コンサルタント伊藤のつぶやき

コンサルタント活動を振り返り

企業にキャリア開発を浸透させるためには

2016-08-22 12:00:08 | 日記
 企業経営者と話して思うこと。全ての経営者は、一同に「人材育成」が必要との話をします。
これは私が独立して17年、変わっていません。しかしながら、人材育成を具体的に進めることは非常に困難です。
昔でしたら、終身雇用、年功序列制度のもと、OJTを基本に、
一律に主任者研修、係長・課長・部長研修をOFF-JTで、実施することが人材育成であると、
どこの企業も共通の認識であったように思われます。

 しかしながら、今は、個人がどう考え、どう行動するべきかが非常に大切な時代です。
厚生労働省でも平成13年の職業能力開発促進法の改正で、個人主導、キャリア概念についての考えを入れています。

私も公的機関で12,3年前から「キャリア教育」を企業内に導入させることを目的に管理職を対象に研修を実施してきました。
内容については、個々のキャリア分析とキャリアビジョン、個々の発揮能力、能力を発揮させるためのコミュニケーション技法などです。

 当初は、「キャリアとはどういう意味?」「従業員にキャリアを意識させると、転職してしまうのでは。」との質問が結構ありました。
これは、会社側の経営・管理からの質問でしたが、年々、受講者も若返り、今は、このような質問は相当減ってきました。

最近は、受講生や企業の従業員の意識開発が進み、自ら「人生とは」「仕事とは」「自己の信念とは」などを考える方々が増え、
個人の側から「自己理解」するための方法論などの質問が増え、キャリアに対する個人の意識が進んできたとの印象を持っています。

 個人の意識開発は進んでいますが、企業内での「キャリア教育」について、大企業は別として、
中小企業では、まだまだ、浸透していません。なぜでしょう。
多くの企業経営者と相談してきたなか、中小企業でも業種によって、差があると感じます。

製造業では、年功序列、終身雇用を実施している企業が相当数あり、
キャリアなどの新しい概念を企業内に取り入れることの経営意識、従業員の意識がまだ進んでいないようです。
一方、IT企業、海外に拠点を持つグローバル企業、サービス業などは、経営戦略の観点、他社との差別化から
人材育成に着目し、「キャリア教育」などを導入している企業は徐々に増えているように感じます。

 しかしながら、本当の意味での「キャリア教育」「キャリア開発支援」とは、会社、従業員とも「Win-Win」の関係、
さらには個と組織の相互理解がないと浸透できません。これは非常にハードルが高いです。
これを達成していくために、企業側が考えることは、以下の3つだと考えます。

①経営理念・経営方針の共有、徹底がなされること
②個人が成長する機会を経営者・従業員が一体となって望むこと
③日頃の社内コミュニケーションが活性化していること

 日頃から、上記3つを意識して企業活動を行っている企業は本来の「キャリア教育」「キャリア開発支援」が可能となり、
今後は新しい「人材の育成」、「人材成長」へと期待できる企業になっていくでしょう。

一方、これがない企業は形ばかりの「人材育成」をこれからも念仏のように唱え続けることになるでしょう。

 最後に働く側の従業員の問題点も指摘しておきます。
昭和世代の中高年齢者は「キャリア」に対する考え方が希薄です。当然です。
このような教育を受けていませんし、長い間、年功序列、終身雇用の恩恵も受けてきました。

 1990年バブル崩壊後、世の中、企業経営のあり方が大きく変わってしまいました。
中高年齢者の皆さんは、自分自身のなかに、生き方を含めたキャリア的な考え方を入れるなど、意識の転換が必要です。

 現在もこれからも若い世代は学校教育のなかで「キャリア教育」を学び、社内で当たり前のように「キャリア」を論じ、
さらには新しい「人材育成」の考え方を議論する時代がこれから始まります。

経営者、中高年従業員の方々、時代に遅れないよう意識改革をしていきましょう。