石田芳恵のツボ

フリーアナウンサーのお仕事日記のはずが、大好きな映画・音楽・本のレビューに。感動とやさしい気持ちをお届けしたいです。

小池真理子の短編集「夏の吐息」

2010年04月21日 23時00分46秒 | 本の感想(小説)
夏の吐息 (講談社文庫)
小池 真理子
講談社

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どの作品も素晴らしい。
短編だからこそ味わうことのできる、読後の余韻があります。
官能的で退廃的、
死のにおいがありつつも、
「生きる」ことへの渇望と希望がしっかりと感じられる。

「生」の実感こそが、「恋」なのかもしれないと思いました。

収められている6つの短編は、作者が断言している通り、
「生」と「死」と「愛」しか書かれていない。
濃厚な題材だけれど、私たちの生活に常に存在しているものでもある。
だからこそ共感し、そして一抹の「怖さ」も感じた。

怖くても、思い詰める日々があっても、やっぱり恋はしていこうと思える物語だ。


小池真理子の「恋」を読んだのは27歳のとき。
「無伴奏」を読んだのは29歳のとき。
2冊とも素晴らしい小説なのだけど、
当時の私には強烈すぎて受け止めることができなかった。
はたして、ここまでの感情、愛情が自分から生まれ、
その結果、想像もし得ない行動をとることがあるのか、と。

30歳を過ぎた今は、「夏の吐息」を少し自分に近づけて読めた気がする。
少なくとも、
人の数だけ価値観があり、人の数以上に感情の種類があり、
そんな膨大な感情の種類のなかでも、
人は誰かと共鳴したくて、恋をするのかもしれない、ということくらいは分かった・・・かな。たぶん。

経験を積み、年齢を重ねる醍醐味を教えてくれた一冊。






江國香織「がらくた」、大人の世界はずるくも美しい、というはなし。

2010年04月12日 01時25分45秒 | 本の感想(小説)
がらくた (新潮文庫)
江國 香織
新潮社

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読み応えのある小説です。
甘い砂糖菓子のような雰囲気を江國作品に求めている人には、かなり、ビターかもしれません。

自由で美貌の45歳の翻訳家・柊子と、不穏で奔放な柊子の夫、そして美しい15歳の少女・美海の、3人の織りなす物語。
多くの方が指摘している通り、
柊子が主人公の大人の恋愛小説のスタイルをとっていますが、
15歳の美海の視点で物語をしっかりと読み進めて行くと、この小説の持つ煌めきがさらに鮮やかになります。

大人と子供の間の感性の少女(といっても大人びた子だと思う)から見た「大人」の世界。
ずるくて嘘が多くて、曖昧で。だけど、そこに味わいと美しさがあり、憧れがある。
清濁合わせ飲んでる強さのようなものと、同時に存在するはかなさや弱さのようなものを、
少女は冷静に見つめている。
これは江國の非常に得意な分野です。

そして、いつもの作品のような美しい文体で、
いつもの作品にない「狂気」や「えぐみ」を描いてます。

「人は人を所有できるけれど、独占できない」。
人は他人をすべて理解できるわけでもなく、
自分で自分のことを全部分かっているわけでもない。
だから不安にもなるのだろうし、その不安が愛を深めていくこともある。
そして、自分一人ではどうもこうもコントロールできないことの方が多くなってくる。
だけど、「大人」だから冷静を装う。とりつくろう。受け入れようとする。所有したいから。

道徳や倫理、正義をあまり意識せず(というのもヘンですが)、
世の中にはさまざまな価値観があり、いろんな恋愛や夫婦のスタイルがあるということを前提にして読めば、
かなり含蓄のある物語だと思います。
この世は簡単に解決にできないこと、不条理に満ちている。だから、悩むし、だから考える。

私は好きです、この話。
そういえば、15歳の頃、早く大人になりたくて大人になりたくて仕方なかったことを思い出しました。









鎌倉の桜

2010年04月11日 02時36分35秒 | 出張・おでかけ
学生時代に鎌倉を訪れたとき、鎌倉に「ひとめぼれ」した。
その時は行き当たりばったりの旅だったし、まさか鎌倉へ気軽に行ける距離に住むことになろうとは
当時は思いもしなかったけど。

最近は月に2度ほど鎌倉へ足を運んでいる。

今日は鶴岡八幡宮へ。
春のお祭り初日とあって、御神輿が続き、
温かで品のある活気が印象的だった。

桜の花びらが舞っていた。
散る桜には、いつも儚さがあるけれど、
今日の鎌倉の桜は、どの桜も堂々としている気がした。
質実剛健な桜。

そして、先月の落雷で倒れた「隠れ銀杏」の切り株を目にする。
思った以上に大きかっただけに、悲しかった。
今年の秋に黄金色の銀杏を見ることはできないけれど、
その「子」となる銀杏を育てる方向とのこと。
朽ちて倒れたのではなく、雷で倒れたことが、なんとも神秘的で感慨深い。




ハレノヒの凹カステラ!(麻布十番)

2010年04月10日 19時43分13秒 | 出張・おでかけ
麻布十番は歴史と味わいのある風情が感じられると同時に、
大人がリラックスできる落ち着いたオシャレ感のある街だと思います。


今日の目的は、
ハレノヒの凹カステラ(ぼこかすてら)!
ぽかぽか陽気だったので、ラムレーズンのアイスをトッピングしてもらって、
お店のテラスで頂きました。


幸せの味がする!!!



切り口からトロ~リと柔らかい生地が出てきて、
カステラ表面のふわふわな食感との融合が、絶妙。
甘すぎず、上品。
シンプルだけど、味に層がある。


笑顔がこぼれるお味でした。

お店で食べているお客さんたちはみんなニコニコしていて、
スイーツって人を幸せにするんだなと、改めて思いました。

美味しいものを食べると、
自然と会話も明るくなるものですしね。