前作の『楽園のカンヴァス』がとってもロマンチックで、
久々に読書を堪能できたので、
早速、原田マハさんの最新作を購入しました。
主人公は元アイドルの30代のタレント、丘えりか(通称おかえり)。
唯一のレギュラーだった旅番組が打ち切りになって始めたのが、
発注者の代わりに旅をする、旅の代行屋「旅屋」・・・というお話。
『楽園~』に比べて、ずっとポップなタッチの文章と物語です。
もともとこういうテンションの文章を書かれる作家さんだったので、
昔からのファンの方はほっとされているのかな?
読み進めやすく、そして多くの人に勧めやすいのは確かですが、
私個人としては、『楽園~』のようなすっきりと品のある文章や重厚な展開が好み。
ただ、原田さんの小説の最大の魅力である「ハートフルさ」は、こちらにも健在しています。
旅行は自分のためにすることがほとんどですが、
「自分探し」ではなく「誰かのために旅をする」という切り口がとても輝いていました。
「誰か」のために行動することで、
めぐりめぐって「自分」の心も豊かになる。
お互いに感謝の気持ちが持てるって幸せなことです。
物語後半に登場する愛媛県の内子町は、私も旅をしたことのある町だったので、
懐かしい気持ちで読みました。
内子町は、古い町並みが住民の努力で残されていて、本当に奇跡のような場所なんです。
また行ってみたい!とずっと思っていたので、
私も、「旅屋」おかえりさんに代行して頂いているような気分でした。
(取材協力の「甘味喫茶こころ」「町家別荘KOKORO」も素敵なところです)
自分のためじゃなく、誰かのために行動したくなる。
自分のためじゃなく、誰かのために笑ったり、泣いたりしたくなる、そんな優しい小説でした。
2012年4月26日発売 『旅屋おかえり』原田マハ(集英社)1400円