笑うしかない友
~マスク
おい、そこのおねえちゃん。
何か御用?
マスク、外せよ。
いいのかなあ。
軋んだ首相が外せって言ってるぞ。
じゃあ、はい。どう、あたし、きれえ?
げっ。君の名は?
忘れたの?
おお。忘れようとしても思い出せない。
口裂け女だよ。
逃げる。
足元を御覧。
おお。忘れようとして思い出した。狂犬大学略して狂大医学部の地下室でストップ細胞から偶然に生まれ出て高速道路を時速百キロで走り、追い抜き様、笑いながら、「見たなあ」とかなんか言い掛けるとかいう、あの人面犬が、この人面犬か。
可愛い顔して、この子、割とやるもんだね。
ああん、あっああん、ああん。神様、お願いだ。
空を見上げりゃ、空にいる。
あれは何だ。鳥だ。飛行機だ。
スーパーマンじゃないよ。
あれは誰だ。誰だ。誰だ。
デビルマン。デビルマン。
右を向いても左を見ても化け物だらけ。こんな時代に誰がした。
誰のせいでもありゃしない。
みんな、おいらが悪いのか。
その通り。
こんな私を許されて。生まれて御免ね、ジロー。
自分だって、マスクしてるくせに。
なわけない。
その厚い面の皮、摘んで御覧よ。
のび~る。のび~る。隠れて飲んだお昼のビール。
君の名は?
俺は誰だ。誰だ。誰だ。
マスクマン。マスクマン。
(終)