白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
ブログ移転しました→https://note.com/shiraishi_igo

若さ爆発

2019年01月18日 23時59分59秒 | 囲碁界ニュース等
<本日の一言>
前澤社長のお年玉企画を見ると、ネットの世界の大きさを実感します。
ところで、例のツイート以降株価が1888円から2322円になっているようですが・・・。
もし1億円の効果でこれだけ上がったとしたら、凄い話ですね。
</本日の一言>

皆様こんばんは。
本日は女流棋聖戦第1局を振り返ってみたいと思います。



1図(実戦)
藤沢里菜女流三冠の黒番です。
上野愛咲美女流棋聖の打った白△は、同じ日に芝野虎丸七段も打っていましたね。
数十年前からある定石では白Aなのですが、あえて外して打ちました。
腹中の黒1子のダメが空いてしまうので、見た目には違和感を覚えるのですが、あれこれ考えてみると悪くなさそうです。
AIが人間には気付きにくい手を示し、人間がそれを見て検証した結果、定石が少しずつ変わっていく・・・。
最近はそんなことが多くなっています。





2図(実戦)
さて、そんなマニアックな話はともかく、この碁の最大のハイライトシーンはここしかないでしょう。
黒△と出たところですが・・・。





3図(変化図)
形からすれば、どう見ても白1の押さえです。
プロが100人いれば99人は白1と打つでしょう。
黒4までは一例ですが、大体このような進行になるはずです。
この黒を厳しくいじめることはできませんが、まあ仕方ないというところですね。





4図(実戦)
ところが、実戦は白1と這い、黒2の突き出しを許しました!
黒の根拠を奪ったとは言え、白×が宙に浮いています。
アマの皆様が打ったら、間違いなく「石がバラバラ病」と診断されますね(笑)。

こういう打ち方は、たとえ思い付いたとしても普通は「流石にダメだろうな」と思ってやめてしまうものです。
失敗した時のリスクが大きく、怖いと感じるからです。
しかし、そこでブレーキをかけないのが上野女流棋聖です。
流石17歳、若さ爆発という感じですね。

若いうちは小さくまとまる必要は無く、どんどん自分を出していくべきだと思います。
5年後か10年後かに碁が完成した時、物凄い打ち手になっているかもしれませんね。

ちなみに、藤沢里菜女流三冠も20歳と若いですが、上野女流棋聖ほど過激なことはしません(笑)。
感性は人それぞれなのです。