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石田芳恵のツボ

フリーアナウンサーのお仕事日記のはずが、大好きな映画・音楽・本のレビューに。感動とやさしい気持ちをお届けしたいです。

小説『国境の南、太陽の西』村上春樹、男心は分かっても女心は分からない話

2010年11月19日 22時03分04秒 | 本の感想(小説)
国境の南、太陽の西 (講談社文庫)
村上 春樹
講談社


村上春樹さんの作品を10代後半で読み始め、この小説は大学1年生の夏に出会った。
ファンの間では、評価が分かれる作品らしいが、
私はとても好きだ。

小説の中には、人を一気に「大人」にしてくれるものがあるが、
この『国境の南、太陽の西』は、私にとって階段を駆け上がれせてくれた作品。
かつて感じた違和感が、今となっては味わいとして噛みしめることができる。
主人公「僕」の幼少期から中年期にいたるまでのできごとと感情がとても丁寧に描かれているからだ。

当時は、「僕」にも、彼の憧れの女性として登場する「島本さん」にも、感情移入できなかった。
にもかかわらず、
誠実な人が持つ「あやふやな」感じに、非常に惹かれた気がする。
そして、涙した。
大学生の私は、迷い考え、悩み、でも根拠のない自信もすごくあったりして、
ふわふわした感じだった。
もう大人なのに、大人になるのが怖く、同時に誰よりも早く大人の思想を持ちたいと思っていた。
けれど、年を重ねてたとしても、完璧な大人になれるわけでもなく、
どこか寂しさや儚さを持ち合わせたまま生きていくわけで、それもまた美しいのかもしれない・・・と、
この物語を通して感じた気がする。

そして10年以上たち私は30代を迎え、主人公の年齢に近づいてきた。

何度も読んだけれど、今、思うことは、
男と女は違うんだな、ということ。

30歳半ばあたりから、男性と女性の人生の目線は確実に変わっていく。
だからこそ、おもしろいのだけど。

男の人が何に憧れ拠り所にしながら40代を迎えるのか、今なら分かる気がする。
やっと私も、男性の持つ寂しさや哀しさが魅力的に感じられる年齢になったのかもしれない。

男の人の心に居続けられる女性になりたいものだ。



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