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男性不妊症専門医が学術活動ならびに雑感を徒然と綴ります。

片側か両側か

2012-02-24 23:11:41 | 日記
久しぶりの更新となってしまいました。
micro-TESEの際、片側で精子が回収できないとき、そのまま終了するか、もう片側行うかは非常に議論のあるところです。
片側を頑張って探しまわった結果、全くいい精細管がなかった場合、もう片側の精巣において施行するかはドクターによって違います。

利点は精子回収の可能性が上がること。
欠点は術後の痛みが2倍になること、男性ホルモンが下がりえること。手術時間が2倍になること。

私の場合は特別患者さんからリクエストがない限り、必ず両方やることにしています。

なぜなら、
いままでの450例を超える自験例から、片側で精子が回収できなかった約8%において、もう片側から精子が回収できていること。
染色体が46XYの患者においては術後男性ホルモン補充をしなければならないほどの低下となったことがないこと。
が理由です。

クラインフェルターの方は術後男性ホルモン低下がひどく補充することもありますが、このクラインフェルター症候群においては片側で発見できなかった14%の症例で、もう片側で精子が発見できています。合併症を減らすのは当然としても、チャンスをみすみす逃しているかと思うと、いたたまれない気になります。なんとかホルモン低下しないように両側手術を行っています。コツはやはり出血させないことだと思っています。もちろん精子が回収できていたとしても、良好な精子が回収できない場合はもう片側いきます。

片側だけで中止してしまっている場合、確かに確率は低くなりますが、0ではありません。
後悔のない、納得のできる選択をしましょう。
実際に結構精子回収例はあり、妊娠出産まで行った方も多くおられますよ。