コンサルタント伊藤のつぶやき

コンサルタント活動を振り返り

職場活性化事例   新幹線お掃除劇場

2017-11-08 17:01:46 | 日記
前回は、脳をどのように「快感」にさせるか、そのために「ねぎらい」の言葉をかけることの必要性についてお話をしました。
今回は、仕事をする意味を考えます。良く聞く話ですが、社員一人一人、何気なく仕事をしている会社。多くないですか? 

この仕事「なぜやるか」を考えている方々。こんな社員が多くいたら、会社は活性化します。
しかしながら残念なことにほとんどが、意識せずに何気なく、仕事をしています。これは仕事でなく、作業です。

皆さんは、シーシュポスの神話を知っていますか。シーシュポスの神話とは、神々がシーシュポスに、休みなく岩を転がして、
ある山の頂まで運びあげるという刑罰を課すというものです。
しかしながら、ひとたび山頂まで達すると、岩はそれ自体の重さでいつも転がり落ちてしまうのです。
要するに無益で希望の無い労働ほど怖しい懲罰はないという話です。

これはノーベル文学賞を受賞した作家で、哲学者でもあるアルベール・カミュが書いたものです。
ゆえに、シーシュポスは「不条理な英雄」とも書かれています。無益で無意味な、希望の無い、不条理な苦痛。
それでもシーシュポスはその苛酷な状況を受け止め、何度でも立ち上がる。その不条理を運命と受け止めることから
「不条理な英雄」と呼んだわけです。しかしながら仕事がそんな不条理なだけのものならば、やる気はなくなってしまうでしょう。

 以前、聞いた話ですが、新入社員が、お局さん的な上司から仕事を命令されます。
毎日、言われた数字をパソコンに打ちこむのですが、新入社員は意味が分からず、
パソコンに並べられた数字についての意味を上司に聞いたところ、「ただ、言われた事をやればいいのだ」
とのことで、同じ作業を毎日、やり続けました。しばらくしてこの新入社員は辞めてしまったそうです。

結局、お局さん上司もこの仕事の意味は分かっていなかったそうです。このような上司に当たったら、最悪の結果となります。

経営者、リ-ダーは絶えず、実施する仕事の意味を部下に指導していくことが大変重要になってきます。
「なにをするか」でなく、「なぜやるか」です。
こんなことも出来ないリーダーが多くいる会社では、職場の活性化は期待できるはずがありません。

私が印象に残っている企業をここで紹介します。経営方針を徹底し、まさしく仕事の意味を徹底したのが
JRの関連会社である「テッセイ」という会社です。数年前に、テレビで紹介され、本当に驚いたのを覚えています。
これは「新幹線お掃除劇場」と言われ、美しい制服や衣装に身をつつんだ清掃スタッフたちが、驚異的な早さで新幹線を清掃する模様は、
「7分間の奇跡」としてハーバード大学や海外のメディアにも取り上げられたそうです。

私も東京駅等で新幹線を利用する際は必ず、「新幹線お掃除劇場」を見学させていただいています。
なぜ、これほどメディア等で大きく取り上げられたのか。
テッセイは、昔はごく当たり前の「ただ、掃除する高齢清掃員」の集まりでした。
まさしく「言われたとおりの作業」しかしておらず、ミスも多く、従業員の不満も多い清掃会社でした。
これをみた経営者(JRからの出向者)が、従業員のやる気を高まらせるには、「仕事の意味」の定義を変えるしかないと思ったことです。

さらに言うと、「清掃のオバチャン、オジチャン」という人材像を
「世界最高峰の新幹線のメンテナンスを清掃という面から支える技術者」に大きく変えたのです。
ここで生まれたのが清掃パフォーマンス、清掃をお客様に目で楽しんで頂ける7分間の「新幹線お掃除劇場」です。
ここまで大きく変わるには、経営者の経営理念、方針、人材像の徹底、
さらには、従業員側の改善提案など経営者と従業員側の多くの苦労があったことは容易に想像できます。

心のマッチングまでは、大変な道のりだったと思います。
このような誇りを持った清掃員が、奇跡であるとの理由で、職場の活性化事例としてはこれ以上のものはないと思われます。

経営者、リーダーの皆さま。一人ひとりのモチベーションを上げるのは大変です。
しかしながら現在の世の中では、人間同士が多くの感情を抱きながら働いています。
上司は部下を管理し、言われた通りのことをさせることで良いのでしょうか。違うでしょう。
上司と部下が話し合い、納得し、働く。「なぜ、やるか」です。
今後はこのような考えがないと、会社の存続自体、難しい時代になってくるのではないでしょか。