コンサルタント伊藤のつぶやき

コンサルタント活動を振り返り

能力を伸ばす「教え方の基本」―2 「俺の背中を見て仕事を覚えろ」?

2020-04-08 11:34:06 | 日記
現在、新型コロナウイルスで休業を余儀なくされている企業様、従業員の皆様、そして国民すべての方に対し、
この事態が早期に収束するよう切に願います。皆で一致団結、この苦難を乗り越えていきましょう。

さて、
前回、教え方についての以下の4つのポイントのうち、1及び2の2つまでご説明させていただきました。
1.なりたい将来像の把握
2.客観的な評価基準
3.自分自身に対する客観的評価
4.自立を促す

今回は、上記3及び4についてお話ししていきます。

自分自身に対する客観的評価について、人は、他人から評価されることにより、自分を客観的に見ることができます。
例えば、空手、剣道では、級から始まり、「段位」をとる段位認定となっています。
自分は今、何級なのか、何段なのかにより、自分の強さを知ることができます。

そして、目標も明確になります。私も学生時代、空手をやっていましたが、初段を取得したときは、人一倍、歓喜したことをよく覚えています。
他人から自身の強み、弱みを受け入れること、認知することにより、主体的に物事を考える能力が高まります。
この自分自身を客観的に認知する能力を「メタ認知」といいます。

メタ認知能力をアップできれば、自分自身を冷静に見られるようになり、高い目標の設定やそれを達成する力、
問題解決能力などを引き上げることができるようになります。
メタ認知能力がないと、失敗したときの原因、他人を怒らせたときの原因などを分析しないまま、年齢を重ねていくことになります。

現在、メタ認知能力がない中高年の方も増えています。このような方は周りの人から相手にされなくなります。
会社で教える側の人もこれらをよく認識して早い時期に部下等にメタ認知能力、客観的評価を身に着けられるよう、指導をお願いいたします。

また、教えられる側は、客観的評価に加えて自己肯定力、簡単に言えば、自分に自信を持つ能力を如何に持つかが大きな課題となってきます。
これについては、一つ一つ成功体験を積んでいくことが大切となってきます。
もちろん、失敗を経験し、それを分析し、成功事例に結び付けていくことも重要になってきます。

教える側もこれらを意識して、時には成功を体験させ、
失敗したときには、原因を分析、モチベーションが下がらないようフォローすることなども必要となってきます。
自分自身を客観的に評価することができ、自分に自信が持てるようになれば、最後は自立をする、させることができるかです。

企業内においての自立とは、成長させるための段取り、メニューが組める状態をいいます。
自分で自分を見つめ、考え、成長していくことです。

では、どうすればよいでしょうか。
具体的には毎日指導している状態から月1回程度の指導にし、自分で考えていく時間を増やしていくことです。
指導の内容ついては、業務の進み具合、状況、今後の課題等についてお互いが、話し合うような関係が良いと思われます。

また、自立し、業務をうまくこなすことは、人により違ってきます。
野球でいえば、守備がうまい人、ホームランバッター、足が速い人など、自分の得意は皆、違います。
また、好きな事と、得意な事も違います。好きであっても、得意でない場合もあります。
得意、不得意、好きな事、苦手な事など、これらを教える側と教えられる側が、良く認識し、
目標達成に向けての実施方法等について、コミュニケーションを密にし、共有していくことが自立するうえで大切です。

自立をさせていくうえで、成功したときのイメージ、失敗しそうなとき、失敗したときのフォローアップなど、
教える側はそのポイントで、どのような助言をするか、ある程度の考え、イメージを持って、進めていく必要があります。

私の経験ですが、若い頃、日常的に大量の仕事を上司から命令されたことがありました。
最初は何をしているのか、意味も分からずにやっていた仕事もありましたが、量をこなすことにより、仕事全般が見えるようになりました。       
また、最初はきつく感じたハードな仕事量も、難なくこなせるようになってきました。

これは、弁証法では量質転化の法則といいます。
量的な変化が質的な変化をもたらし、また質的な変化が量的な変化をもたらします。
少しずつ質をあげること、さらには個別の業務を繋げていく意識を少し持てれば、人は変われます。
自分が変われることに気づけば、また質が上がります。質が上がれば、また量もこなせるようになります。
自分で考え、自分で自分を伸ばせることができれば、教えることの最終目標が達成できた、自立したということです。

参考までに、「量質転化の法則」のほか、「否定の否定」、「相互浸透」等の弁証法の法則がありますが、
これは、エンゲルスやヘーゲルといった哲学者が唱えた理論で、
私も学生時代、空手家の南郷継正氏を通じて教えていただいた理論です。
今でも、企業での人材育成などで、参考にさせていただいております。

弁証法は難解で、私には全てを理解することは出来ませんが、より学びたい人は、
三浦つとむ氏が書かれている弁証法に関する本を購入することをお勧めします。

さて、ここまで能力を伸ばす教え方の基本をご説明させていただきましたが、
教える側も教わる側も本当の「自分らしさ」を失わないよう、自分らしさとは何か、をもう一度、心に聞いてみましょう。

無理やり、他者(両親、上司等)に押し付けられていないか、例えば、○○さんのようになることを期待されたり、
自分自身が過去の成功体験を通じて自身のスキルや強みにこだわりすぎ、
本来の姿でなく、思い込みのキャリアになっていないかなど、
自分自身を冷静に分析してみてください。

また、同時に上司等の教える側が、教わる側の過去の行動、スキル、強みをよく知り、本人が納得できるようなアドバイス、
例えば、一見、長期的なキャリアと今の業務に繋がりがないように見えても、
将来のキャリアに役立つことが説明できれば、違ったキャリアも可能となります。

思い込み、間違ったキャリアになっていれば、今後のキャリアは大変苦しいものとなります。
思い込みのキャリアではなく、本当にモチベーションが上がるよう、自分の価値観と一致できるよう目標になれば、
必ず人は成長し、変わることができます。

このような考えに基づき、上司、管理職は、部下指導していただきたいものです。

最後までお読みいただき、有難うございました。 
伊藤経営労務コンサルタント事務所 ito-hiko@mua.biglobe.ne.jp