コンサルタント伊藤のつぶやき

コンサルタント活動を振り返り

働き方改革講習会を実施してみて

2019-07-04 17:22:21 | 日記
先月、働き方改革の講習会を中小企業主団体に対して実施しました。
メインテーマは、今年4月から実施されている「時間外労働の上限規制」(中小企業は来年4月)
及び「5日以上の時季指定による年次有給休暇付与」への対応についてです。
20名程度の参加でしたが、皆さん、2時間、熱心に聞いていただけたように感じました。

また、一方通行の講義でしたので、参加者の知識がどの程度あるか、はっきりと分かりませんでしたが、基本的な知識がない方は、
今回の「時間外労働の上限規制」及び「5日以上の時季指定による年次有給休暇付与」についての変更点を説明しても
理解することは難しいのではないかと思っています。
経験上、労働基準法、就業規則をしっかり理解している中小企業の事業主の方々は、少数です。

例えば、今回の講習会でのメインテーマでもある、労働基準法の労働時間については、「所定労働時間」と「法定労働時間」の相違、
残業させる場合の「36協定の締結方法」、「特別条項の意味」、「管理監督署の範囲」、「割増の計算方法」などです。
休日に関しては、「法定休日」と「法定外休日」及び「振替休日」と「代休」の相違、さらには基本的な有給休暇の知識として、
「有給休暇の消滅」「有給休暇の発生時期」「取得者に対する時季変更権」「パート・アルバイトの有給休暇の有無」、
「計画年休制度と労使協定」など基本的な知識が必要です。

このような基本的な事柄について、今まで多くの経営者、管理者と質疑応答を実施してきましたが、これらの知識がないため、
労働問題に発展した事例を私自身、数多く見てきました。

 昨年、国会での「働き方改革」により労働基準法、労働安全衛生法などは大幅な改正となりましたが、
これを機に経営者、管理者は、法律の基礎的な事項、就業規則の理解を今後、見直しをしていくべきと考えます。是非、ご検討をお願いいたします。

また、働き方改革の話に戻りますが、労働基準法、労働安全衛生法の改正とは別に、
労働の内容が同じ、もしくは同等の労働者には同一の賃金が支払われるべきであるという原則、
同一労働同一賃金が来年4月に始まります(中小企業は1年遅れ)。
これは、パートタイム・有期雇用労働法や労働者派遣法を改正して行なわれます。

さらには、労働施策総合推進法(旧雇用対策法)を改正し、初めてパワハラ防止措置義務が規定されました。
大企業では来年4月から実施となりますが、社会問題となっているパワハラ防止の法制化は初めてのことです。
セクハラやマタニティーハラスメントと違い、これまで企業の自主的な対応に委ねられてきました。

今回、法律化されたことで、企業の経営者、管理者の方々も同一労働同一賃金の対策と併せて、
パワハラ対策の防止に向けて就業規則等の見直し、社員の研修等を実施していくことが求められます。

このような来年以降に実施される事柄についても講習会で、お話をさせていただきました。
また、特定高度専門業務・成果型労働制(高度プロフェッショナル制度)の話にも触れましたが、
国会での議論とは別に導入する企業がほとんどないため、内容には触れませんでした。

最後に、「時間外労働の上限規制」及び「5日以上の時季指定による年次有給休暇付与」への対応についての主な改正ポイントは次の通りです。
「時間外労働の上限規制」
法律によって時間外労働の上限規制を設けた。 
①時間外労働の上限は、原則、月45時間、年間360時間とする(変形労働時間の場合は、月42時間、年間320時間)。
②特別条項で延長できる労働時間は、月最大、休日労働を含めて100時間、年間では720時間(休日労働含まず)。
③特別条項付きの36協定は新書式になり、特別条項を適用するための具体的理由が必要。

「5日以上の時季指定による年次有給休暇付与」
①使用者は10日以上の年次有給休暇が付与されるパート、アルバイト、有期雇用、管理職を問わず、全ての労働者に対し、
毎年5日以上、時季を指定して年次有給休暇を取得させること。
②労働者が自ら有給休暇を取得した場合や、「年次有給休暇の計画的付与制度」により有給休暇を取得させた場合は、
その日数分は上記の義務を免れること。
③時季、日数及び基準日を労働者ごとに明らかにした書類(年次有給休暇管理簿)を作成し、当該年休 を与えた期間中及び当該期間の満了後3年間保存すること。

以上、改正ポイントをご説明させていただきましたが、先ほどもお話ししましたが、まずは、基本的な事項を把握し、改正点を良く理解することです。
私と取引のある企業においては、労働基準法、労働安全衛生法、労働契約法等、労働法全般による労働基準監督署による調査、

さらには男女雇用機会均等法、育児・介護休業法等の観点から調査を実施する労働局雇用環境・均等部などが、就業規則の是正、改善命令などを企業に対して実施しています。
改善命令に従わない場合は罰則もあります。
 
労働法等、今後、企業に対しては、厳しいコンプラインアンスが求められます。マイナスに考えるのでなく、職場活性化の観点から、企業と社員がウィンウィンの関係が築けるよう、
就業規則を検討していくべきと講習会を実施し、改めて感じることが出来ました。

最後までお読みいただき、有難うございました。 
伊藤経営労務コンサルタント事務所 ito-hiko@mua.biglobe.ne.jp


コメントを投稿