日記「拾得物(その3)」
<div align="left"><p> 先日、運動後、家に向かって自転車を漕いでいるときのこと、道端にタバコのケースを2回りくらい大きくしたものが落ちていた。「ん、お財布か?」と、少し戻って手に取ってみると、ぬいぐるみのようであった。ただ、その表面にビニールのケースが付いていて、中にはカードのようなものが何枚か入っていた。ただのぬいぐるみであれば、そのままにしたかもしれないが、カードが入っていたので「これは交番に届けた方がよさそうだ」と、いつもその前を通る交番に向かった。</p><p> 現金が入っているかどうかまでは詳しく確認はしなかったが、正直、「これくらいのことで、住所や名前などいろいろと聞かれるのは煩わしいな…」と思っていた。交番に着くと、ラッキーなことにデスクの上には「ただ今、パトロール中です。」の立て札があったので、拾ったものはそのデスクの上に置いてきてしまった。</p><p> さて、もう20年以上も前になるが、私には、この「拾得物」で生涯忘れられない思い出がある。それは、片道約20キロを自転車で通勤していたころのことであった。自分では「何か落ちていないかな?」と、キョロキョロしているつもりはないのだが、1ヶ月の間に3回ほど財布等を拾ったことがある。</p><p> 1回目は手提カバンであった。結構、交通量の激しい道路の雑草の生えた道端であった。中を確認すると、財布やメモ帳などが入っていてたので、そのまま交番に届けた。何百万も入っていれば、「ちょっと拾得した権利を主張しちゃおうかな」などと思ってしまうかもしれないが、交番で対応してくれたお巡りさんには、「権利を主張する気もないし、わざわざお礼の連絡も必要ないので」と告げ、交番を後にした。</p><p> しかし、結果的には、私が不在の間に、落とし主が「お礼をしたい」と家に寄ったようで、気を使ってお菓子を持ってきてくれた。</p><p> 2回目はお財布で、やはり交通量の激しい道端であった。もし中に何も入っていなければ、わざわざそれを拾って交番などに届けることはしないので、ざっとだが中身は確認した。。中には、1万円札や千円札などのお札が数枚、そしてカードなども入っていた。同じように交番に届けた次第である。この人からはお礼の電話を頂いたような気がする。</p><p> そして、3回目もお財布であった…。(つづく)</p></div>