天使の休息 久松史奈 PV
漁民願う 平和な海
オレたちの漁場 中国と外交解決を
尖閣 沖縄・宮古島ルポ
尖閣諸島をめぐり、日中両国で軍事的緊張や対立をあおる動きが続いています。しかし尖閣周辺の海を漁場として生きる沖縄の漁民たちにとって、ここは生活の海。軍事対応ではなく外交交渉を通じて平和の海にしてほしいと願っています。宮古島地方の伊良部島、池間島を訪れ、漁民たちの思いを聞きました。前田泰孝記者。
尖閣での漁歴36年の漢那一浩さん(64)
魚釣島のカツオ漁が生活の糧
「ここはおれたちの海だ」
こう語るのは尖閣での漁歴36年の漢那(かんな)一浩さん(64)。沖縄県宮古島市の伊良部島の漁師です。
漢那さんは毎年12月から3月まで、尖閣周辺の海域で、ウブシュウ(スマカツオ)をとります。
「冬、北風が吹き始めて水温が下がると、ウブシュウはいいぐあいに脂がのる。産卵のために尖閣の浅瀬に集まってくるんだ」
漢那さんの漁船は9・9トン。いつも7~8人の乗組員を乗せ漁に出ます。魚釣島まで片道12時間。野生化したヤギが数えられるくらいまで島に近づきます。
引き縄に疑似餌をつけて海におろします。反応があれば、一気に生き餌となるグルクン(タカサゴ)の稚魚を投げ入れます。同時に散水機で海水を勢いよく放水し、グルクンが元気に暴れまわっているように見せかけると、ウブシュウは興奮状態に。一本釣りのさおを入れると針にどんどん食い付いてきます。
冬の4ヵ月のシーズン中、出航できるのは15~20回程度。採算はなかなかとれません。それに拍車をかけているのが尖閣問題です。中国の海洋監視船や漁業監視船が尖閣周辺を連日航行するようになり、出航を控えめにしているといいます。
「今までは公海上を中国船が走っているぐらいだった。それが領海にも入ってくる。年を追うごとにきな臭くなる。神経を使う」
中国からだけでなく、米軍との問題もありました。
尖閣諸島の久場島と大正島は、今も米軍の実弾射撃場として提供されています。1979年までは実際に訓練が行われてきました。
当時、夜釣りをしていると、突然、米軍機が飛んできて、サーチライトで(島から離れろ)と警告されたことも。「照明弾が爆発して、ぱーっと昼間のように明るくなる。ときどき目の前に落ちた」と振り返ります。
漢那さんは、ウブシュウ漁で家族を養い、家を建て、4人の子どもを大学に通わせることができました。
「ここは漁師の生活の糧。どんなことをしてでも漁は続ける。先輩たちから受け継いだ漁に誇りを持っている」と語る漢那さん。
「日本と中国の軍事的緊張が強まって、漁師が入れなくなる海にはしてほしくない。日本政府には、中国にきちんと言うべきことをいって、外交力で解決してほしい」と強く訴えています。
かつて島で働いていた奥原隆治さん(81)
海は日本船でにぎやかだった
伊良部島には、かつて尖閣の島々で働いていた人もいました。奥原隆治さん(81)は、その一人です。
尖閣諸島では、大正時代には、かつお節製造も行われました。いったんはすたれますが、戦後再開しました。かつお節をつくる職人らも船に乗って伊良部島から出漁。尖閣周辺で釣り上げたカツオを南小島でかつお節にしました。
当時18歳だった奥原さんは、カツオ漁のための生き餌となるキビナゴの稚魚を尖閣周辺の海で捕まえるのが仕事でした。
「あのころ海は日本の漁船群でにぎやかだった。本土からも来ていた。中国の船は見たことがない。今になってなぜ中国は自分の領土だと言うのか」と首をかしげる奥原さん。
そして、こう続けます。「安倍さん(安倍晋三首相)のように憲法改正、自衛隊強化になれば、いずれ軍事衝突するんじゃないかと気が気じゃない。かつての戦争で島の若い者はみんな戦争に行って帰ってこなかった。母親たちはみんな泣いていた。あんな馬鹿げた戦争を再びおこしちゃいけない。だからお互い冷静に領有権の根拠を出し合って、きちんと話し合いをすべきなんだ」
伊良部漁協組合長 友利義文さん
緊張激化が一番困る
地元の願いは、尖閣問題を平和的な外交交渉で解決してほしいということです。安倍首相は、この問題で自衛隊を強化しようとしているようです。しかし、緊張が高まって漁師が漁をできない海域にされるのが一番困るのです。
私たちは終戦直後から尖閣でウブシュウ漁を営んできた。そうやって自分たちが領土・領海を守ってきたという自負があります。
今も海上保安庁に守られながら漁を続けていますし、今後も続けたい。
私たちが望んでいるのは、平和的外交による解決と、海上保安庁の強化なのです。
池間漁協組合長 長嶺巌さん
共産党提言 その通り
池間の漁民も大正島周辺で、マチ類やハタ類などの一本釣りをしています。宮古近海でとれる魚と同じ魚種でも何倍も大きい。豊かな漁場です。
冷静な外交交渉こそ唯一の解決の道だとする日本共産党の尖閣問題に対する提言はまさにその通りだと思います。何より歴史的に日本の領土であることを事実で示して記しているのがいい。尖閣の海で生きてきた者として、それは私たちの実感にもあっています。
領土問題では、とかく頭が熱くなりがちですが、この提言はみんなの気持ちを冷静にさせてくれます。外交交渉で中国ときちんと話し合い、言うべきことは言って、私たちの漁場を守ってほしい。
(しんぶん赤旗日曜版2013年1月13日号)
日本共産党提言のポイント
日本共産党の志位和夫委員長は昨年9月に尖閣問題の提言を発表しました。そのポイントを紹介します。
― 日中双方が、物理的対応の強化や軍事対応論を厳しく自制すべきだ。
― 日本の尖閣諸島領有(1895年閣議決定)は、持ち主のいない土地を先に占めたもので、国際法上、正当な行為。中国は1970年まで75年間、異議も抗議も表明しなかった。
― 歴代日本政府は「領土問題は存在しない」と繰り返すだけで、領有の正当性を主張してこなかった。領土にかかわる紛争問題があることを正面から認め、冷静な外交交渉で領有の正当性を主張し、解決すべきだ。
尖閣問題 日本共産党の見解・提言
http://blog.goo.ne.jp/hydebrave/e/15997e5b6144eb0756bfb0efa97476b2
当ブログ 竹島問題を考える/日本共産党・志位委員長 2006年 韓国訪問の際の発言・再録
http://blog.goo.ne.jp/hydebrave/e/d6c342bcaf1b715f31d6a99a58570833
漁民願う 平和な海
オレたちの漁場 中国と外交解決を
尖閣 沖縄・宮古島ルポ
尖閣諸島をめぐり、日中両国で軍事的緊張や対立をあおる動きが続いています。しかし尖閣周辺の海を漁場として生きる沖縄の漁民たちにとって、ここは生活の海。軍事対応ではなく外交交渉を通じて平和の海にしてほしいと願っています。宮古島地方の伊良部島、池間島を訪れ、漁民たちの思いを聞きました。前田泰孝記者。
尖閣での漁歴36年の漢那一浩さん(64)
魚釣島のカツオ漁が生活の糧
「ここはおれたちの海だ」
こう語るのは尖閣での漁歴36年の漢那(かんな)一浩さん(64)。沖縄県宮古島市の伊良部島の漁師です。
漢那さんは毎年12月から3月まで、尖閣周辺の海域で、ウブシュウ(スマカツオ)をとります。
「冬、北風が吹き始めて水温が下がると、ウブシュウはいいぐあいに脂がのる。産卵のために尖閣の浅瀬に集まってくるんだ」
漢那さんの漁船は9・9トン。いつも7~8人の乗組員を乗せ漁に出ます。魚釣島まで片道12時間。野生化したヤギが数えられるくらいまで島に近づきます。
引き縄に疑似餌をつけて海におろします。反応があれば、一気に生き餌となるグルクン(タカサゴ)の稚魚を投げ入れます。同時に散水機で海水を勢いよく放水し、グルクンが元気に暴れまわっているように見せかけると、ウブシュウは興奮状態に。一本釣りのさおを入れると針にどんどん食い付いてきます。
冬の4ヵ月のシーズン中、出航できるのは15~20回程度。採算はなかなかとれません。それに拍車をかけているのが尖閣問題です。中国の海洋監視船や漁業監視船が尖閣周辺を連日航行するようになり、出航を控えめにしているといいます。
「今までは公海上を中国船が走っているぐらいだった。それが領海にも入ってくる。年を追うごとにきな臭くなる。神経を使う」
中国からだけでなく、米軍との問題もありました。
尖閣諸島の久場島と大正島は、今も米軍の実弾射撃場として提供されています。1979年までは実際に訓練が行われてきました。
当時、夜釣りをしていると、突然、米軍機が飛んできて、サーチライトで(島から離れろ)と警告されたことも。「照明弾が爆発して、ぱーっと昼間のように明るくなる。ときどき目の前に落ちた」と振り返ります。
漢那さんは、ウブシュウ漁で家族を養い、家を建て、4人の子どもを大学に通わせることができました。
「ここは漁師の生活の糧。どんなことをしてでも漁は続ける。先輩たちから受け継いだ漁に誇りを持っている」と語る漢那さん。
「日本と中国の軍事的緊張が強まって、漁師が入れなくなる海にはしてほしくない。日本政府には、中国にきちんと言うべきことをいって、外交力で解決してほしい」と強く訴えています。
かつて島で働いていた奥原隆治さん(81)
海は日本船でにぎやかだった
伊良部島には、かつて尖閣の島々で働いていた人もいました。奥原隆治さん(81)は、その一人です。
尖閣諸島では、大正時代には、かつお節製造も行われました。いったんはすたれますが、戦後再開しました。かつお節をつくる職人らも船に乗って伊良部島から出漁。尖閣周辺で釣り上げたカツオを南小島でかつお節にしました。
当時18歳だった奥原さんは、カツオ漁のための生き餌となるキビナゴの稚魚を尖閣周辺の海で捕まえるのが仕事でした。
「あのころ海は日本の漁船群でにぎやかだった。本土からも来ていた。中国の船は見たことがない。今になってなぜ中国は自分の領土だと言うのか」と首をかしげる奥原さん。
そして、こう続けます。「安倍さん(安倍晋三首相)のように憲法改正、自衛隊強化になれば、いずれ軍事衝突するんじゃないかと気が気じゃない。かつての戦争で島の若い者はみんな戦争に行って帰ってこなかった。母親たちはみんな泣いていた。あんな馬鹿げた戦争を再びおこしちゃいけない。だからお互い冷静に領有権の根拠を出し合って、きちんと話し合いをすべきなんだ」
伊良部漁協組合長 友利義文さん
緊張激化が一番困る
地元の願いは、尖閣問題を平和的な外交交渉で解決してほしいということです。安倍首相は、この問題で自衛隊を強化しようとしているようです。しかし、緊張が高まって漁師が漁をできない海域にされるのが一番困るのです。
私たちは終戦直後から尖閣でウブシュウ漁を営んできた。そうやって自分たちが領土・領海を守ってきたという自負があります。
今も海上保安庁に守られながら漁を続けていますし、今後も続けたい。
私たちが望んでいるのは、平和的外交による解決と、海上保安庁の強化なのです。
池間漁協組合長 長嶺巌さん
共産党提言 その通り
池間の漁民も大正島周辺で、マチ類やハタ類などの一本釣りをしています。宮古近海でとれる魚と同じ魚種でも何倍も大きい。豊かな漁場です。
冷静な外交交渉こそ唯一の解決の道だとする日本共産党の尖閣問題に対する提言はまさにその通りだと思います。何より歴史的に日本の領土であることを事実で示して記しているのがいい。尖閣の海で生きてきた者として、それは私たちの実感にもあっています。
領土問題では、とかく頭が熱くなりがちですが、この提言はみんなの気持ちを冷静にさせてくれます。外交交渉で中国ときちんと話し合い、言うべきことは言って、私たちの漁場を守ってほしい。
(しんぶん赤旗日曜版2013年1月13日号)
日本共産党提言のポイント
日本共産党の志位和夫委員長は昨年9月に尖閣問題の提言を発表しました。そのポイントを紹介します。
― 日中双方が、物理的対応の強化や軍事対応論を厳しく自制すべきだ。
― 日本の尖閣諸島領有(1895年閣議決定)は、持ち主のいない土地を先に占めたもので、国際法上、正当な行為。中国は1970年まで75年間、異議も抗議も表明しなかった。
― 歴代日本政府は「領土問題は存在しない」と繰り返すだけで、領有の正当性を主張してこなかった。領土にかかわる紛争問題があることを正面から認め、冷静な外交交渉で領有の正当性を主張し、解決すべきだ。
尖閣問題 日本共産党の見解・提言
http://blog.goo.ne.jp/hydebrave/e/15997e5b6144eb0756bfb0efa97476b2
当ブログ 竹島問題を考える/日本共産党・志位委員長 2006年 韓国訪問の際の発言・再録
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