ヒデ系の瞳

平和憲法尊守

憲法守る裁判官排除 原発にお墨付き与えた責任 小説『法服の王国』 黒木亮さん

2013-07-20 | 各界インタビュー
ゆうこ 村下孝蔵 高音質
 

憲法守る裁判官排除 原発にお墨付き与えた責任

黒木亮さん

 これまで金融や経済をテーマに多くの小説を書いてきた作家の黒木亮さんが、新作『法服の王国』を出版しました。テーマは裁判官。作品に込めた思いを聞きました。三浦誠記者

 ― なぜ、裁判官をテーマに・・・。

 実は私自身が、民事裁判に巻き込まれたことがあります。以前、勤めていた大手都市銀行が、私を過剰融資の張本人にでっち上げていたのです。そんなむちゃくちゃな裁判にもかかわらず、裁判長は私の証人尋問中に居眠りをする。あぜんとしました。
 もうひとつは原発訴訟です。福島原発事故で原発の危険性は誰の目にも明らかになりました。しかしそれ以前には、住民が原発停止を求めた各地の訴訟で裁判所は、ほぼ住民側の敗訴としている。最難関の司法試験を通ったエリートがなぜこんなおかしな判断をするのか。メスを入れたい、というのがきっかけです。

 ― 裁判官と弁護士の3人が主人公になっていますが、裁判官のひとりは、『憲法の擁護』を掲げる青年法律家協会(青法協、注参照)の会員ですね。
(注)青年法律家協会は、憲法を擁護し、平和、民主主義、基本的人権を守ることを目的に1954年に結成された団体。

 取材の中で、青法協会員だった元裁判官たちに会いました。エリートで傲慢で世間知らずと思っていた裁判官に対する先入観が打ち砕かれました。
 ある方は、少年事件で無期懲役の判決を下したことをずっと悩んでいました。最近は法務省がなかなか仮釈放しません。少年が60歳になってから仮釈放されても社会に適応できない、少年を更正するために別の判断もあったのでは、と苦しんでおられました。
 こんなに当事者のことを考えて裁判をしている裁判官がいるのかと、人として感心しました。

 ― 良心的な裁判官が排除されることにも触れ、「裁判所は保守・右翼思想の楽園」と書かれています。その意味は・・・。

 1970年代に、自衛隊違憲判決を下した裁判官が左遷させられたり、青法協の会員が裁判官への再任を拒否されたり、「司法の反動化」と呼ばれる事態が起きました。
 当時首相だった佐藤栄作氏の日記には、青法協会員の再任は認めない、と佐藤氏が石田和外最高裁長官(当時)に話したことが書かれています。リベラルな判決が出るのは「憲法を守る」というスローガンを掲げた青法協に元凶があると考えていたのでしょう。石田長官のもとで青法協会員を裁判所から排除する「ブルー・パージ」が始まったのです。
 これで日本の裁判所が思いっきり反動化した。基本的人権と憲法を守る裁判官を冷遇したのです。裁判官たちに、そういう判決を出すこと自体を尻ごみさせて、裁判所を行政の道具にしました。

 ― 原発問題でも住民敗訴が相次いだと・・・。

 原発問題で住民側が勝訴したのは、「高速増殖炉もんじゅ」の原子炉設置許可の取り消しを求めた2審判決(2005年)と北陸電力志賀原発2号機の運転差し止めを認めた1審判決(06年)だけです。この2つも上級審では敗訴しました。
 原発の安全審査は、ずさん以外なにものでもない。裁判でも、安全審査のひどさは立証されていました。それでも最後には国と電力会社が勝つ。
 原発は国策です。裁判官は国策に反する判決を出すことに臆病だというのがあるのでしょう。
 その国策をすすめたのは自民党などの政治家です。原発事故を見ても、それらの政治家の責任は極めて重い。原発にお墨付きを与えた最高裁の責任も当然、あります。

 ― 安倍政権は原発再稼働や輸出に積極的です。

 原発の安全性は証明されていませんし、国民の合意もない。それなのに再稼動や原発輸出をすすめるのは間違っています。背後にあるのは、原子力村との癒着です。

 安倍政権に対して、ちゃんとした批判勢力は、日本共産党以外にありません。民主党などは、総崩れです。共産党がぶれずにやってきたことが、躍進した東京都議選でも評価されたのではないでしょうか。日本共産党は政党らしい政党だと僕は思います。


『法服の王国』(上、下)。
産経新聞出版。各1800円(税抜き)
黒木亮(くろき・りょう)=1957年、北海道生まれ。都市銀行、証券会社、総合商社に23年あまり勤務。その体験などをもとに2000年に経済小説でデビュー。主な作品に『巨大投資銀行』『エネルギー』『冬の喝采』など。英国在住。

(しんぶん赤旗日曜版2013年7月21日号)

しんぶん赤旗 日刊紙 月3.400円 日曜版 800円

日本共産党ホームページ
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