天愛元年

写真付きで日記や趣味を書くならgooブログ
新元号『天愛』元年にスタート

小苦楽

2019-10-10 15:24:40 | 日記
 台風19号を囃し立てて右往左往している。予報通り関東を直撃すれば特に千葉住民は目も当てられない。台風の神には、いい加減にしろと言いたい。政府などは厳重に警戒を呼び掛けて、鉄道、航空などは停めざるを得ない心境にさせる割には、お得意の自己責任を前面に押しだし、一向に防災の施策、知恵を出そうとしない。甚大な被害が出れば、自衛隊を出動させ、首相以下、何かやった気分に浸っている。科学者などは、ノーベル賞を取ったことなどを笠に着て、学術に金を出さなければ日本の科学が衰退すると銭ゲバ闘争宣言をする割には、防災科学技術には全く無力である。伊能忠敬とか今回のノーベル化学賞受賞者・吉野彰さんのように、公金をせびらなくても優れた学問は達成できる。手前等は何の役にも立たねぇだろうから、ワシが気合いで台風を逸らしてやるわ。

秋扇の うな垂れ控ふ 野分かな



 何週間か前に、Eテレの『ハルさんの休日』で紹介していた東京都新宿区下落合の古民家カフェ「小苦楽」の抹茶メニューに惹かれ、千里を遠しとせず覗いた。正午をとっくに過ぎていたけれど、お昼ご飯を摂る女性客で賑わっていた。美味しそうだったけれど、目白駅前でかけそばを食べてきたので、抹茶にした。芋饅頭の菓子付きだった。お点前は厨房でやって見えなかったけれど、渾身の味わいだった。
 店は目白通りから目立たない路地を入ったところにあり、探し出すのに苦労した。駅横に掲げる近在地図では、3丁目21番は通りの左にあるはずだったけれど、行けど行けど見付からず、遂に4丁目まで来てしまった。通行人に尋ねても知らなかった。人を惑わせるような余計な地図を路上に掲げるな、と国土交通大臣か新宿区長に文句を言いたい。
 棒になった足を鵜の目鷹の目させながら閑静な住宅街に迷い込んでいくと、しずしず歩むご婦人を認めたので声を掛けたら、幸い店をご存じだった。指差しでなく、案内しましょうと仰るので、甘えた。まあ、一見してお互い男と女を卒業している雰囲気を醸し出していたので、警戒心が緩かったかもしれない。ご自分でも何回か店を利用したとか。『ハルさん』というNHK番組を観たので来ましたと言えば、私も観ましたよ。最近、お茶教室に通い出し、抹茶に凝っているんですよと、シンプル過ぎる来訪理由を弁解すると、その方もお茶を嗜んでいたけれど、少し遠ざかっている由。なかなか、話が繋がった。
 目白が古く、というか生まれもそうなのかもしれないけれど、坂の町であることや、林芙美子記念館とか、中村彜アトリエ記念館があったり、文人、芸術家の町であることをいろいろ教えてもらうなど、地誌、歴史、文化に詳しかった。上品な語り口をうっとり聞いていると、木々に囲まれた遊歩道に入った。世俗から隔絶された二人の世界になった。静かでいい所でしょ、と言う。TPOに相応しい答えに詰まりながら、デートコースになりますね、と。この関門を通過すると、閂が外れた。幻影か幻覚か、いきなり美女の面影が浮き彫りになった。あとは誰が喋らせたのか、東京生粋の気品のある方に初めて会ったとか、ミス目白になったことがありますか、とか、速射砲となって口を衝いて出た。
 図らずも小苦楽に着いた。用事があって、方向が同じなので、と仰っていたのが気に懸かっていたので、遠回りしていただいて大助かりでしたとお礼を言って、店前で解放して差し上げた。ひとり抹茶を頂きながら、名前も何も聞けず、お茶を一杯くらいと声を掛けなかったのを、悔いた。

静まれる 緑の回廊 春されば
花の吹雪を 浴びつ歩かな