コンサルタント伊藤のつぶやき

コンサルタント活動を振り返り

いよいよ年金支給年齢70歳時代の到来か

2018-11-22 11:07:53 | 日記
いよいよ、70歳までの定年・継続雇用を安倍政権が検討を開始し、2020年には「高年齢者雇用安定法改正案」を国会に提出する予定です。
この後に年金の開始年齢を70歳にするのではないかと、私自身、大変危惧しています。

現在、私の社会保険労務士でもある知人が、70歳までの雇用延長、定年延長、継続雇用制度導入についてのノウハウを厚生労働省から委託され、企業に対して実施しています。
知人の話では、法律改正に向け、70歳までの実績づくりを、厚生労働省はがむしゃらに推進しているとのことです。

しかしながら70歳定年・継続雇用義務化は多くの課題があるように思われます。
まずは、業界一律70歳とするならば、運転手を雇用している運送業。特にバス運転手など高齢による認知機能の低下など、顧客の安全配慮、事故に対するリスクをどうすべきか、
建設業についても体力、運動能力が低下した高齢者の事故防止策、さらにはその他、安全配慮を考慮しなければならない企業、職種についてどうすべきか、
検討すべき課題は多いと思われます。

また、優秀で健康な高齢者であれば、人手不足の今、65歳以降も継続して雇用している企業は増えています。私も70歳雇用、エイジレス、生涯現役で働くことに大賛成です。
しかしながら、70歳雇用の義務化となれば、高齢者のモチベーションの維持を図りながら、若手の昇進、モチベーションの向上などとバランスを取る必要があります。
企業内の人材育成、人事・賃金制度、教育全てに関係してきますので、企業、特に中小企業はうまく対応していかなければなりません。本当にできるのでしょうか。

日本は欧米と比較して解雇、不利益な扱いができにくい環境にあります。高齢者のモチベーション向上は期待できず、
維持さえ困難となった高齢者対応を企業内で処理せよと、一方的に責任を負わせることに問題はないのでしょうか。労使紛争が増加するのではないでしょうか。

現在のところ、義務化でなく、努力義務の可能性が大との話が聞こえてきます。私はこれに賛成です。義務化でなく、努力義務に留めるべきと思います。
継続雇用を強制、義務化するのでなく、高齢者ニーズが高い業種、NPOなど、新たに働ける職場づくり、転職市場を増やす努力を政府も考えるべきと思います。

しかしながら将来は70歳定年・継続雇用義務化の方向に進んでいくのではないでしょうか。
70歳定年・継続雇用義務化の次は、年金の支給開始年齢の引き上げが実施されるはずです。これが政府の本丸です。
政府は現在予定なしと言っていますが、選択ではない70歳以降の年金繰り下げを検討していくはずです。

現在、65歳以降の繰り下げは、受給者の選択で出来ますが、70歳までの繰り下げ支給の制度(1ヶ月遅らせるごとに0.7%づつ増加)
を選択により、受給している者はほとんどいません。
制度を知らない方もいますが、いないにも拘わらず、70歳以降の選択年金繰り下げ制度の検討も始まっています。

70歳までの定年延長、継続雇用の実績アップがなされば、年金の支給開始年齢を70歳からとする法律改正に進んでいくと思われます。
70歳までの定年延長、継続雇用の実績づくり、義務化は、年金支給引き上げの地ならしのためのものであり、本当にハッピーな世の中になるのでしょうか。
生涯現役=美徳、「死ぬまで働く」ことを奨励、強制するような社会になりはしないか、長年働き、病気、両親の介護等でリタイア、
また第2の人生で違う生き方を目指すために職を辞す高齢者が、リスペクトされずに、「働かざる者、食うべからず」の冷たい社会になってしまいはしないか、本当に気になります。

私は、以前、「年金の支給開始年齢が68、70歳? 冗談もほどほどに。」(2011年10月掲載のブログ)で支給開始年齢引き上げ反対についてお話させていただきました。
当時、政府の方針として「100年安心」「年金は現役時代の収入の50%を割り込ませない」とありました。あれから10年も経っていません。
100年安心?一体あの政府方針は何だったのでしょうか。いよいよ偽ることに限界がきたのかもしれません。

私は偽りの年金支給開始年齢の引き上げについて今も反対です。
これは国の信頼を損なうもので、ロシアのプーチン大統領でさえ、引き上げについて案を提出した途端、デモが起こり、一部、撤回をせざるを得ませんでした。

若者も可哀そうです。厳しく年金を納めさせられ、受給開始年齢は引き延ばし。遠い将来に対して年金を払う若者は増加するでしょうか。
生活保護を申請する方が増加するかも知れません。現在、昭和36年(1961年)4月1日までに生まれた方は特例で厚生年金を65歳より前で受給できます。
65歳からの年金支給は昭和36年(1961年)4月2日生まれ以降(女性は5年遅れ)の方となっています。

昭和45年(1970年)以降生まれの方々、段階ジュニア世代は、現在65歳の年金支給開始が70歳になるかもしれません。
いや、もっと対象が拡大され、昭和45年以前に生まれた方も受給開始年齢が引き延ばされるかもしれません。
このようなことで「年金を信頼せよ」なんて、誰が信用するでしょうか。

70歳定年・継続雇用の実績づくり、義務化の裏には、年金支給開始年齢の引き上げがあります。
政府には正直にお話ししていただきたいと思います。

少子高齢社会では、年金について、厳しくなるのは、致し方ありません。今後も国民全員、痛みを分かち合いながら、我慢していく必要はあります。

政治、行政は将来をごまかさず、年金財源について詳しく説明していただきたい。
正直に国民に話す必要があると思います。

高齢者の負担増も考えなければいけないでしょう。
例えば、元気に働いている期間の受給停止、収入がある高齢者に対しての保険料徴収義務(国民年金60歳、厚生年金70歳)の拡大について見直しが必要かもしれません。

また、失業などで負担が重荷になった場合の若年者の救済措置、専業主婦等(第3号被保険者)からの保険料徴収なども併せて議論する必要があると思います。

さらには消費税の大幅アップなども大きな課題です。
これらの議論をせずに、受給開始年齢だけをごまかしながら保険料を徴収していくことは絶対に許せません。
数年前の「100年安心」と偽りの制度改革と同様なことをするならば、いっそのこと、消費税全額を国民一人一人に支給し、年金制度を廃止したほうがすっきりします。

これからは、国民も厳しい選択をする時代がやってくるかもしれません。

現在、外国人労働者問題が国会で議論されています。人手不足からを日本で単純労働する外国人労働者を増やそうと考えている政府ですが、
議論が煮詰まっておらず、大変な騒ぎになっています(平成30年11月22日現在)。少子高齢化で外国人労働者を雇用すること自体はやむを得ないことだと私は思います。

しかしながら来年から改正されることについては、拙速との印象を受けます。
従来からある技能実習生制度では「日本で技術を学んで母国でその技術を生かす」こととなっています。
ところがそれは建前で、単純労働させることが本音という政府の考え方には賛成できません。
本音で丁寧に細かく議論していかないと将来、外国人労働者問題も大変なことになるかもしれません。

今後、70歳定年・継続雇用の審議が始まった時に、この「本音と建前」を私たちは読み取ることが必要です。
70歳定年・継続雇用の審議、年金制度の議論を聞き、真実を見極め、
政治家が言っていることの裏まで読み、どのような制度が良いのか、国民一人一人が考えていかなくてはいけないと思います。

最後に、70歳定年・継続雇用の審議は「外国人労働者問題」のように「木を見て森をみず」ではなく、国の形を示し、議論していただきたいですね。

最後までお読みいただき、有難うございました。 
伊藤経営労務コンサルタント事務所 ito-hiko@mua.biglobe.ne.jp


コメントを投稿