白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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書評・第16回 ヨセの強化書・基礎編

2018年06月26日 23時39分37秒 | 書評

皆様こんばんは。
本日はお金にならない問題を作ってくれた寺山怜五段のために、彼の本をご紹介したいと思います(笑)。



寺山五段と言えば、NHK杯でお馴染みですね。
第63期には準優勝という大活躍でした。
現役バリバリの棋士が作った問題集です。
囲碁の本はベテラン棋士が出すイメージが強かったですが、最近は結構若い棋士も挑戦していますね。
時代が変わってきた感じがします。

さて、本書はヨセの問題集ですが、1つ1つのヨセの目数を問うものではありません。
9路盤の中で最善のヨセを打ち、碁に勝ってくださいという問題になっています。
これも一種のパズルと言えるでしょう。
「囲碁パズルを楽しみながら、結果的にヨセも上手くなる」
本書にはそんな姿勢で取り組むと良いのではないでしょうか。
元々ヨセという分野は、パズル的な要素が強いのです。

これは寺山五段が話していたことで、本書にも書いてありますが、アマチュアの方は本当にヨセが苦手だと思います。
もちろん、読みや計算などもプロとはレベルが違うのですが、一番大きな差があるのがヨセでしょう。
そもそも、大半のアマチュアの方は、ヨセの基本をほとんど理解できていないのですから・・・。
高段者の中にも、ヨセを勘だけで打っている方は少なくありません。

実際、私に3子や4子で指導碁を受ける方の多くも、ヨセになると次々と損をしていきます。
(それは1/3目損だけど仕方ないかな)
(うーん、1目損な方選んじゃったか~)
(3目損はもったいないな~)
などなど、損がどんどん積み上がっていくのがよく分かります。。
そして、途中から数えるのを止めるのですが・・・(笑)。

逆に考えると、ヨセがほんの少し上手くなるだけでも毎局数目という差が生じますし、人によってはそれが何十目にもなるでしょう。
ヨセの能力が裏切ることは無く、ヨセの上手い人はどんなに碁の調子が悪くても、ヨセだけは毎回得をします。
棋士の中でも、タイトルを沢山獲得してきた人は例外なくヨセが得意です。
もちろん、本人の中で一番の得意とは限りませんが・・・。

ということで、強くなりたい方には、ヨセの勉強は非常に効果的です。
そして、本書はヨセの目数計算ができなくても大丈夫です。
また、碁盤に並べて解きたいという方もいらっしゃるでしょうが、9路は安く買えますし、なんなら19路盤を紙で区切っても良いのです。
お好きな方法で取り組んで頂くと良いでしょう。

<注意点>
ここで紹介したのは、ヨセの強化書・基礎編です。
似たデザインの応用編もありますが、両者にはかなり難易度の差があります。
よほど腕に自信のある方以外は、まずは基礎編から購入することをおすすめします。