
ハピネット・ピクチャーズ
グエムル-漢江の怪物- コレクターズ・エディション
今更恥ずかしくて使えない”韓流”を敢えて付けてみた。
「グエムル 漢江の怪物」は、
ここ数年、私が最も注目している監督の一人であるポン・ジュノの最新作である。
オムニバスの「三人三色」(2004年)を除けば、
「殺人の追憶」(2003年)以来、3年振りの新作ということになる。
アメリカに「キングコング」があるように、
日本に「ゴジラ」があるように、
韓国にも代表作となるような怪物映画が欲しい。
ポン・ジュノはそう思ってこの作品を撮ったのではないか。
「グエムル」には、ポン・ジュノの怪物映画に対する強い憧れが
過去の作品で見せて来た彼ならではのエッセンスと共に
全編に散りばめられている。
「グエムル」に登場する怪物は、
深海からやって来るわけでも、空の彼方から飛来して来るわけでもない。
登場までに1時間近く引っ張るような無粋な真似もしない。
開始5分程で、当たり前のように「そこ」に居る。
蓮の花のような形をした口を持った巨大なムツゴロウといった風貌の怪物が
新体操のようなアクロバティックな動きをする様は何ともアンバランスで、
恐ろしいというより、むしろ愛らしくさえある。

グエムル、に似たムツゴロウ
一方、見た事もない異形の怪物を迎え撃つこちら側はと言えば、
何の変哲もない、どこにでもいる、日本で言えば磯野家のような家族である。
母親こそ居ないが、そこそこ仲の良い家族が、
食うに困らない程度の収入を得て、そこそこの生活をしている。
そんな彼等が特殊な武器など持っているはずもなく、
さらわれた娘を救い出す計画もどこか行き当たりばったりで、
用意した武器も何とも心許ない物ばかり。
戦闘機も必殺技も持たない、もちろん巨大化するわけでもない
中流家庭の一親父が怪物相手にどうやって娘を奪還するのか。
この映画は、グエムルの動きや戦闘シーンではなく、
娘のために手を取り合い奮闘する家族の姿こそが見所であり、
だからこそ、これはやはり正統派の「韓国映画」なのである。
笑っていいのか悲しんでいいのか悩んでしまう
シュールな場面も多く、ポン・ジュノ作品に慣れていない方は
この奇妙な味を楽しむより先に拒絶反応が強く出てしまう可能性もある。
まずは「ほえる犬は噛まない」あたりをリトマス試験紙がわりに
観ておくことをお勧めしておこう。
個人的には、「箪笥」「スキャンダル」も手掛けた
イ・ビョンウのメイン・テーマが特に素晴らしかった。
往年の「ウルトラマン」的と言うか、ヒーロー物のテイストと
イ・ビョンウならではの美しい旋律をブレンドした仕上がりが絶品だ。
エンドロールではこの曲が次々にアレンジされて流れるので
是非とも最後までご覧頂きたい。

■DVD:「殺人の追憶」
■DVD:「ほえる犬は噛まない」
どちらもポン・ジュノ作品。
「殺人の追憶」は2003年度公開作品の中でも
個人的にトップ5に入る傑作だと思っている作品。
「グエムル」でも父親を演じるソン・ガンホ出演作。
韓国で実際に起きた未解決事件を題材にしており、
スピード感に溢れた展開もさることながら
田園風景でソン・ガンホが呆然と立ち尽くすラストシーンは
映画史に残る名場面のひとつと言えよう。
「グエムル」「ほえる犬」より遥かに一般向けなので、未見の方は是非。
「ほえる犬は噛まない」は、ポン・ジュノの出発点にして
氏の持つシュールテイストが満載の珍品。
「グエムル」でアーチェリーを武器に闘うガンホの妹、
ナムジュを演じるペ・ドゥナが主演。
犬食文化のある韓国ならではのストーリーなので愛犬家の方は要注意。
娯楽作品としての面白さは「グエムル」に通じるものがある。

■DVD:「大統領の理髪師」
ソン・ガンホの出演作。
以前、当BLOGでも取り上げたことがある。
●頑張る親父「大統領の理髪師」(過去ログ)
「グエムル」が娘のために奔走する父親なら、
こちらは息子のために奔走する父親の話。
韓国軍事独裁政権下という時代を描きつつ、
中心はやはり「親子の絆」。この辺は韓国映画ならではだ。
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
タイトル:グエムル 漢江の怪物
配給:角川ヘラルド
公開日:2006年9月2日
監督:ポン・ジュノ
出演:ソン・ガンホ、ペ・ドゥナ、パク・ヘイル、他
公式サイト:http://www.guemuru.com/
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
▼ポン・ジュノ作品の味なのでしょうが、恐いやらおかしいやら悲しいやら、
▼つかみどころがなく、喜怒哀楽の感情をがっちりと握られた挙句に
▼突き放されたような、後を引くような感覚が残りました。
とブログで感想を述べておりました。
同じですねぇ~(笑)
映画が終わってしまいました。
ラストも「そ、そうなっちゃうの?」って感じで、
奇妙な気持ちでいっぱいです。
これが忍さんの書いていた拒絶反応なのかも。
余談ですが、
主演のお父さんをCMで見たときは、
たけし軍団の人だと思い込んでました。(^^ゞ
(名前は失念)
最近自分はかなり韓国映画びいき(韓国びいきではない)なので、多少甘い得点かもしれませんが、大変面白かったですね~。
ポン・ジュノ作品は「殺人の~」「ほえる犬~」の二本を見ていますが、個人的には「グエルム」が一番大衆向けな気がしました。
にしても、この三本まったくテイストが違いますね。ポン・ジュノ味(隠し味)は至る所に見られましたが(笑)
ネットでは否定的な意見が多いのですか。
ちょっと残念ですね。
うむ、その丁稚殿とは好みが合いそうだ。
忍が宜しくと申しておったとお伝えいただきたい。
>roku殿
ダンカンであろうか。
確かに似ているな。
ポン・ジュノ作品は好みが分かれるので
予備知識無しに見ると面食らうと思うが、
慣れて来るとハマるのだ。
>ずーすか殿
確かに、最近はずいぶんと韓国映画を取り上げておられるようだな。
パク・チャヌク作品を気に入っていただけたようで
私もとても嬉しかった。
私も大衆向けという意味では
グエムル>殺人>犬だと思う。
ネットでは今や、「韓国を褒める人間は潰せ」というような
病的な層が幅を利かせているので仕方ないのでは。