コンサルタント伊藤のつぶやき

コンサルタント活動を振り返り

改正高年齢者雇用安定法セミナーで感じたこと

2012-12-14 16:49:17 | 日記
皆さん。こんにちは。早いもので、今年もあとわずか。今年最後のブログとなります。

先日、ハローワーク主催の「改正高齢法セミナー」で講師をさせていただきました。短い時間でしたが、改正高齢法のポイントについて説明させていただきました。
高齢法が改正される背景のひとつとして、年金の問題があります。来年度(平成25年度)に60歳になる方々から、年金受給開始年齢が引き上げられます。
12年かけて平成37年度には完全に年金受給が65歳になります。

このことにより企業側の義務として原則、「定年後、勤務を希望する者に対して65歳」までの雇用義務を課しています。
しかしながら現在の「高年齢者雇用安定法」では、労使協定を結び、会社が定めた基準に該当した方のみ、定年後の再雇用をしている企業が大半であることから
今回の改正では、「対象者を限定している基準の撤廃」が大きな改正ポイントとなっています。

基準を撤廃(ただし、年金受給者については基準の存続も可能となっています。)し、先ほど話したように「希望者については65歳まで継続雇用する」ことが大原則ですが、
例外も設けられています。それは、就業規則上で、「ただし、解雇事由又は退職事由に該当した場合を除く」と記載した場合、これに該当する定年退職者に対しては、
65歳までの継続雇用を実施しなくても良いことになりました。

これが非常に分かりにくいものとなっています。
「解雇事由又は退職事由」に該当する人とはどんなひとでしょうか。

皆さんの会社の就業規則で「退職事由」については、以下のような企業が大半だと思います。
・退職を願い出て会社から承認されたとき
・期間を定めて雇用される場合、その期間を満了したとき
・定年に達したとき
・休職を命ぜられた者が復職できず休職期間が満了したとき、または復職しないとき
・死亡したとき

 また、「解雇事由」については以下のような条文は最低限記載されていると思います。
・成績又は業務能率が著しく不良で、向上の見込みがなく、かつ他の職務への転換が不可能である等、就業に適さないと認められたとき
・勤務成績又は勤務態度が不良で、改善の見込みがなく、社員としての職責を果たすことができないと認められたとき
・精神又は身体の障害については、適正な雇用管理を行い、雇用の継続を配慮しても、なおその障害により業務に耐えられないと認められたとき

このようなことから、定年後の継続雇用に該当しない人とは、
定年直前に「精神又は身体障害」で「業務に耐えられないと認められたとき」に該当する人だと思います。
業務に耐えられない事を証明できれば、継続雇用しなくても良いと思われます。

「問題のある社員を定年で辞めてもらおう」と思っている会社、社長は多いと思いますが、問題社員については、
定年まで勤務している人を
「成績又は業務能率が著しく不良で、向上の見込みがなく、かつ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「勤務成績又は勤務態度が不良で、改善の見込みがなく、社員としての職責が・・・・・・・・・・・・」
との理由で継続雇用しない事は簡単には認められないでしょう。
認められるには、どの程度の成績不良なのか、改善の余地はあるのか。さらには会社に対する重大な損害を与えるものか、どうかがポイントになると思いますが、
定年直前の人が通常、このような問題を抱えながら長年、定年まで勤務することは考えにくいですね。

また、この際、景気が悪いから辞めてもらおうと考えている会社、社長、これについてもよく考えていただきたいと思います。
なぜなら、整理解雇については解雇の4要件(要素)の視点から判断するからです。

いずれにしても継続雇用に関して「年金受給がない高齢者」にとっては今後、死活問題となります。
今回の改正高齢法の「解雇事由又は退職事由」に該当する人とは、誰が判断するか。
継続雇用の最終決着は裁判所の判断となります。

最後に労働契約法16条にこのような条文があります。
「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を乱用したものとして、無効とする。」

ご参考に。

就業規則の見直しを検討するとともに、日頃から社員とのコミュニケーション、教育を大切に。