白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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形勢判断と状況判断

2018年07月08日 23時23分52秒 | 囲碁について(文章中心)
皆様こんばんは。
昨日はお休みしました。

さて、最近アマ有段者にこんな質問を受けました。
「正しい形勢判断ができないため、無理をしてしまいます。どうしたら良いですか?」
この答えは「形勢判断ができなくても良いので、しっかりと状況判断をしてください」ということになります。

形勢判断とは、簡単に言えば形勢の有利不利、またその程度を判断することです。
アマチュアの方の苦手分野でもありますね。
形勢判断ができるようになると、勝率を高めることにつながります。
例えば・・・。



<1図>
これは私の碁ですが、ポカで黒×が取られています。
形勢判断の結果、このまま平凡に打っていては万に一つも勝ち目は無いと分かりました。
そこで・・・。





<2図>
実戦は下辺白に襲いかかりました。
厳しく虐めるか、場合によっては取りにいくつもりです。
こんな図体の大きい白を何とかできるとも思えませんでしたが、それでも何かが起こる可能性がある以上、この進行に賭けるしかないと決断しました。
実際、この碁は相手にミスが出て逆転しています。


このように、形勢判断をすることで勝率の期待値を高めることは可能です。
別の言い方をすれば、勝負強くなることができるでしょう。

ただ、それは棋力アップには必須ではありません。
形勢判断によって着手や方針を変えることは、人によってはマイナスの影響が出ることもありますからね。
形勢の悪い時に無理をしたり、形勢の良い時に遠慮することは、目の前の対局にはプラスであっても、悪い手を打つ癖が付いてしまうことがあるのです。

それよりも大事なのは状況判断です。
全局を見て、石の強弱などを確認し、これからすべきことを考えるということです。
その能力を大局観と呼びます。

実は、やるべきことは形勢判断とそれほど変わりません。
ただ、目的が違います。
状況判断をすることの目的は、正しい手を打ったり、適切な作戦を考えることにあります。

正しい手を自然に打てるようになることは、碁の上達において非常に重要です。
ですから、まずは形勢判断の力よりも状況判断の力を磨いて頂きたいですね。