白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
ブログ移転しました→https://note.com/shiraishi_igo

マネ碁

2017年06月28日 23時59分56秒 | 幽玄の間
皆様こんばんは。
DeepZenGo、やはり強いですね。
幽玄の間で最後に負けて以来、21連勝しています。
今22局目が行われていますが、その対局も勝ちそうです。

DeepZenGoの打ち方は従来と比べて本当に無理が無く、Masterと似たような勝ち方をしている印象です。
やはり碁の真理に近付こうとすると、打ち筋も似て来るのでしょうか・・・。

さて、AIの弱点は何かと考えた時に、まず思い浮かぶのはマネ碁対策はどうなのか? ということです。
碁盤は上下左右が対称になっていますから、相手の初手には殆どの場合対称点が存在します。
そして、初手に対称点、3手目にも対称点・・・と延々と真似を続ける戦法がマネ碁です。

マネ碁は、現代では主に白番で用いられます。
真似を続ければ盤面では差が付かず、最終的にはコミが物を言うという訳です。
一般的にマネ碁は面白くないと思われていますし、対策があるので勝率も良くありません。
最近のプロの対局では絶滅しかけています。

それはそれとして、AIに対してマネ碁を仕掛けたらどう対応して来るのか?
というのは、興味深いテーマです。
Masterに対しては周俊勲九段が試みていますが(未紹介)、その対局は周九段の黒番でした。
そして今回、六浦雄太三段がついに白番で試しました。
中国の「絶芸」に対しては既にマネ碁戦法が試みられているようですが、果たしてDeepZenGoの対策は?



1図(実戦)
左下白△まで、明らかにマネ碁です。
この後黒Aなら白B、黒Cなら白Dという訳です。
マネ碁作戦には色々ありますが、DeepZenGoが選んだのは・・・。





2図(実戦)
黒1の天元打ち!
天元は碁盤の中で唯一対称点が無い中心点です。
ここに打てば相手は真似することができず、マネ碁は破れます。

最も簡単なマネ碁封じですが、この段階で打ったのは驚きです。
というのは、マネ碁を封じれば碁に勝てるとは限らないからです。
この後は通常の碁が進むことになりますから、天元の石が働かなくなり、黒が非勢に陥る可能性も十分にあります。





3図(実戦)
その後、黒1と抜いた場面です。
ここで、仮に黒△の石が無くなる代わりに、もう1手黒が打てると仮定してみましょう。
その場合、果たして黒△に打つでしょうか?

ほとんどの棋士は、黒Aなどの右下方面や、黒Bなどの左下方面に向かいたくなるでしょう。
つまり黒△はベストの位置とは思われず、マネ碁は有効なのではないかとも考えられるのです。
ただし、結果はDeepZenGoが当然の如く勝ち・・・。
天元打ちに十分な価値があるということなのか、DeepZenGoが強すぎるのか?
謎ですね・・・。