中世イタリアの思想家マキアヴェッリの著作(「君主論」「政略論」「フィレンツェ史」など)の中から、作家・塩野七生さんが抜粋したものを集めています。
塩野さんの言葉によると、マキアヴェッリの独創性は、
「政治と倫理を切り離した点」にあるそうです。つまり、マキアヴェッリは「政治とは、場合によっては人の道に反することもやらなければならない。道徳よりも、ルールを遂行することに重点を置くべき」と言い切っているんですね。
もちろん、古来より孔子の「論語」的道徳を美徳をしてきた日本人には、全てをすっきりと受け入れることのできない思想かもしれませんが、それを善しとするか否とするかは個人の受け止め方であり、現代のような社会においてはマキアヴェッリの思想は大きな一つのヒントになるかもしれません。
そして「政治」を狭義のコトバ(永田町界隈や新聞の政治欄)で捉えるのではなく、組織対組織、組織対個人、個人対個人のような関係を「政治」と捉える広義な意味であることを踏まえると、このマキアヴェッリの言葉は生き生きとしてきます。
塩野さんいわく、
「政治とはもっと広いもので、もてる力をいかにすれば公正に、かつ効率よく活用できる『技』ではないか」
なんだか、日ごろの悩みをマキアヴェッリが一刀両断してくれそうな気がしてきませんか?
組織の一員の会社員、トップに立つ経営者はもちろん、人間関係に悩む老若男女全ての方々の生きるヒントになるかもしれません。
同意すること、納得することばかりではありませんが、「あ、こんな視点もあるか」と思うと、事態を俯瞰して冷静さを取り戻せるものです。
ぜひぜひ、赤ペンやマーカーを片手に呼んでいただきたい名著です。
☆☆☆☆☆(星5つ!行き詰った時はいつも持ち歩いています)
<おまけ>
そんな私が最近、ゴリゴリと蛍光ペンを引いた文章の一部をご紹介。
「指導者たるものは、破滅を狙う者どもに口実を与えがちな悪評は、細心の注意を払って避ける必要がある」
←必要だと思います。でも難しいことです。だから細心の注意とやらが面倒になります。
「人々の頭脳をあやつることを熟知していた君主のほうが、人間を信じた君主よりも、結果から見れば超えた事業を成功させている」
←信じる前に熟知することが大切。そうしない人ほど「裏切られた」と騒ぎがち。
「もし好機が訪れれば、一朝にして変わる方が有効だ。なぜなら、変容があまりにも急なものだから、以前のやり方で得ていた支持者を失うより先に、新しい支持者を獲得することができるからである」
←苦手分野です。だけど、確かにうやむやにするとなし崩し的な展開になる。
「自らの安全を自らの力によって守る意志を持たない場合、いかなる国家といえども独立と平和を期待することはできない」
←「国家」といわずワタシも、身を守る「意志」を明確に持たないとねと思ったり。
「君主たる者、他者に左右されるような状態からは、できる限り自由であらねばならない」
←ああ、でもいろいろとシガラミがあるのが、社会なのですね。
「人々の嫉妬心が、善きことをしていれば自然に消えていくなどとは、願ってはならない」
←うんうん・・・
「断言してもよいが、中立を保つことは、あまり有効な選択ではないと思う」
←断言されると、かなり辛い。そうなんですか?マキアヴェッリさん。
「個人でも国家でも同じだが、相手を絶望と怒りに駆り立てるほど痛めつけてはならない」
←よくよく考えると基本の「き」なのになあ・・・ 見落としがちな点。
「人間というものは、敬愛か恐怖かのいずれかに突き動かされて行動するもの」
←この視点はシンプルで目からウロコでした。こう単純にないにしろ、分析に迷ったときのヒントになるかもしれません。
「忍耐と寛容をもってすれば、人間の敵意といえども溶解できるとなどと、思ってはならない」
←最近になってようやく理解できたことば。
「人の為す事業は、動機ではなく、結果から評価されるべきである」
←動機やプロセスも大事だけれど、それ以上に結果が全て。これが大人の評価。
「他者を強力にする原因をつくる者は、自滅する」
←これ、すごい言葉だと思う。
「別の人格を装うということは、場合によっては賢明な方法になることがある」
←賢い人ほど人格や性格の振り幅が広いように思います。分かりやすい「キャラ」がもてはやされる昨今が嘆かわしいような。
「軍の指揮官にとって最も重要な資質は、想像力である」
←他人の気持ちを「想像」できる人が本当に優しい人。自分の気持ちを押し付ける想像力のない人間にならないように気をつけたい。
極めつけはコレ ↓
「天国に行くのに最も有効な方法は、地獄へ行く道を熟知することである」