白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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謹賀新年

2018年01月01日 23時28分15秒 | 仕事・指導碁・講座
あけましておめでとうございます。
本年もよろしくお願いいたします。

当ブログを始めて以来、2度目の年明けですね。
昨年はMasterが登場してそれどころではなかったので、2年ぶりに正月気分を味わっています。
31日、1日と実家でのんびり・・・仕事をしているのですが。
明日からは早速指導碁も入っていたりします。
今年も頑張って働くとしましょう!

ところで、皆様は棋譜並べをされていますか?
私は昔は1日に30局ぐらい並べていた時期もありましたが、最近は時間が無いので、パソコンで最新の棋譜をチェックする程度になってしまっています。
ですが、それでも年の始まりには、最初の勉強として棋譜並べをすることにしています。
内容は大体決まっていて、大抵は昔の名人級の打ち手の棋譜です。
本日は私が毎年並べている棋譜をご紹介しましょう。

対局者は村瀬秀甫(黒)と本因坊秀策です。
どちらも名人にはならなかったものの、歴代最強候補に数えられるほどの打ち手です。



1図(黒1~黒25)
見やすいように、25手ずつの4譜分けにしました。
左上、カカられた白石から3間に開く白10は、江戸時代から現代までの膨大の棋譜の中でも、かなり珍しい部類の手でしょう。
秀策の碁には、基本を大切にするというイメージをお持ちの方が多いと思いますが、一方でセンスのある工夫もしばしば見られました。

ちなみに、秀甫が若い頃の対局では、布石で時々違和感のある手が見られます。
本局では黒13がそれで、現代のプロはまずそこには打たないでしょう。
しかし、本局でははっきりと違和感のあるのはこの手ぐらいですね。





2図(白26~白50)
お互いに石の強弱をしっかりと意識していることが感じられるでしょう。
古碁はそうしたところが分かりやすい傾向があります。





3図(黒51~黒75)
本図黒5あたりまで並べるだけでも、十分に良い勉強になるでしょう。
ただ、その後の進行も有段者にとっては学ぶべきものが沢山あります。
例えば、黒19の前に黒17を打つことにも明確な理由があるのです。





4図(白76~黒101)
ちょうど100手紹介して終わるつもりでしたが、101手目(本図26)まで入れておきました。
この譜は一見すると何事も起こっていないのですが、実は水面下では生きるか死ぬかを含めた、大変な読み合いが繰り広げられているのです。
最初から美しいものを作ろうとしたわけではなく、両者が本気でぶつかり合った結果、見事な図形が浮かび上がった・・・。
そんなところも、私が本局を好きな理由の1つです。
なお、本局は黎明秀甫で詳しく解説されているので、そちらも参考にしながら並べて頂ければ、よりお楽しみ頂けるでしょう。

ちなみに、本局は黒1目勝ちとなりました。
両者はヨセも正確なので、ヨセが強くなりたい方は終盤も並べてみると良いでしょう。