腐った林檎の匂いのする異星人と一緒
34 ゲーム(STAGE11 本当の名前)
あなたがいてもいなくても、ゲームは続く。
そのことを、あなたは知らない。
知っているふりをするために、あなたは町の通りを歩く。しゃなりしゃなり。くねくね。シャキッ。くねくね。だらり。
まっすぐ歩いても退屈だから、曲がろうよ。どっち? どっちでもいいの。でも、決めないとさ。ほら、通り過ぎちゃったよ、角の靴屋さん。この先、しばらく、まっすぐだよね。その次は右か。右。右、右、右だってば!
忙しい。忙しい。なぜだか、とっても忙しい。
景色が色褪せる。夢から醒めたような感じ。そう思うと、色が戻っている。ただし、異様な色合い。本当とは信じられない。信じたくない。信じると、ここがどこだかわからなくなってしまいそう。
一休み。
街路樹の下で俯く。
ここが思い出の場所? へえ、そうなんだ。
思い出せない。自分の名前が思い出せない。その名前を誰が付けてくれたのか、思い出せない。名前を付けてくれた人のことを思い出せたら、名前も思い出せるのかもしれない。
ジャ……
ううん。その名前じゃなくて、本当の名前。
名前なんか、どうでもいいんだよ。
自分が自分でなくてもいいんだよ。
ああ、止まっちゃったね、ついに。左に行くんじゃなかったの? 何があるの、そっち。お肉屋さん? 遊園地。学校。焼け跡……
今からでも戻れるとしたら、あなたはどのSTAGEに戻りますか。
(続)