年寄りの朝は早い。新聞を取ると有明の月が中天に輝いていた。河川決壊地域の泥土も照らしてあるかと思うと風流でも何でもなかった。下弦の月手前の腹ボテだった。
生活習慣病だからコーヒーは漉し、飲む。ニュースくらい聞こうかと、ラジオをつけると、一夜中の営みに気怠く上気した顔でしな垂れ掛られるような甘えた声でアナウンスが流れた場合、食傷する。それでもトーストくらいは蜂蜜を付けて流し込む。
蜂蜜と言えば、長男の嫁がコストコで買ってくれた大容量で、長持ちしている。
きのう夫婦揃って昼飯を食いに来てくれたので、焼肉にした。カルビとタンに豚レバー、鶏肉を2軒のスーパーで買った。野菜はカボチャ、サツマイモ、ピーマン。食うスピードに間に合わないといけないので、電気ホットプレートとガスボンベ式焼肉鉄板を使った。前菜は豆腐チーズに野菜サラダ。サラダはサラダ菜をベースに、きのこを塩コショウ、味醂にバージンだか何とかオイルで炒め、人参は生で食ったことがないのに、この前のTV「家について行ってイイですか」番組でフランス料理のシェフが塩揉みとか色んな技を使って湯掻かないで作っていたのを参考に、手揉みとその辺の調味料で味付けし、中心にトマトカットを据えて、出した。これで9時からの準備作業の大半を費やした。詰まらない物に凝ると時間が掛かってしまう。
これに台所でサーロインステーキを2枚焼いて2人に出した。嫁さんも、私は鶏肉が好きなどと遠慮していたけれど、ステーキはほぼ完食してくれ、手間が報われた。
昨日の新聞折込チラシに和菓子屋の栗尽くしセットがサービス価格で出ていたので、仕込み中に車を飛ばして買ってきたのを、手土産とデザートにした。焼肉の後に饅頭では重い気がするけれど、ここが当日の仕掛けであった。お茶教室に通い始め、習っている抹茶を振る舞ったのである。おそらく抹茶は2人にとって初めて位のサプライズとなり、感謝された。大事な人に心を込めたもてなしはハートを射やすく、茶の真髄を発揮できた。
しゃかしゃかと
思ひを込めて 点てぬれば
ひとの心を 茶は掠むべし