白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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国手山脈杯

2016年08月04日 23時00分33秒 | 囲碁界ニュース等
皆様こんばんは。
本日は棋士の対局日ですが、そちらは後回し。
現在、国手山脈国際囲碁大会が行われています。
日中韓台の棋士が参加するペア碁と団体戦、それと並行して子供囲碁大会が開催されているようです。
ペア碁の方は依田・謝ペアが中国ペアに勝って決勝進出!
明日決勝が行われます。

また、団体戦には余正麒七段富士田明彦五段芝野虎丸二段が参加しました。
対戦相手の韓国は李世ドル九段、朴延桓九段、姜東潤九段という最強メンバー!
日本の若手がどれだけ通用するかが注目されました。
その中から富士田五段(黒)と朴九段の対局を振り返ってみましょう。



右下で定石手順が進んでいますが、次の一手はAでしょうか、Bでしょうか?





現在、棋士の対局ではほとんどの場合黒1のハネで白を封鎖します。
しかしこの局面ではぱっとしません。
白Aが残っているので下辺は地にならず、黒△がどう働いて来るのか見えて来ません。
定石を打ったからと言って、周囲の状況に合っていなければ互角にはなりません。





実戦は黒1と1子を引っ張り出しました。
隅の白が生きているだけに、しつこい印象があってこの手はあまり打たれません。
しかし黒7まで進んでみると、黒△が戦いに参加して来そうです。
この局面では適切でした。





黒△が絶好点、模様を広げながら白に迫っては好調でしょう。
白1と手を抜きましたが、黒2、4と迫ってはいかにも白苦しそうです。





しかし白のサバキも巧妙でした。
あちらにツケたりこちらにツケたり・・・
サバキは自在な打ち方が重要です。





白がなんとか形を作って一段落です。
急な攻めが無いので黒1、3と転戦しました。
ここで白はAでしょうか、Bでしょうか?





黒が後から入って来た所で、白1と頭を下げる手はプロには考えられません。
黒2と中央を止められては黒模様が膨大になっていけません。





白1と左右を裂いて飛ぶ一手です。
黒2と根拠を奪われましたが、白3と黒に攻めかかりました。





結果黒は白2子を取り、白は先手で上辺を渡る意外な分かれになりました。
2子を取った黒は手厚いですが、白も広い右辺を荒らしてバランスが取れています。
しかし、黒6は黒が狙っていた厳しい動き出しです。
白の次の一手はAとBどちらでしょうか?





大石が心配なので白1と早く逃げたくなりますが、黒2とポン抜かれてしまいます。
白3が必要なので黒4と連絡を絶たれ、大石が治まるまでには苦労するでしょう。





実戦は1子を逃げ出しました。
黒2を待ってから白5と繋いでいます。
黒6にも白7と逃げ出して行きます。
しかし、こんなに頑張って大丈夫でしょうか?





案の定、黒7とハネられて白4子が苦しくなっています。
しかしここで白は・・・





白1と大石を繋がり、黒2を許しました。
実は1子を逃げ出したのは大石を無事に脱出させるための囮作戦でした。
4子を取られても上下の厚みが重複する事を見越しています。
先手で白3に回って上手いサバキでした。

厚みを生かすべく黒4は強手で、AとBを見合いにして切断する意味です。
白はここでも正面から対応せず、白5とサバキに出ました。
難解な戦いでしたが、無事に生きる事に事に成功しています。
富士田五段も左上で巧妙な手順で生きるなど頑張りましたが、最後は3目半負けでした。
黒が勝つチャンスもあったそうです。


余正麒七段は李世ドル九段相手に互角以上に戦っていたと思います。
しかし錯覚があったのか、左辺の石を取られてしまったのは残念でした。
芝野二段は姜東潤九段の落ち着いた打ち回しに、無理気味な仕掛けを誘われた印象でした。
特徴的な棋風なので対策を立てられていたかもしれません。

結果は残念でしたが、世界戦優勝経験者と戦えたのは良い経験になったと思います。
勝利する日を楽しみにしています。
なお対局の模様は幽玄の間で中継されました。
ぜひご覧ください。