今日売れた本の中から
書評 「腹芸」の研究―自分を優位に導く勝者の機略術 (RYU SELECTION) 単行本 – 1985/10/1
中村 慶一郎 (著)
腹芸をネットで検索しgoo辞書等で意味を調べると、はかりごとを言葉や行為に出さず、腹の中で企むこと。また、直接言葉で指示するのではなく度胸や迫力で物事を処理すること。また、そういうやり方。「―のできる政治家」とあり、主に政治的な交渉や駆け引きの際に用いられることが多いようだ。
この書籍では、この言葉は、英語では腹芸をひと言でいい表す言葉はないらしく、日本的風土の中に根付いた言葉だといってよいとある。昔の人ならこの腹芸というと、なんとなく皮膚感覚で分かるようなもので、世の中のさまざまな出来事や交渉もこの腹芸で処理したり、腹芸で目をつぶったりすれば結構うまくいくことを、日本人ならだれでもよく知っているという。
これに近い言葉に最近では忖度という言葉がある。しかし組織の中でこれが出てくると不正に目をつぶったり、ひいては不正を覆い隠すことに間接的に手を貸したりするような事態すら起こりかねない。昔はそれでよかったのだろうが、現代ではそれが何かのほころびから一気に大きな問題として噴出してきたときに、大きく代償として跳ね返ってきたりする。
忖度と腹芸とはまた異なる扱い方となろうが、これからの時代は、ガバナンス(統治)を行う上で考え方に差がでてくるだろう。
しかしながら、政治の世界というのは、このガバナンスがなかなか効きづらい面が多々ある。人間対人間の中では、この腹芸という印象の悪い言葉が時として力を発揮する場面があるのだ。
自分の身を守るためにも、目的を遂行するためにも言葉に出すわけにはいかないが、腹芸をすることによって、対面する相手や集団に忖度させたり、空気を読ませて協調を促したり、意気に感じて人を動かしたりという政治的な能力といえる技能もある面で出てくるのだ。これは必要悪ともいえるかもしれない。
こうしたことは、政治の世界に限らず、企業の世界においても、教育の世界においても必要になる場合が出てくるだろう。人と人との関係や付き合いがある限り、あるいは組織・団体を運営する上での問題がある限り、この腹芸という手段の展開がものをいってくる時がある。人を引き付け、人を引っ張っていくこと、言い換えれば太っ腹という言葉にも腹芸が求められる。
現代では腹芸というと印象が悪いが、昔の法が未熟な時代に培われたある意味リーダーシップ、音頭をとる者ともいえる人たちの技能とはどういったものだったのかをこの書籍は政治の世界から映し出している。
現代においても腹芸がガバナンスをとるためのリーダーシップの技能として進化し機能していくことにもなる場合があるのだが、この日本的な感覚の言葉と技能をどうこれからの時代に生かしていけるかは、これからの人材にかかっている。



書評 「腹芸」の研究―自分を優位に導く勝者の機略術 (RYU SELECTION) 単行本 – 1985/10/1
中村 慶一郎 (著)
腹芸をネットで検索しgoo辞書等で意味を調べると、はかりごとを言葉や行為に出さず、腹の中で企むこと。また、直接言葉で指示するのではなく度胸や迫力で物事を処理すること。また、そういうやり方。「―のできる政治家」とあり、主に政治的な交渉や駆け引きの際に用いられることが多いようだ。
この書籍では、この言葉は、英語では腹芸をひと言でいい表す言葉はないらしく、日本的風土の中に根付いた言葉だといってよいとある。昔の人ならこの腹芸というと、なんとなく皮膚感覚で分かるようなもので、世の中のさまざまな出来事や交渉もこの腹芸で処理したり、腹芸で目をつぶったりすれば結構うまくいくことを、日本人ならだれでもよく知っているという。
これに近い言葉に最近では忖度という言葉がある。しかし組織の中でこれが出てくると不正に目をつぶったり、ひいては不正を覆い隠すことに間接的に手を貸したりするような事態すら起こりかねない。昔はそれでよかったのだろうが、現代ではそれが何かのほころびから一気に大きな問題として噴出してきたときに、大きく代償として跳ね返ってきたりする。
忖度と腹芸とはまた異なる扱い方となろうが、これからの時代は、ガバナンス(統治)を行う上で考え方に差がでてくるだろう。
しかしながら、政治の世界というのは、このガバナンスがなかなか効きづらい面が多々ある。人間対人間の中では、この腹芸という印象の悪い言葉が時として力を発揮する場面があるのだ。
自分の身を守るためにも、目的を遂行するためにも言葉に出すわけにはいかないが、腹芸をすることによって、対面する相手や集団に忖度させたり、空気を読ませて協調を促したり、意気に感じて人を動かしたりという政治的な能力といえる技能もある面で出てくるのだ。これは必要悪ともいえるかもしれない。
こうしたことは、政治の世界に限らず、企業の世界においても、教育の世界においても必要になる場合が出てくるだろう。人と人との関係や付き合いがある限り、あるいは組織・団体を運営する上での問題がある限り、この腹芸という手段の展開がものをいってくる時がある。人を引き付け、人を引っ張っていくこと、言い換えれば太っ腹という言葉にも腹芸が求められる。
現代では腹芸というと印象が悪いが、昔の法が未熟な時代に培われたある意味リーダーシップ、音頭をとる者ともいえる人たちの技能とはどういったものだったのかをこの書籍は政治の世界から映し出している。
現代においても腹芸がガバナンスをとるためのリーダーシップの技能として進化し機能していくことにもなる場合があるのだが、この日本的な感覚の言葉と技能をどうこれからの時代に生かしていけるかは、これからの人材にかかっている。


