映画「パブリック・エネミーズ」オリジナル・サウンドトラックサントラ,ザ・ブルース・ファウラー・ビッグ・バンドユニバーサル ミュージック クラシックこのアイテムの詳細を見る |
アメリカという国のおもしろさを味わえる作品。
アメリカの歴史や風俗に興味のある人にはたまらない映画だと思う。
まさにマイケル・マン監督の真骨頂。
(世界恐慌や禁酒法で鬱屈した世相ながらも、クラシカルな建物やインテリア、
ファッションは、素晴らしい。
そして映画をぐっとセンスアップさせている音楽も絶妙。
サントラだけでも聴く価値あり)
が、1930年代の混沌としたアメリカの歴史的背景をある程度知らなければ、
非常につまらない暴力映画としかうつらないかもしれない。
事実、私が映画館を訪れた際、上映開始から30分たたない間に
多くの女性客が席を立ち、そして帰っていった。
なんてもったいない!!!
ラストの3分のビリー(ジョニーデップの恋人役)と捜査官の会話で、
全てが救われるのに・・・!
この最後のやり取りがキモ。観て良かったと心から思えるのに・・・!
ひらたく言えば、「紳士的な銀行強盗 VS 当局(FBIの前身組織)」の話。
パブリック・エネミーズ(社会の敵)と言われた、実在した伝説のカリスマ的犯罪者を、アメリカの敏腕捜査官たちが国の威信をかけて追う。
日本で石川五右衛門が誰でも知っている大泥棒のように、
アメリカでも非常にメジャーで人気のあるデリンジャーの半生を、映画では何かを誇張するわけでもなくメッセージ性をもたせるわけでもなく、
骨太にシンプルに、でも非常~に知的な目線でもって描いている。
つまりは、この映画を楽しもうと思うと、かなり頭を使うことが要求される。
必要最低限のセリフと説明の少ない構成。
役者の目線や何気ないセリフにも集中しないと、話をつかめなくなってしまう。
当時は州ごとの法律しかなかったアメリカだが、
州をまたいで銀行強盗をするデンジャーの存在が、アメリカの法律を変え、
そしてアメリカ全土で捜査できるFBIの前身となる組織の強化へのつながっていく。
ルールや法律、社会的規範が先にあるのではなく、
「今そのとき」の状況が、法改正や立法を必要としているのだ。
倫理も法も生き物で、それをコントロールするのは、「その時代」を生きている人たち。
判例にならうことが法解釈のスタンダードだが、
どれだけ社会の現状を分析しフレキシブルに対応できるかが求められているのだと思う。
この「パブリック・エネミーズ」は、正直、難しい映画だ。
監督はあきらかに観客を突き放して作っている。
まして、日本人の私たちには基礎知識や共通認識が少なすぎる。
けれど、観客に知性を要求し挑んでくる、こんな映画が私は好きだ。
「分かりやすい」ということは親切だが、決して魅力にはならないもの。
そんな映画の中で、イキイキと解放された演技をしているジョニー・デップは
素晴らしい。
★★★★☆(星4つ!最後の最後まで、席を立たずに観てね)
監督 マイケル・マン
キャスト ジョニー・デップ、クリスチャン・ベイル、マリオン・コティヤール
2009 アメリカ