱である.
加速器で,粒子同士を衝突させて,元の粒子がどのような粒子に崩壊するかとか,どのように崩壊するかとかを調べるのが,加速器実験であるなら,高いエネルギーで観測するということは,ほとんど当たりそうもない的同士を衝突させなければならないから,大量の粒子の光速ビーム同士がたまたま小さいな衝突領域で衝突した結果を検出して,それを解析することから,割り出していくということだと,簡略な説明ではなっているから,100GeVから数Tev(テラ電子ボルト)あたりの加速器の限界エネルギー領域で,検出可能にするというのは,難しい.が,可能性があるらしい.ヒッグズ粒子あるいは超対称粒子の検出ということが,その例であるということである.
「プランク・エネルギーより低いエネルギーでは,プランク長より短い距離に分解できないから,ストリングは点と見なしてもかまわない.このことが,素粒子を数学的点として扱う通常の量子場の理論が成功した理由となっている」.
『数学辞典』から,特殊相対性理論について,斉次Lorentz群(homogeneous Lorentz group)と非斉次Lorentz群(inhomogeneous Lorentz group)について,簡単にみてみる.
4次元擬ユークリッド空間で,基本形式が
ds^2 = g_{ab}dx^adx^b≡cdt^2 - dx^2 - dy^2 -dz^2
x^i =(ct, x, y, z)
で与えられるものを,Minkowskiの世界とよび,その運動群は非斉次ローレンツ群とよばれる.その元は
x'=c_a^ix^a+c^i
g_{ab}c_i^ac_j^b=g_{ij}
の形に書かれる.c^i=0とおいて得られる変換はローレンツ変換とよばれ, それらの作る群Gを同次ローレンツ群(homogeneous Lorentz group)とよぶ.Gの単位元の連結成分をG_0とするとき,剰余群G/G_0は(2,2)型で位数4のAbel群である.G_0を固有Lorentz群という.
「stringが運動するにつれて,時空に2次元[超]曲面を描くが,それをstringの描くstring world-sheetとよぶ.ストリング理論における摂動展開は,様々な位相をもつstring world-sheet を含んでいる.string理論における相互作用の本質は,world-sheet上の局所特異点の結果というより,world-sheet位相の結果であると理解される」.「stringが運動するにつれて,時空に2次元曲面を描くが,それをstringの描くstring world-sheetとよぶ」の部分は,`As a string evolves in time it sweeps out a two-dimensional surface in space-time, which is called the string world sheet of the string.'である.細かい含意がありそうだが,おおざっぱな訳である.
原子核の粒子,陽子と中性子を核子としてつなぎとめる力である強い力(強い相互作用)は,湯川の中間子論で,その機構が明らかにされたが,すべてを説明する理論というわけではなく,その後生じてくる様々な謎を解明する鋳型のようなものであるから,さまざまな予測を超える事態の解明のための理論の試みの中で,検証されていく宿命の理論である,というようにいえるだろうか.クォーク理論や量子色力学,string理論がそのような検証の結果を踏まえながら,生じてきたとしても不思議ではない. string理論は1960年代後半に,クォークを陽子や中性子としてつなぎとめる力を説明する(量子色力学(Quantum Chromodynamics)がその理論)とともに核力(核子の粒子をつなぎとめる強い力)を説明するために生じたものであると書いてある.
関連する事柄として,「Galilei変換からLorentz変換へ」ということがあるだろうか.(狭義の)Galileiの相対性原理は,「力学現象の法則は,相互に一定速度で運動する異なる観測者の間で共通の形でなければならない」というものだが,異なる観測者の座標の間の関係を表す式をGalilei変換という.Maxwellの方程式(4個の連立偏微分方程式)を,電気場の力のベクトルEと磁気場の力のベクトルHの代わりに,Maxwell方程式から存在が保証される,ベクトル・ポテンシャルAとスカラー・ポテンシャルφを使って書き直すと,Maxwellの方程式はd'Alemberの方程式の形になる.この方程式がGalieiの相対性を満たすかというと,満たされない.そこで,Galilei変換の本質を残して,d'Alemberの方程式の形を保存するような変換を採用する.それをLorentz変換という.Galilei変換からLorentz変換への発展が内蔵している時空概念の変革をEinsteinがとりあげ,特殊相対性理論そして一般相対性理論の構築に進んだ.(『古典力学II』). このような変革に当たるものが,ファインマン図から位相スケールへという,トポロジーの変革のような感じになるのだろうか.
---> エントロピーの流れと近傍系の改変という感じで,ストリング理論では位相概念を処理する見方が必要とされているということだろうか.時空の双対性というのは,時間を空間化して得られる理論と空間を時間化して得られる理論の間に区別が生じないという感じなら(そういう対称性は破れているらしいが),そういう対称性の破れによる双対性を保つ変換はエルゴード性をもつなどというのは,といっても,こういう結果があるのかないのかさえ知らないが,ありそうな感じもあるから.はったりで感知してみました.双対性の典型的な例は,ディラックの磁気単極子の理論であるというし.そういう双対性による制約が,M理論を生み出すものとなったという感じでもあるし.双対性が[行列]表現を選ぶという感じだろうか.
流れというイメージには,そのもとにある時空との結びつきが破れるような感じがあって,理論から破れをもたらすような対象を区別して作られる同等な双対な理論が伴っているんだというところが,対称性と双対性が異なるところなのだろうか.σ有限とか,モジュライとかそういう関連だろうか.
string理論は,しょっけから,近傍だの位相だの双対性だの,質量の縮退だの,コンパクト化だの,モジュライだの,SO(32)だのE8だの,が絡み合っていて,当たりつけないと,判りにくいから.スピンはめぐって変遷して,string理論の理論構成を支えているような感じだろうか.
双対性が,無限小の微細な空間をトーラス空間に埋め込むようにして,リーマンの量子空間を構成する手続きとなっている感じがする.スケール作用をホロノミックに量子性と同一視するという感じはどうなのだろう.T双対性とかS双対性とか,カラビ-ヤウ多様体とか,ミラー・カラビ-ヤウ多様体とか,リーマンの無限小な連続多様体の構成の手続きぽくはないだろうか.そのような作用を積分したものがワールド・シートとかワールド・体積とか, メンブレーン(膜宇宙)とか.埋め込まれた空間は元々の空間と同一視できるという感じだから.(参考:『数学辞典』の「スペシャル幾何学」の項目)
仮に.内部空間と外部空間が隔絶されているとして,相互につながりがないとしたとき,どういうわけかその隔絶を出し抜いて,内部の情報が外部に,外部の情報が内部に作用し合っているようなことがあったとしたら,どうやってるのだろうと考える.完全な機密に穴が生じている訳だから.そのことを可能にするには,外部と内部に非常に小さな接続部分があって,対称性と双対性のねじれるようなコンパクト化された微小空間が,両者の橋わたしとなるような構造をもっていると考える.そういう部分は顕微鏡でも探知できないものであるとすれば,一応,謎は解ける.ホロノミック・スペシャル・情報理論で機密は暴露される.
機密なんてものは,元来,情報価値のないものに,軍事だののバーチャル価値付けをするためのものだから,機密が多いだけ,無理がたたるのである.「真理の追究に勝る機密保護はない」のである.論理的には,「機密の暴露は,これを保証されなければならない」があっての「機密保護」である.
「素」なstringの集まりをstringスペクトルと名付ければ,stringは「イデアル」をある意味拡張した対象のような感じもしてくる.非可換類体論の類数問題みたいな感じで,出所の異なるものが結びついている,そいう意味では,指数定理とよばれるタイプの問題だろうか.
M理論で,スーパー・ストリングの諸理論を導出するという目的のために,「10次元IIB型のsuper string理論が非摂動的なSL(2,Z)対称性をもっていることは.利用できる.しかも,この群はトーラスのモジュラー群であり,IIB型の理論は,SL(2,Z)のもとで,トーラスの複素構造と同じ複素構造をもつものに変換される複素スカラー場τを含んでいる.」
ここまで,K.Becker, M. Becker, J.H. Schwarz, ``STRING THEORY AND M-THEORY"の序文を読みながら,ざっと,あれこれひねくりまわしてみたのだが,多少,感じは掴めた気がしている.
前書き
ストリング理論は,現代物理理論のなかで,最もエキサイティングで挑戦しがいのある理論の一つである.1960年代の後半,強い核力を説明するために展開されたものだが,そのプログラムが完全な成功を収めることを妨げる問題が生じたのである.特に,基本ストリングのスペクトル[粒子の存在系列?]には,望まれない,スピン2の,質量をもたない粒子が含まれることが分かったのである.量子色力学(QCD)が,強い力とハドロンの特性を説明する正しい理論であることが,結局,証明されたのだった.1974年,ストリング・スペクトルでのスピン2の粒子は,重力の量子化で現れる重力子であるという考えが提唱されて,ストリング理論は新たな展開をみせた.ストリング理論は,その他の力と重力を統一する量子重力理論の最も有望な候補になり,高エネルギー物理の最も魅力的な理論の一つに成長したのである.
ストリング理論は,長年にわたる,多くの創造性に富む人々の貢献によって,理論の大きな進展がなされた.ある時期には,他の時期より急激な進展がはたされた.特記すべきことは,この理論が,二回,大きな変革を経験していることである.1980年代半ばの変革では,この理論が広く受け入れられるものになり,二番目の変革,1990年代半ばのスーパーストリング革命は,それらの理論の根底に,ただ一つの理論のみが存在し得て,そのことは,非摂動的双対性の発見によって納得のいく証拠が与えられるということで特徴づけられる.それはまた,M理論とよばれる11次元表現の理解へと導いたのである.継続しておこった進展は,ストリング理論,現象論的素粒子物理,宇宙論,そして純粋数学の間の結びつきを以前より強いものにしたが,その結果,ストリング理論は,アメリカをはじめとする各国の大学の,主流的な研究分野になったのである.
*ストリングという基本的な対象は,無数の場や物質粒子の集団的振る舞いを抽出して,基本的な対象として同定し直したようなものだと考えればいいということだろうか.
1. 序文
20世紀の理論物理学は,一般相対性理論と量子力学によって革命的進展を遂げることになる.巨視的スケールにおいては,一般相対性理論が,膨張宇宙の現代的な理解の要となっており,それによれば,惑星の運動や光線の偏差に関して,ニュートンの重力理論には小さな補正が必要なこと,そして,重力波やブラックホールが存在することを予言する.今日,この理論は[古典]力学になっている.他方,量子力学は,微視的な物理を理解するために不可欠な理論的武器であり,そのための厳格に正確な理論であることが証明されてきた.そして,ストリング理論というものは,この理論の精密性を前提として成り立ているのである.
自然の基本法則を理解するには,この両理論の融合・統一がなされなければ,完全なものとならない.この統一を成功させることは,様々な面から,やりがいのあることであるが,理論特有の,概念も,観測内容も,計算の仕方も著しく異なっている.しかも,この二つの分野は,1980年頃まで,数少ない例外を除いて,まったく独立に展開されていた.それらを統一させるなどというのは,科学においてだけでなく,社会的にも,細心の注意が必要だったのである.
量子場の理論とよばれる相対論的量子力学では,空間的に分離される時空点で定義される二つの場が,可換(あるいは,それらがフェルミ統計に従うような場なら,反可換)であることが必要ある.重力を含む文脈では,時空点が空間的に分離されるのかどうか,計量が計算されるまで判らない.それは,力学の問題の一つである.さらに困ったことに,計量は,他の量子場でもそうであるように量子的揺らぎに左右される.この問題はかなり取り組みがいのある問題であることは明らかである.もう一つ別な,やりがいのある問題群は,ブラックホールの量子論的な解明およびごく初期の宇宙の解明に結びついている.
摂動論的量子場の理論の枠組みの中で,量子力学と一般相対論を直接結びつけようとする試みのほとんどは,取り除くことのできない発散に起因する問題を抱えることになる.紫外発散は重力を含む過程への補正を困難にする特有の性質を持っており,摂動論の精度を上げる程、ひどくなっていく.なぜなら,ニュートンの[重力]定数は四次元では長さの二乗に比例し,簡単な乗数計算から,量子場の理論の常套的な繰り込みの方法では,これらの発散(無限大)を取り除けないことを意味している,詳細に計算すれば,この単純な次元解析が有効でないことは,不思議でもないことが証明される.
ストリング理論は,これらの困難を解決し,重力を自然に含む量子論を与えるものとして提唱された.しかし,この理論がどうやってそれを果たすのか,詳細に関しては,まだ十分には分かっていない.研究すればするほど,ストリング理論は,多くの深い真理を発見し続けていかなければならないものであることを,何度も思い知らされたのである.一般的に言って,理路一貫した像が得られるかどうかは,この魅力を持った期待のできるストリング理論が,量子力学と一般相対性理論を首尾よく統一するために,多くの困難をどう切り抜けていくかにかかっているのである.
1.1 歴史的起源
ストリング理論は,1960年代の後半,強い核力を解明する試みから生じたものである.これは,クォーク同士を陽子や中性子としてつなぎとめる力であるばかりでなく,陽子や中性子を原子核としてつなぎとめる力である.点粒子ではなく,ストリングとよばれる一次元の広がりをもつ対象を基本とする理論は,強い核力および強い力と相互作用する粒子(ハドロン)の諸特性を量的に説明することができる.
強い相互作用をストリングの観点から説明する場合,特定の粒子はストリングの特定の振動の仕方(あるいは量子状態)に対応しているという考えが基本的である.無数の異なるハドロンが観測されることを説明するために,単一の基本的な対象(すなわちストリング)を仮定するこの考えから,非常に満足のいく統一的な像が得られる.図1.1参照.
1970年代初頭,量子色力学(QCD)とよばれる,もう一つの強い核力の理論が開発された.その結果,ストリング理論は,時代遅れとなり,様々な技術的問題へのストリング理論のアプローチも同様であった.現在的な観点から見て,そのもくろみは意義のあることであって,再び活発な研究が行われている.強い相互作用を説明する具体的なストリング理論は,いまだ知られていないが,その問題にどのように取り組めばいいかは,今では,ずっと良く分かってきている.
ストリング理論が,重力とその他の自然界に存在する基本的な力を統一する量子理論を建設するという野心的な目的さへかなえることのできる理論であることが判明した.原理的には,ストリング理論は,素粒子物理と宇宙論の完全な解明を与える能力を持っている.それはまだ遠い夢であるが.この魅惑的な理論では,確かに,サプライズは何度もおこっているのである.
1.2 一般的特徴
ストリング理論は,未だ十分に定式化されていないし,素粒子の標準モデルが,低エネルギーで,どのようにして現れるのか,宇宙の起源はどのようなものなのか,詳細に説明できていないが,よくわかっている理論のもついくつかの特徴をもっており,その特徴は,ストリング理論の最終的な定式がどのようなものであっても,まったくかわりなく備わっていると思われる特徴である.
重力
ストリング理論の,第一の特質は,おそらく最も重要なものだが,一般相対性理論が理論に自然に含まれるということである.一般相対性理論は,非常に短い距離や高エネルギーにおいては修正されるが,通常の距離やエネルギーにおいては,アインシュタインが提唱した通りの形式で現れる.一般相対性理論が量子力学と調和した枠組みの中で現れるのだから,このことは顕著である.通常の量子場の理論は,重力を含まないが,ストリング理論には,それが含まれる.

ヤン-ミルズのゲージ理論
素粒子物理の結果を十分に説明するためには,ストリング理論が重力を含むということだけでは十分ではない.標準理論のSU(3)×SU(2)×U(1)ゲージ群に基づくヤン-ミルズ理論を説明する必要がある[強い相互作用と電弱相互作用を統一するような理論,大統一理論.SU(3)は量子色理論,SU(2)×U(1)は量子フレーバー理論(電弱統一理論)].標準理論(量子色力学+量子フレーバー理論)をまとめあげるようなヤン-ミルズゲージ理論が生じるということは,ストリング理論の一般的特徴である.さらに,物質は,複素カイラル表現で表すことができて,それは,標準モデルの基本的な性質である.しかしながら,何故,三つの世代のクォークやレプトンをもつ特定のSU(3)×SU(2)×U(1)ゲージ理論を自然が選ぶのかは,いまだ解明できていない.
* ヤン-ミルズ理論は,アイソ空間というような仮想的な統一空間の回転対称性を含んでいるから,ストリング理論もヤン-ミルズ理論のやり方にならっているということだろうか.
超対称性
ストリング理論の第三の一般的特徴は,理論の整合性のために超対称性を必要とするということである.超対称性は,ボソンをフェルミオンに関連づけるときに必要となる対称性である.超対称性をもたないボソン的ストリング理論が存在するが,フェルミオンを含んでおらず,まったく非現実的である[物質粒子と相互作用しない場だけの理論は,非現実的であるという感じだろうか].フェルミオンを含むストリング理論の数学的無矛盾性は,局所超対称性に厳格に依存している.超対称性は,可能な現実的ストリング理論すべてが共通にもつ特徴である.この対称性が未だ発見されていないという事実は,超対称性の破れと既知の粒子の超対称性パートナーの質量を特徴づけるエネルギースケールは,実験的に検証で生きる限界を超えているということを示している.時空超対称性を実験的に実現できるエネルギーで検出できるということは,ストリング理論の重要な予言の一つである.ストリング理論に限らず,様々な検討から示唆されていることは,超対称性が破れるエネルギースケールは,電弱相互作用のスケールと関係していて,それは,100GeVから数TeVの範囲であるということである.このことが正しいなら,スーパーパートナーは,2007年稼動予定のCERNのLHCで確認できるに違いない.
余剰次元
多くの物理理論と対照的に,スーパーストリング理論は,理論が生息する時空の次元を示すことができる.この理論は,10次元時空でのみ矛盾のない理論となり,幾つかの場合,11次元であることも可能である.
ストリング理論と四次元経験世界につながりをもたせるには,6次元あるいは7次元は内部多様体にコンパクト化されており,そのサイズが検出できない程小さいものだとすることが,可能性として最も分かりやすい.素粒子物理に対しては,残りの四次元は,われわれの四次元時空を与えるものとしなければならない.もちろん,宇宙論に対しては,それとは別な,時間従属な幾何学として生じることもできる.

コンパクトな余剰次元のアイディアは,1920年代に, カルツアとクラインが最初に考えたものである.彼らは,一つの円上に5次元一般相対性をコンパクト化することによって,4次元のなかで電磁気力と重力を統一する理論を作ろうとしたのである.現在では,そのやり方では電磁力学が生じないことが分かっているが,そのすばらしいアプローチの本質は,ストリング理論で再び採用されている.今日,コンパクト化とよばれる,カルツア-クラインのアイディアは,図1.2にある二つの円筒を使って説明できる.第一の円筒の表面は二次元である.しかし,もし円筒の半径が極端に小さくなっていくか,あるいは,同じことだが,円筒を極遠くから見たとしたら,円筒は一次元であるとしてもいいだろう.円筒の側面の次元をわれわれの四次元時空に置き換え,円筒の底面の次元を6次元あるいは7次元コンパクト多様体に置き換えて考えてみよう.大きな距離や低いエネルギーでは,コンパクトな内部空間は見ることができない.世界は四次元とみてかまわないことになる.第9章および第10章で議論されるように,たとえ内部多様体は見えなくても,それらの位相的な性質は,粒子のもつ内容や四次元世界の理論構造を決定する.1980年代半ば,余剰6次元をコンパクト化するために,カラビ-ヤウ多様体がまず考えられた.ストリング理論の予言力を損なうような幾つかの深刻な問題(第10章で議論される,モジュライ空間問題のような)をもっていたが,かなり有望であることが現象論的に示された.円とは異なって,カラビ-ヤウ多様体は等長的でなく,対称性を作るというより,対称性を破る役割を果たしている.
ストリングのサイズ
通例の量子場理論では,素粒子は数学的点であるが,他方,摂動的ストリング理論では,基本的な対象は(厚みゼロの)輪っか状の線である.ストリングは,l_sと記される,特徴的なスケールをもっており,次元解析から求めることができる.ストリング理論は,重力を含む相対性理論的量子論であるから,基本定数として,c(光速度), h(2πでプランク定数をわったもの),およびG(ニュートンの重力定数)をもっている.これらから,プランク長とよばれる長さを作ることができて,

である.
同様に,プランク質量は,

である.
プランク・スケールは,コンパクト余剰次元特有のサイズと同時に基本的ストリング長のスケールを粗く見積もるものであると,当然第一に考えられた.プランク・エネルギーより遥かに低いエネルギーでの実験では,プランク長より短い距離に分割できない.そのため,そのようなエネルギーでは,ストリングは点粒子としてかまわない.このことは,量子場の理論が,何故,われわれの世界の記述に非常な成功を収めているのかを,明らかにする.
1.3 基礎ストリング理論
ストリングが時間をかけて何らかの運動をするとき,時空のなかに二次元曲面を描いていく.それを,ストリングのストリング・ワールドシートと呼ぶ.これは,点粒子モデルにおける世界線のストリングモデルにおける対応物である.量子場理論では,摂動理論で解析する場合,[確率]振幅(係数)はファインマン・ダイアグラムを使って配分され,世界線の可能な形状が描かれる.特に,相互作用は世界線の交点に対応している.同様に,ストリング理論における摂動展開は,様々な位相のストリング・ワールドシートを含んでいる.
ストリング理論における相互作用の存在は,ワールドシート上の局所特異点の存在の結果というより,ワールドシート位相の結果であると理解される.この,点粒子に基づく理論との違いは,二つの重要な意味を持っている.一つは,ストリング理論では,相互作用の構造は,相互作用をもたない理論(free theory)からただ一つに決定され,理論ごとに相互作用を選ばなければならないという任意性は存在しない.二つ目に,ストリング理論は,短距離における特異性をもたないから,ストリング理論の[確率]振幅は,紫外発散をもたない.ストリング・スケール 1/ l_s(ストリング長)は,紫外発散部分の切り捨てとして作用する.
ワールド体積と臨界次元
ストリングは,pブレーンの特別な場合であるとみることができる.それは,p空間次元と張力(あるいはエネルギー密度)T_pをもつ対象である.実際,スーパーストリング理論には,非摂動励起状態として,まさに,様々なpブレーンが現れる.pブレーンの古典的な運動は,時空の中でその運動が描くp+1次元体積Vを最小にするものである.そのため,S_p=-T_pVで与えられるpブレーン作用が存在する.基本的ストリングの場合は,p=1で,Vはストリング・ワールドシートの面積であり,その作用は南部-後藤作用と呼ばれる.
古典的には,南部-後藤作用は,ストリング σ作用

に等しい.[...].ある手続きを施せば,この作用は,南部-後藤作用になる.
量子力学的には,その手続きはもっと巧妙になって,古典場の方程式(補助的なワールドシート計量hの逆行列に対するオイラー-ラグランジュ方程式)を使ってhを消し去る代わりに,ファインマンの経路積分を計算して,局所対称性やゲージ固定を扱う標準的な機構を使うことになる.これを正しく実行すれば, 時空次元がD=26以外では,共形異常が存在することがわかるだろう.これらのことについては,第2、第3章で詳しく調べられる.スーパーストリングに対する類似の解析は,臨界次元D=10を与える.
閉ストリングと開ストリング
埋め込み関数X(σ, τ)における[XはX^μの代わりである],パラメータτはワールドシート時間座標であり,σは,与えられたワールドシート時間でのストリングをパラメトライズしたものである.閉ストリングに対しては,それは位相的には円であるが,空間的パラメータσに周期を与えなければならない.周期をπとすれば,ストリングの両端は一致する.X(σ, τ)= X(σ + π, τ).すべてのストリング理論は,閉ストリングを含んでおり,臨界ストリング理論の閉ストリング・スペクトルの質量なし型として,グラビトンがつねに現れる.
開ストリングに対しては,それは位相的には線区間であるが,各端は,(μの各値に対して),ノイマン境界条件あるいはディリクレ境界条件のどちらを満たさなければならない.ディリクレの条件は,ストリングの端が結びつく時空超曲面を特定する.これは,開ストリングの端が,Dブレーン(Dはディレクレの略)とよばれる物理的対象につながっていると考えるときにのみ意味を持つ.すべての開ストリングの境界条件がノイマン型なら,ストリングの端は時空のどこにあってもいい.この現代的解釈は,時空全体を覆うDブレーンが存在することを示しているとするものである.
摂動論
摂動論は,量子電気力学(QED)のような,小さな,次元のない結合定数をもつ量子理論において有効である.小さなパラメータを使って展開される物理量を計算できるからである.QEDでは,小さなパラメータは微細構造定α~1/137である.
物理量T(α)は,

と(ファインマン・ダイアグラムを使って)計算される.
摂動級数は,通常,収束半径0の漸近展開であり,さらに,展開の第一項が正しい近似を与えるのだから,展開パラメータが小さいとき,摂動展開は有効である.
ヘテロおよびII型スーパーストリング理論は,向きをもつ閉ストリングのみを含む.その結果,それらの摂動展開におけるワールドシートは,向きづけられた,閉[つまりコンパクト]リーマン面である.摂動展開の各階で,ただ一つのワールドシート位相が存在して,それは,紫外効果を有限にする働きをもつ.摂動展開の各階でちょうど一つのストリング・ファインマン・ダイアグラムが存在するという事実は,量子場の理論[場の量子論]では多数のファインマン・ダイアグラムが現れるということと著しく対照的である.ストリング理論においては,結合定数g_sは小さいと期待できる特別な理由は存在しない.そのため,摂動論のみで現実的な真空を正確に解析できそうもない.このことから,ストリング理論では,非摂動的効果を理解することが重要となる.
スーパーストリング
1984年,最初のスーパーストリング革命は,N=1超対称性をもつ10次元の理論が,量子力学的に矛盾のないものであるためには,二つの有望なリー代数; SO(32)あるいはE8×E8のどちらかの局所ヤン-ミルズ対称性を要求するという発見で始まった.第5章で述べるように,この二つの代数のうちから選択する場合にのみ,ある種の量子力学的アノマリーが取り除かれる.この2つの群のみが有望であるという事実は,ストリング理論は非常に制約された構造をもっていて,そのために,とても予言力が強いのかもしれないということを示唆された.
left-moving型とright-moving型の双方に対して,形式的にスーパーストリングを使うときは,left-moversとright-moversに結びつけられた超対称性は,パリティ反対称(opposite handedness)か,同じパリティ対称性(same handedness)をもつかどちらかであり,この二つの可能性から,IIA型かIIB型という,異なるスーパーストリング理論が生じる.第三の可能性として,左右対称性で類別することで,IIB型の理論から,I型のスーパーストリング理論を派生することができる.その手続きを,多重有向射影(orientifold projection)という. この射影で生き残ったストリングは,向きをもたない.I型およびII型のスーパーストリング理論は,それぞれ,ワールドシートと時空対超称性をもつ形式で,第4章と第5章で議論される.
さらに驚くべき可能性は,形式的に,left-moversには26次元ボソニック・ストリングをあて,right-moversには10次元スーパーストリングをあてるということである.このように作られるストリング理論を「ヘテロ型」とよぶ.ヘテロ型ストリング理論は,第7章で議論される.時空の次元が一致しないのは奇妙だと思うかもしれないが,実は,正しく必要とされるものである.余分なleft-movingの16次元は,矛盾のない理論を与えるための特別な性質をもつトーラスを表す.要求される性質を持つきっちり二つの異なるトーラスがあって,それらは,リー代数SO(32)とE8×E8に対応している.
10次元には,全部で,5つの異なるスーパーストリング理論が存在するのだが,そのうちの3つ,I型理論と2つのへテロ型理論,は10次元の意味でN=1超対称性をもつ.10次元での最小スピノルは16個の実の要素をもち,そのため,これらの理論は,16個の保存量としての超電荷をもつ.I型スーパーストリング理論はゲージ群SO(32)をもち,他方,ヘテロ理論はSO(32)およ
もちろん,放射能現象がなければ,物質も生物も存在し得ないという意味では,なくしてもらっても困るのではある.原子爆弾や原子炉から放出された放射性物質の除去とはレベルが違うのだろうが.科学者が,科学者としての態度を放り捨てて,科学の悪用に専心するなどということはあってはならないが,原発だけでなく,経済でも政治でも,そういう風潮を感じる.ウムウムである.安易にお膳立てに走り,安易に自らの保身や利便に制度を悪用する.それは,ひいては,ご都合人脈のねつ造共犯で,学問が形成されることにさえなるかもしれない.学会も,ねつ造人脈の下部機関でしかなくなる可能性もある.ウムウムである.例えば,ソ連の国家機関が,アメリカの軍がそういうことをやるとしたら,誰がそれを正せるだろうか.もちろん,そういう危険もはらんでいるが,おそらく,実際には,そこまでひどいことは珍しいのだろう.無限に延びた線を実際たどることはできないが,人間のやることは,大方は,見渡せる範囲で,ごまかそうという程度のことではなかろうか.
質量というものは,ある意味,解析的延長の限界の保存を示す量と考えることもできるだろうか.例えば,電子とミューオンのように,質量のみの異なる,重複する粒子が存在するということは,あるいはワールドシートもそうだろうか,そのような延長が,粒子質量のみの違いとして,その限界が保存されることを意味していると考えられないだろうか.相互作用の統一のためには,それを媒介する重い粒子が存在するということから,重力の作用が,相互作用の微細な構造的な破れを通じて,影響してくるというシナリオにも見える.それはまた,重力の影響による,時空構造が混合的に様々なモードをもっていて,それが基幹となる構造をめぐって絡みあっているというイメージになるだろうか.
重力の化身は,おそらくそういうところに現れる可能性があるということになるから,GPSの機能をもった重力化身の出現位置情報探査システム付き携帯端末というデバイスもあってもよさそうである.
エネルギーおよび運動量の保存則が,場の反作用という形で,特定の観点では保存則を破るものを,一般性へ拡張する役割を果たしている,というように,物質の存在しない重力場の方程式から物質の存在する重力場の方程式への拡張(ニュートンの△φ=0に対応する方程式からポアッソン△φ=4πKρに対応する方程式へ)で,(「物質のエネルギ-・テンソルの導入の仕方」に、従って「方程式の形」に)制限を与えている,と読んでみる(アインシュタイン『一般相対性理論の基礎』).E=mc^2という有名な式は,宇宙方程式(物理の統一方程式)という文脈においては,何を意味しているのだろうか.陽子崩壊やニュ-トリノ振動あるいはレプトン振動のような問題ともつながっているということだろうか(ワインバーグ「陽子崩壊を探る」).対称性や保存則が物理方程式の形に根拠を与える制限の役割をしていると書かれてある(『素粒子論』など). 解析性の保存は,どうなのだろう.その物理的必然性の理論がワールドシートということだろうか.複素数場.
ストリング理論,超ストリング理論ときて,M理論が最も有望な超大統一理論の候補であると認められるようになってきたと,ストリング理論やM理論の研究者は言っている.ストリング理論は南部博士らの提唱らしいが(ある意味では),クォークのバッグ模型もストリング・ブラックホール情報理論の先駆けなら,それも南部博士らに起源を負うということだろうか.
ストリング理論だ,M理論だ,超大統一理論だと,小難しい理論を,僕ちゃんはちゃんと判るけど,ひがみ屋の連中がいるから気をつけなくちゃ,なんてさもしい動機ではない.などと余計な言い訳を付け加えておこう.もちろん,難しくて,よくわからないのである.物理専攻の学生でも,ストリング理論の基礎のための数学や物理の知識を習得するのに何年もかかる上に,その間には,当の理論はさらに理論的進展を遂げていて,なかなか追っ付かないということらしい.場の粒子は電磁場の粒子である光子のように,スピンが整数(つまり,ボーズ粒子(ボソン))で質量が0であるが,そのような場の粒子は,光子と重力子以外にはないとか,そうであるはずの場の粒子が何故異常な質量(重さ)をもつ粒子になるのかとか,言葉としては,素人でも(私でも)感じは掴めるのであるが.非摂動的な双対性の発見が,ストリング理論の根底に,11次元表現であるM理論が唯一の理論として横たわっていることを納得するだけの根拠を与えるとかなると,そういうものだろうと思うしかないのである.
そもそもstring理論は,その,1次元の振動する弦すなわちstringの特定の振動(あるいは量子状態)を特定の粒子に対応させるというstring相互作用の描写は,K中間子の謎に起源をもつということだろうか.対応する相対性理論的な対象として,時空の光円錐があるということだろうか.ボーズ粒子とフェルミ粒子の区別の統計性を物理の本質的な情報性として改変するという意味もあるのだろう.一般相対性理論と量子力学を調和させる,すなわち統一することに伴う克服すべき幾つかの問題のなかに,摂動論でどうしても消せない発散の問題がある(ultraviolet divergences).摂動展開の次数を増していっても,ニュートンの定数が長さの二乗に比例することから,どうしても発散を取り除けないからだそうである.さらに,ストリング理論には,stringのもつ無限の自由度に伴う零点振動に起因する無限大というような,無限の内部自由度に起因する新たな発散が現れるそうである(『素粒子論』).
【コーヒーブレーク】
景色を眺めながら,あれこれと思いに耽る.木々のざわめきに,小鳥たちのさえずりにうながされて,心の中のさざ波が心地よく音のない音楽を奏でている.などと,平和な気分で,ものを考えることが通常あり得るだろうか.観察の中に貫入し,その揺り動かしの気ままさを見極めながら,あるいは,移り行くシーンの連続の中で,あるいは,いくつもの屈折を経て,再来したシーンを突き抜けて,ものごとを考えている自分を見出すことの方が普通ではなかろうか.そういう移り行きの軌跡にへばりついた自分の意識の影を,見つめる自分を形づくっていく,<思い>とはそういうものではなかろうか.<思い>においては,<点>とは,いかなるものなのだろう.伸縮する軌跡,その時空の構成において要請される<点>という概念は,どういうものになるのだろう.流転における点をつなぐ軌跡の内的な闘争をストリングとよぶのだろうか.弦は奏で,奏でられる音は様々な音楽を作り出す.私の音楽への苦手意識の原因には,多分,ストリングの闘争的本性が根底にあるからだといえないだろうか.音楽の先生なら「といえない」と評価するだろうが.
stringのスケールとして,またコンパクト余剰次元を特徴づけるスケールとして,プランク・スケールが目安だから,プランク・スケールがどれ程のものかみてみると,
プランク長=1.6×10^(-33)cm、
プランク時間=10^(-48)秒,
プランク・エネルギー(質量)=1.2×10^{19}GeV/c^2,GeVはギガ電子ボルトすなわち10億電子ボルト.
である.例えば,プランク長は,次元解析によって,光速c,ニュートンの重力定数G,プランク定数h(ここではディラック定数h/2πをhで表す)から長さの次元をもつように組み合わせたもの(√(hG/c^3))である.ストリング理論は,重力を含む相対論的量子力学理論であり,stringは長さのスケールで特徴づけられる.また,プランク・エネルギーは,強い力と電弱相互作用が統一されるエネルギースケール10^(15)GeVから10^(16)GeVに近いらしいが,2,3桁から4桁ほど違うようにもみえる.陽子質量がおよそ1GeV/c^2弱である.
加速器で,粒子同士を衝突させて,元の粒子がどのような粒子に崩壊するかとか,どのように崩壊するかとかを調べるのが,加速器実験であるなら,高いエネルギーで観測するということは,ほとんど当たりそうもない的同士を衝突させなければならないから,大量の粒子の光速ビーム同士がたまたま小さいな衝突領域で衝突した結果を検出して,それを解析することから,割り出していくということだと,簡略な説明ではなっているから,100GeVから数Tev(テラ電子ボルト)あたりの加速器の限界エネルギー領域で,検出可能にするというのは,難しい.が,可能性があるらしい.ヒッグズ粒子あるいは超対称粒子の検出ということが,その例であるということである.
「プランク・エネルギーより低いエネルギーでは,プランク長より短い距離に分解できないから,ストリングは点と見なしてもかまわない.このことが,素粒子を数学的点として扱う通常の量子場の理論が成功した理由となっている」.
『数学辞典』から,特殊相対性理論について,斉次Lorentz群(homogeneous Lorentz group)と非斉次Lorentz群(inhomogeneous Lorentz group)について,簡単にみてみる.
4次元擬ユークリッド空間で,基本形式が
ds^2 = g_{ab}dx^adx^b≡cdt^2 - dx^2 - dy^2 -dz^2
x^i =(ct, x, y, z)
で与えられるものを,Minkowskiの世界とよび,その運動群は非斉次ローレンツ群とよばれる.その元は
x'=c_a^ix^a+c^i
g_{ab}c_i^ac_j^b=g_{ij}
の形に書かれる.c^i=0とおいて得られる変換はローレンツ変換とよばれ, それらの作る群Gを同次ローレンツ群(homogeneous Lorentz group)とよぶ.Gの単位元の連結成分をG_0とするとき,剰余群G/G_0は(2,2)型で位数4のAbel群である.G_0を固有Lorentz群という.
「stringが運動するにつれて,時空に2次元[超]曲面を描くが,それをstringの描くstring world-sheetとよぶ.ストリング理論における摂動展開は,様々な位相をもつstring world-sheet を含んでいる.string理論における相互作用の本質は,world-sheet上の局所特異点の結果というより,world-sheet位相の結果であると理解される」.「stringが運動するにつれて,時空に2次元曲面を描くが,それをstringの描くstring world-sheetとよぶ」の部分は,`As a string evolves in time it sweeps out a two-dimensional surface in space-time, which is called the string world sheet of the string.'である.細かい含意がありそうだが,おおざっぱな訳である.
原子核の粒子,陽子と中性子を核子としてつなぎとめる力である強い力(強い相互作用)は,湯川の中間子論で,その機構が明らかにされたが,すべてを説明する理論というわけではなく,その後生じてくる様々な謎を解明する鋳型のようなものであるから,さまざまな予測を超える事態の解明のための理論の試みの中で,検証されていく宿命の理論である,というようにいえるだろうか.クォーク理論や量子色力学,string理論がそのような検証の結果を踏まえながら,生じてきたとしても不思議ではない. string理論は1960年代後半に,クォークを陽子や中性子としてつなぎとめる力を説明する(量子色力学(Quantum Chromodynamics)がその理論)とともに核力(核子の粒子をつなぎとめる強い力)を説明するために生じたものであると書いてある.
関連する事柄として,「Galilei変換からLorentz変換へ」ということがあるだろうか.(狭義の)Galileiの相対性原理は,「力学現象の法則は,相互に一定速度で運動する異なる観測者の間で共通の形でなければならない」というものだが,異なる観測者の座標の間の関係を表す式をGalilei変換という.Maxwellの方程式(4個の連立偏微分方程式)を,電気場の力のベクトルEと磁気場の力のベクトルHの代わりに,Maxwell方程式から存在が保証される,ベクトル・ポテンシャルAとスカラー・ポテンシャルφを使って書き直すと,Maxwellの方程式はd'Alemberの方程式の形になる.この方程式がGalieiの相対性を満たすかというと,満たされない.そこで,Galilei変換の本質を残して,d'Alemberの方程式の形を保存するような変換を採用する.それをLorentz変換という.Galilei変換からLorentz変換への発展が内蔵している時空概念の変革をEinsteinがとりあげ,特殊相対性理論そして一般相対性理論の構築に進んだ.(『古典力学II』). このような変革に当たるものが,ファインマン図から位相スケールへという,トポロジーの変革のような感じになるのだろうか.
---> エントロピーの流れと近傍系の改変という感じで,ストリング理論では位相概念を処理する見方が必要とされているということだろうか.時空の双対性というのは,時間を空間化して得られる理論と空間を時間化して得られる理論の間に区別が生じないという感じなら(そういう対称性は破れているらしいが),そういう対称性の破れによる双対性を保つ変換はエルゴード性をもつなどというのは,といっても,こういう結果があるのかないのかさえ知らないが,ありそうな感じもあるから.はったりで感知してみました.双対性の典型的な例は,ディラックの磁気単極子の理論であるというし.そういう双対性による制約が,M理論を生み出すものとなったという感じでもあるし.双対性が[行列]表現を選ぶという感じだろうか.
流れというイメージには,そのもとにある時空との結びつきが破れるような感じがあって,理論から破れをもたらすような対象を区別して作られる同等な双対な理論が伴っているんだというところが,対称性と双対性が異なるところなのだろうか.σ有限とか,モジュライとかそういう関連だろうか.
string理論は,しょっけから,近傍だの位相だの双対性だの,質量の縮退だの,コンパクト化だの,モジュライだの,SO(32)だのE8だの,が絡み合っていて,当たりつけないと,判りにくいから.スピンはめぐって変遷して,string理論の理論構成を支えているような感じだろうか.
双対性が,無限小の微細な空間をトーラス空間に埋め込むようにして,リーマンの量子空間を構成する手続きとなっている感じがする.スケール作用をホロノミックに量子性と同一視するという感じはどうなのだろう.T双対性とかS双対性とか,カラビ-ヤウ多様体とか,ミラー・カラビ-ヤウ多様体とか,リーマンの無限小な連続多様体の構成の手続きぽくはないだろうか.そのような作用を積分したものがワールド・シートとかワールド・体積とか, メンブレーン(膜宇宙)とか.埋め込まれた空間は元々の空間と同一視できるという感じだから.(参考:『数学辞典』の「スペシャル幾何学」の項目)
仮に.内部空間と外部空間が隔絶されているとして,相互につながりがないとしたとき,どういうわけかその隔絶を出し抜いて,内部の情報が外部に,外部の情報が内部に作用し合っているようなことがあったとしたら,どうやってるのだろうと考える.完全な機密に穴が生じている訳だから.そのことを可能にするには,外部と内部に非常に小さな接続部分があって,対称性と双対性のねじれるようなコンパクト化された微小空間が,両者の橋わたしとなるような構造をもっていると考える.そういう部分は顕微鏡でも探知できないものであるとすれば,一応,謎は解ける.ホロノミック・スペシャル・情報理論で機密は暴露される.
機密なんてものは,元来,情報価値のないものに,軍事だののバーチャル価値付けをするためのものだから,機密が多いだけ,無理がたたるのである.「真理の追究に勝る機密保護はない」のである.論理的には,「機密の暴露は,これを保証されなければならない」があっての「機密保護」である.
「素」なstringの集まりをstringスペクトルと名付ければ,stringは「イデアル」をある意味拡張した対象のような感じもしてくる.非可換類体論の類数問題みたいな感じで,出所の異なるものが結びついている,そいう意味では,指数定理とよばれるタイプの問題だろうか.
M理論で,スーパー・ストリングの諸理論を導出するという目的のために,「10次元IIB型のsuper string理論が非摂動的なSL(2,Z)対称性をもっていることは.利用できる.しかも,この群はトーラスのモジュラー群であり,IIB型の理論は,SL(2,Z)のもとで,トーラスの複素構造と同じ複素構造をもつものに変換される複素スカラー場τを含んでいる.」
ここまで,K.Becker, M. Becker, J.H. Schwarz, ``STRING THEORY AND M-THEORY"の序文を読みながら,ざっと,あれこれひねくりまわしてみたのだが,多少,感じは掴めた気がしている.
K.Becker, M. Becker, J.H. Schwarz, ``STRING THEORY AND M-THEORY"
前書き
ストリング理論は,現代物理理論のなかで,最もエキサイティングで挑戦しがいのある理論の一つである.1960年代の後半,強い核力を説明するために展開されたものだが,そのプログラムが完全な成功を収めることを妨げる問題が生じたのである.特に,基本ストリングのスペクトル[粒子の存在系列?]には,望まれない,スピン2の,質量をもたない粒子が含まれることが分かったのである.量子色力学(QCD)が,強い力とハドロンの特性を説明する正しい理論であることが,結局,証明されたのだった.1974年,ストリング・スペクトルでのスピン2の粒子は,重力の量子化で現れる重力子であるという考えが提唱されて,ストリング理論は新たな展開をみせた.ストリング理論は,その他の力と重力を統一する量子重力理論の最も有望な候補になり,高エネルギー物理の最も魅力的な理論の一つに成長したのである.
ストリング理論は,長年にわたる,多くの創造性に富む人々の貢献によって,理論の大きな進展がなされた.ある時期には,他の時期より急激な進展がはたされた.特記すべきことは,この理論が,二回,大きな変革を経験していることである.1980年代半ばの変革では,この理論が広く受け入れられるものになり,二番目の変革,1990年代半ばのスーパーストリング革命は,それらの理論の根底に,ただ一つの理論のみが存在し得て,そのことは,非摂動的双対性の発見によって納得のいく証拠が与えられるということで特徴づけられる.それはまた,M理論とよばれる11次元表現の理解へと導いたのである.継続しておこった進展は,ストリング理論,現象論的素粒子物理,宇宙論,そして純粋数学の間の結びつきを以前より強いものにしたが,その結果,ストリング理論は,アメリカをはじめとする各国の大学の,主流的な研究分野になったのである.
*ストリングという基本的な対象は,無数の場や物質粒子の集団的振る舞いを抽出して,基本的な対象として同定し直したようなものだと考えればいいということだろうか.
1. 序文
20世紀の理論物理学は,一般相対性理論と量子力学によって革命的進展を遂げることになる.巨視的スケールにおいては,一般相対性理論が,膨張宇宙の現代的な理解の要となっており,それによれば,惑星の運動や光線の偏差に関して,ニュートンの重力理論には小さな補正が必要なこと,そして,重力波やブラックホールが存在することを予言する.今日,この理論は[古典]力学になっている.他方,量子力学は,微視的な物理を理解するために不可欠な理論的武器であり,そのための厳格に正確な理論であることが証明されてきた.そして,ストリング理論というものは,この理論の精密性を前提として成り立ているのである.
自然の基本法則を理解するには,この両理論の融合・統一がなされなければ,完全なものとならない.この統一を成功させることは,様々な面から,やりがいのあることであるが,理論特有の,概念も,観測内容も,計算の仕方も著しく異なっている.しかも,この二つの分野は,1980年頃まで,数少ない例外を除いて,まったく独立に展開されていた.それらを統一させるなどというのは,科学においてだけでなく,社会的にも,細心の注意が必要だったのである.
量子場の理論とよばれる相対論的量子力学では,空間的に分離される時空点で定義される二つの場が,可換(あるいは,それらがフェルミ統計に従うような場なら,反可換)であることが必要ある.重力を含む文脈では,時空点が空間的に分離されるのかどうか,計量が計算されるまで判らない.それは,力学の問題の一つである.さらに困ったことに,計量は,他の量子場でもそうであるように量子的揺らぎに左右される.この問題はかなり取り組みがいのある問題であることは明らかである.もう一つ別な,やりがいのある問題群は,ブラックホールの量子論的な解明およびごく初期の宇宙の解明に結びついている.
摂動論的量子場の理論の枠組みの中で,量子力学と一般相対論を直接結びつけようとする試みのほとんどは,取り除くことのできない発散に起因する問題を抱えることになる.紫外発散は重力を含む過程への補正を困難にする特有の性質を持っており,摂動論の精度を上げる程、ひどくなっていく.なぜなら,ニュートンの[重力]定数は四次元では長さの二乗に比例し,簡単な乗数計算から,量子場の理論の常套的な繰り込みの方法では,これらの発散(無限大)を取り除けないことを意味している,詳細に計算すれば,この単純な次元解析が有効でないことは,不思議でもないことが証明される.
ストリング理論は,これらの困難を解決し,重力を自然に含む量子論を与えるものとして提唱された.しかし,この理論がどうやってそれを果たすのか,詳細に関しては,まだ十分には分かっていない.研究すればするほど,ストリング理論は,多くの深い真理を発見し続けていかなければならないものであることを,何度も思い知らされたのである.一般的に言って,理路一貫した像が得られるかどうかは,この魅力を持った期待のできるストリング理論が,量子力学と一般相対性理論を首尾よく統一するために,多くの困難をどう切り抜けていくかにかかっているのである.
1.1 歴史的起源
ストリング理論は,1960年代の後半,強い核力を解明する試みから生じたものである.これは,クォーク同士を陽子や中性子としてつなぎとめる力であるばかりでなく,陽子や中性子を原子核としてつなぎとめる力である.点粒子ではなく,ストリングとよばれる一次元の広がりをもつ対象を基本とする理論は,強い核力および強い力と相互作用する粒子(ハドロン)の諸特性を量的に説明することができる.
強い相互作用をストリングの観点から説明する場合,特定の粒子はストリングの特定の振動の仕方(あるいは量子状態)に対応しているという考えが基本的である.無数の異なるハドロンが観測されることを説明するために,単一の基本的な対象(すなわちストリング)を仮定するこの考えから,非常に満足のいく統一的な像が得られる.図1.1参照.
1970年代初頭,量子色力学(QCD)とよばれる,もう一つの強い核力の理論が開発された.その結果,ストリング理論は,時代遅れとなり,様々な技術的問題へのストリング理論のアプローチも同様であった.現在的な観点から見て,そのもくろみは意義のあることであって,再び活発な研究が行われている.強い相互作用を説明する具体的なストリング理論は,いまだ知られていないが,その問題にどのように取り組めばいいかは,今では,ずっと良く分かってきている.
ストリング理論が,重力とその他の自然界に存在する基本的な力を統一する量子理論を建設するという野心的な目的さへかなえることのできる理論であることが判明した.原理的には,ストリング理論は,素粒子物理と宇宙論の完全な解明を与える能力を持っている.それはまだ遠い夢であるが.この魅惑的な理論では,確かに,サプライズは何度もおこっているのである.
1.2 一般的特徴
ストリング理論は,未だ十分に定式化されていないし,素粒子の標準モデルが,低エネルギーで,どのようにして現れるのか,宇宙の起源はどのようなものなのか,詳細に説明できていないが,よくわかっている理論のもついくつかの特徴をもっており,その特徴は,ストリング理論の最終的な定式がどのようなものであっても,まったくかわりなく備わっていると思われる特徴である.
重力
ストリング理論の,第一の特質は,おそらく最も重要なものだが,一般相対性理論が理論に自然に含まれるということである.一般相対性理論は,非常に短い距離や高エネルギーにおいては修正されるが,通常の距離やエネルギーにおいては,アインシュタインが提唱した通りの形式で現れる.一般相対性理論が量子力学と調和した枠組みの中で現れるのだから,このことは顕著である.通常の量子場の理論は,重力を含まないが,ストリング理論には,それが含まれる.

ヤン-ミルズのゲージ理論
素粒子物理の結果を十分に説明するためには,ストリング理論が重力を含むということだけでは十分ではない.標準理論のSU(3)×SU(2)×U(1)ゲージ群に基づくヤン-ミルズ理論を説明する必要がある[強い相互作用と電弱相互作用を統一するような理論,大統一理論.SU(3)は量子色理論,SU(2)×U(1)は量子フレーバー理論(電弱統一理論)].標準理論(量子色力学+量子フレーバー理論)をまとめあげるようなヤン-ミルズゲージ理論が生じるということは,ストリング理論の一般的特徴である.さらに,物質は,複素カイラル表現で表すことができて,それは,標準モデルの基本的な性質である.しかしながら,何故,三つの世代のクォークやレプトンをもつ特定のSU(3)×SU(2)×U(1)ゲージ理論を自然が選ぶのかは,いまだ解明できていない.
* ヤン-ミルズ理論は,アイソ空間というような仮想的な統一空間の回転対称性を含んでいるから,ストリング理論もヤン-ミルズ理論のやり方にならっているということだろうか.
超対称性
ストリング理論の第三の一般的特徴は,理論の整合性のために超対称性を必要とするということである.超対称性は,ボソンをフェルミオンに関連づけるときに必要となる対称性である.超対称性をもたないボソン的ストリング理論が存在するが,フェルミオンを含んでおらず,まったく非現実的である[物質粒子と相互作用しない場だけの理論は,非現実的であるという感じだろうか].フェルミオンを含むストリング理論の数学的無矛盾性は,局所超対称性に厳格に依存している.超対称性は,可能な現実的ストリング理論すべてが共通にもつ特徴である.この対称性が未だ発見されていないという事実は,超対称性の破れと既知の粒子の超対称性パートナーの質量を特徴づけるエネルギースケールは,実験的に検証で生きる限界を超えているということを示している.時空超対称性を実験的に実現できるエネルギーで検出できるということは,ストリング理論の重要な予言の一つである.ストリング理論に限らず,様々な検討から示唆されていることは,超対称性が破れるエネルギースケールは,電弱相互作用のスケールと関係していて,それは,100GeVから数TeVの範囲であるということである.このことが正しいなら,スーパーパートナーは,2007年稼動予定のCERNのLHCで確認できるに違いない.
余剰次元
多くの物理理論と対照的に,スーパーストリング理論は,理論が生息する時空の次元を示すことができる.この理論は,10次元時空でのみ矛盾のない理論となり,幾つかの場合,11次元であることも可能である.
ストリング理論と四次元経験世界につながりをもたせるには,6次元あるいは7次元は内部多様体にコンパクト化されており,そのサイズが検出できない程小さいものだとすることが,可能性として最も分かりやすい.素粒子物理に対しては,残りの四次元は,われわれの四次元時空を与えるものとしなければならない.もちろん,宇宙論に対しては,それとは別な,時間従属な幾何学として生じることもできる.

コンパクトな余剰次元のアイディアは,1920年代に, カルツアとクラインが最初に考えたものである.彼らは,一つの円上に5次元一般相対性をコンパクト化することによって,4次元のなかで電磁気力と重力を統一する理論を作ろうとしたのである.現在では,そのやり方では電磁力学が生じないことが分かっているが,そのすばらしいアプローチの本質は,ストリング理論で再び採用されている.今日,コンパクト化とよばれる,カルツア-クラインのアイディアは,図1.2にある二つの円筒を使って説明できる.第一の円筒の表面は二次元である.しかし,もし円筒の半径が極端に小さくなっていくか,あるいは,同じことだが,円筒を極遠くから見たとしたら,円筒は一次元であるとしてもいいだろう.円筒の側面の次元をわれわれの四次元時空に置き換え,円筒の底面の次元を6次元あるいは7次元コンパクト多様体に置き換えて考えてみよう.大きな距離や低いエネルギーでは,コンパクトな内部空間は見ることができない.世界は四次元とみてかまわないことになる.第9章および第10章で議論されるように,たとえ内部多様体は見えなくても,それらの位相的な性質は,粒子のもつ内容や四次元世界の理論構造を決定する.1980年代半ば,余剰6次元をコンパクト化するために,カラビ-ヤウ多様体がまず考えられた.ストリング理論の予言力を損なうような幾つかの深刻な問題(第10章で議論される,モジュライ空間問題のような)をもっていたが,かなり有望であることが現象論的に示された.円とは異なって,カラビ-ヤウ多様体は等長的でなく,対称性を作るというより,対称性を破る役割を果たしている.
ストリングのサイズ
通例の量子場理論では,素粒子は数学的点であるが,他方,摂動的ストリング理論では,基本的な対象は(厚みゼロの)輪っか状の線である.ストリングは,l_sと記される,特徴的なスケールをもっており,次元解析から求めることができる.ストリング理論は,重力を含む相対性理論的量子論であるから,基本定数として,c(光速度), h(2πでプランク定数をわったもの),およびG(ニュートンの重力定数)をもっている.これらから,プランク長とよばれる長さを作ることができて,

である.
同様に,プランク質量は,

である.
プランク・スケールは,コンパクト余剰次元特有のサイズと同時に基本的ストリング長のスケールを粗く見積もるものであると,当然第一に考えられた.プランク・エネルギーより遥かに低いエネルギーでの実験では,プランク長より短い距離に分割できない.そのため,そのようなエネルギーでは,ストリングは点粒子としてかまわない.このことは,量子場の理論が,何故,われわれの世界の記述に非常な成功を収めているのかを,明らかにする.
1.3 基礎ストリング理論
ストリングが時間をかけて何らかの運動をするとき,時空のなかに二次元曲面を描いていく.それを,ストリングのストリング・ワールドシートと呼ぶ.これは,点粒子モデルにおける世界線のストリングモデルにおける対応物である.量子場理論では,摂動理論で解析する場合,[確率]振幅(係数)はファインマン・ダイアグラムを使って配分され,世界線の可能な形状が描かれる.特に,相互作用は世界線の交点に対応している.同様に,ストリング理論における摂動展開は,様々な位相のストリング・ワールドシートを含んでいる.
ストリング理論における相互作用の存在は,ワールドシート上の局所特異点の存在の結果というより,ワールドシート位相の結果であると理解される.この,点粒子に基づく理論との違いは,二つの重要な意味を持っている.一つは,ストリング理論では,相互作用の構造は,相互作用をもたない理論(free theory)からただ一つに決定され,理論ごとに相互作用を選ばなければならないという任意性は存在しない.二つ目に,ストリング理論は,短距離における特異性をもたないから,ストリング理論の[確率]振幅は,紫外発散をもたない.ストリング・スケール 1/ l_s(ストリング長)は,紫外発散部分の切り捨てとして作用する.
ワールド体積と臨界次元
ストリングは,pブレーンの特別な場合であるとみることができる.それは,p空間次元と張力(あるいはエネルギー密度)T_pをもつ対象である.実際,スーパーストリング理論には,非摂動励起状態として,まさに,様々なpブレーンが現れる.pブレーンの古典的な運動は,時空の中でその運動が描くp+1次元体積Vを最小にするものである.そのため,S_p=-T_pVで与えられるpブレーン作用が存在する.基本的ストリングの場合は,p=1で,Vはストリング・ワールドシートの面積であり,その作用は南部-後藤作用と呼ばれる.
古典的には,南部-後藤作用は,ストリング σ作用

に等しい.[...].ある手続きを施せば,この作用は,南部-後藤作用になる.
量子力学的には,その手続きはもっと巧妙になって,古典場の方程式(補助的なワールドシート計量hの逆行列に対するオイラー-ラグランジュ方程式)を使ってhを消し去る代わりに,ファインマンの経路積分を計算して,局所対称性やゲージ固定を扱う標準的な機構を使うことになる.これを正しく実行すれば, 時空次元がD=26以外では,共形異常が存在することがわかるだろう.これらのことについては,第2、第3章で詳しく調べられる.スーパーストリングに対する類似の解析は,臨界次元D=10を与える.
閉ストリングと開ストリング
埋め込み関数X(σ, τ)における[XはX^μの代わりである],パラメータτはワールドシート時間座標であり,σは,与えられたワールドシート時間でのストリングをパラメトライズしたものである.閉ストリングに対しては,それは位相的には円であるが,空間的パラメータσに周期を与えなければならない.周期をπとすれば,ストリングの両端は一致する.X(σ, τ)= X(σ + π, τ).すべてのストリング理論は,閉ストリングを含んでおり,臨界ストリング理論の閉ストリング・スペクトルの質量なし型として,グラビトンがつねに現れる.
開ストリングに対しては,それは位相的には線区間であるが,各端は,(μの各値に対して),ノイマン境界条件あるいはディリクレ境界条件のどちらを満たさなければならない.ディリクレの条件は,ストリングの端が結びつく時空超曲面を特定する.これは,開ストリングの端が,Dブレーン(Dはディレクレの略)とよばれる物理的対象につながっていると考えるときにのみ意味を持つ.すべての開ストリングの境界条件がノイマン型なら,ストリングの端は時空のどこにあってもいい.この現代的解釈は,時空全体を覆うDブレーンが存在することを示しているとするものである.
摂動論
摂動論は,量子電気力学(QED)のような,小さな,次元のない結合定数をもつ量子理論において有効である.小さなパラメータを使って展開される物理量を計算できるからである.QEDでは,小さなパラメータは微細構造定α~1/137である.
物理量T(α)は,

と(ファインマン・ダイアグラムを使って)計算される.
摂動級数は,通常,収束半径0の漸近展開であり,さらに,展開の第一項が正しい近似を与えるのだから,展開パラメータが小さいとき,摂動展開は有効である.
ヘテロおよびII型スーパーストリング理論は,向きをもつ閉ストリングのみを含む.その結果,それらの摂動展開におけるワールドシートは,向きづけられた,閉[つまりコンパクト]リーマン面である.摂動展開の各階で,ただ一つのワールドシート位相が存在して,それは,紫外効果を有限にする働きをもつ.摂動展開の各階でちょうど一つのストリング・ファインマン・ダイアグラムが存在するという事実は,量子場の理論[場の量子論]では多数のファインマン・ダイアグラムが現れるということと著しく対照的である.ストリング理論においては,結合定数g_sは小さいと期待できる特別な理由は存在しない.そのため,摂動論のみで現実的な真空を正確に解析できそうもない.このことから,ストリング理論では,非摂動的効果を理解することが重要となる.
スーパーストリング
1984年,最初のスーパーストリング革命は,N=1超対称性をもつ10次元の理論が,量子力学的に矛盾のないものであるためには,二つの有望なリー代数; SO(32)あるいはE8×E8のどちらかの局所ヤン-ミルズ対称性を要求するという発見で始まった.第5章で述べるように,この二つの代数のうちから選択する場合にのみ,ある種の量子力学的アノマリーが取り除かれる.この2つの群のみが有望であるという事実は,ストリング理論は非常に制約された構造をもっていて,そのために,とても予言力が強いのかもしれないということを示唆された.
left-moving型とright-moving型の双方に対して,形式的にスーパーストリングを使うときは,left-moversとright-moversに結びつけられた超対称性は,パリティ反対称(opposite handedness)か,同じパリティ対称性(same handedness)をもつかどちらかであり,この二つの可能性から,IIA型かIIB型という,異なるスーパーストリング理論が生じる.第三の可能性として,左右対称性で類別することで,IIB型の理論から,I型のスーパーストリング理論を派生することができる.その手続きを,多重有向射影(orientifold projection)という. この射影で生き残ったストリングは,向きをもたない.I型およびII型のスーパーストリング理論は,それぞれ,ワールドシートと時空対超称性をもつ形式で,第4章と第5章で議論される.
さらに驚くべき可能性は,形式的に,left-moversには26次元ボソニック・ストリングをあて,right-moversには10次元スーパーストリングをあてるということである.このように作られるストリング理論を「ヘテロ型」とよぶ.ヘテロ型ストリング理論は,第7章で議論される.時空の次元が一致しないのは奇妙だと思うかもしれないが,実は,正しく必要とされるものである.余分なleft-movingの16次元は,矛盾のない理論を与えるための特別な性質をもつトーラスを表す.要求される性質を持つきっちり二つの異なるトーラスがあって,それらは,リー代数SO(32)とE8×E8に対応している.
10次元には,全部で,5つの異なるスーパーストリング理論が存在するのだが,そのうちの3つ,I型理論と2つのへテロ型理論,は10次元の意味でN=1超対称性をもつ.10次元での最小スピノルは16個の実の要素をもち,そのため,これらの理論は,16個の保存量としての超電荷をもつ.I型スーパーストリング理論はゲージ群SO(32)をもち,他方,ヘテロ理論はSO(32)およ