「見た目」の偏見と向き合う
マイフェイス・マイスタイル代表 外川浩子さん
女性のさまざまな生き方を紹介する「ときめきカフェ」。今回は「見た目」について考え、情報発信の活動をするＮＰＯ法人「マイフェイス・マイスタイル」代表の外川浩子さん（４５）です。顔や体にあざや、やけど、傷、脱毛など見た目に症状がある人がぶつかっている問題を、当事者ではない立場でとりくみ１０年になります。 只安 計子記者
東京都墨田区にある事務所はスカイツリーが間近に。生まれ育った地です。
「２ヵ月に１回程度開く交流会にはたくさん集まります」と楽しそうに話す外川さん。室内の壁はこれまで会った人たちの写真でびっしり埋められています。
見た目に症状を持つ人とは―。「詳しい数字は分かりませんが、日本には８０万～１００万人いると予測されています」。たとえば、色素が作れないため皮膚や体毛が白いアルビノ、生まれつきの赤あざ（単純性血管腫）、髪だけでなく眉毛など体毛がない脱毛症・・・。
症状を持たない、非当事者の外川さんが、この問題にかかわるきっかけは、十数年前、交際していた人が赤ちゃんのときに顔にやけどを負って大きな傷が残っていた人だったことです。
突き刺さる視線
「私はその人の傷を気にしていないのに、一緒に歩いたり、電車に乗ったり、レストランに入ったりすると、人の視線がつきささってくるようでした。私はすごいストレスを感じました。この問題を自分の中でどう解決していけばいいのかとずっと抱えていました」。
２００１年に出会った本『見つめられる顔 ユニークフェイスの体験』が、大きな転換点になりました。当事者がつづっていたのは、子どものときからのいじめや、就職や結婚のときの差別・・・。直接話を聞きたいと、ユニークフェイスという団体に出かけました。
「話は想像以上の厳しさでした」。脱毛の人は名前ではなく「はげ」と呼ばれ、あざの人は「キモい」といわれ、「うつるから」と直接ものを渡してもらえない、机は一人だけ離される・・・、暴力をともなういじめもありました。
「恋愛、就職、結婚。人生の節目節目で差別に遭遇します。その重い内容を穏やかな表情でたんたんと語る。活動家の雰囲気はなく普通の人。身近な問題だと感じました」。もっと知りたいと、ユニークフェイスの活動に参加し、事務局長・理事も務めました。
見た目重視社会
現在は見た目重視社会です。「当事者は、『人間は外見じゃない、内容が大事』と思うとともに、見た目が大事という考え方があることも理解している。そうして、自分らしい生き方を求めて困難を乗り越えようとしている。その姿に感動しました」。
当事者でも当事者の親でもない外川さん。そんな立場を生かして活動したいと、０６年にユニークフェイスから独立し、「マイフェイス・マイスタイル」を設立。活動を始めました。
「当事者でない人の活動は初めて。当事者からも面白いと励まされました」
教師、医師なども症状についての知識がない人がほとんど。当事者や家族は、同じ症状の人に会うこともまれです。誤解や偏見のなかで悩み、苦しみ、どこにも相談できるところがなく孤立している人が多い。「まず情報発信が大事です」。
「見た目問題」にかかわるさまざまな団体とネットワークを組みたいと年１回のイベントなどを開催。
また、「自分らしい顔で、自分らしい生き方を楽しもう！」と、オールカラーの総合情報誌『マイフェイス』を発行しています。基本は、症状を抱える人が悩みながらも人生を楽しく切り開いていく姿を紹介すること。孤立して、暗闇から抜け出せないと思っている人に届けたいですね」。
人気のコーナーの一つは、外川さんが丁寧に思いを聞き取る「当事者がっつりインタビュー」です。毎回当事者が表紙を飾ります。脱毛症の女性は、かつらをとった、すてきな笑顔で登場。「プールもスノーボードも温泉も、みんなで行けば怖くないっ！」と語っています。
１冊６００円の機関誌は２千部で採算がとれるので、購買予約が２千部に達したら発行します。次号のテーマは「仕事」。内容はもう出来上がっています。
法律事務所をやめて１０年から活動に専念している外川さん。「経済的には大変で、持ち出しになることも。でも私は彼らのファンなんです」といいきります。
「みんなと出会って、人間にとって顔って何だろうかと、見た目を入り口に、自分に真剣に向き合う姿勢を教わりました。私の人生を深めてくれたと感謝しています」。
（しんぶん赤旗 日曜版 ２０１２年１０月２１日号 ときめきカフェ）
とがわ・ひろこ＝１９６７年生まれ。９５年慶応大学卒業。２００１年市民団体ユニークフェイスに参加。０３年理事・事務局長に。０６年マイフェイス・マイスタイル設立、１１年ＮＰＯ法人格取得。
『マイフェイス』の表紙には毎号、当事者が登場。オールカラーでおしゃれ。内容も豊富です。
◇ＮＰＯ法人マイフェイス・マイスタイル
℡03（6658）5580、ファクス03（6658）5581
「見た目問題」解決ＮＰО法人マイフェイス・マイスタイル
http://mfms.jp/
マイフェイス・マイスタイル代表 外川浩子さん
女性のさまざまな生き方を紹介する「ときめきカフェ」。今回は「見た目」について考え、情報発信の活動をするＮＰＯ法人「マイフェイス・マイスタイル」代表の外川浩子さん（４５）です。顔や体にあざや、やけど、傷、脱毛など見た目に症状がある人がぶつかっている問題を、当事者ではない立場でとりくみ１０年になります。 只安 計子記者
東京都墨田区にある事務所はスカイツリーが間近に。生まれ育った地です。
「２ヵ月に１回程度開く交流会にはたくさん集まります」と楽しそうに話す外川さん。室内の壁はこれまで会った人たちの写真でびっしり埋められています。
見た目に症状を持つ人とは―。「詳しい数字は分かりませんが、日本には８０万～１００万人いると予測されています」。たとえば、色素が作れないため皮膚や体毛が白いアルビノ、生まれつきの赤あざ（単純性血管腫）、髪だけでなく眉毛など体毛がない脱毛症・・・。
症状を持たない、非当事者の外川さんが、この問題にかかわるきっかけは、十数年前、交際していた人が赤ちゃんのときに顔にやけどを負って大きな傷が残っていた人だったことです。
突き刺さる視線
「私はその人の傷を気にしていないのに、一緒に歩いたり、電車に乗ったり、レストランに入ったりすると、人の視線がつきささってくるようでした。私はすごいストレスを感じました。この問題を自分の中でどう解決していけばいいのかとずっと抱えていました」。
２００１年に出会った本『見つめられる顔 ユニークフェイスの体験』が、大きな転換点になりました。当事者がつづっていたのは、子どものときからのいじめや、就職や結婚のときの差別・・・。直接話を聞きたいと、ユニークフェイスという団体に出かけました。
「話は想像以上の厳しさでした」。脱毛の人は名前ではなく「はげ」と呼ばれ、あざの人は「キモい」といわれ、「うつるから」と直接ものを渡してもらえない、机は一人だけ離される・・・、暴力をともなういじめもありました。
「恋愛、就職、結婚。人生の節目節目で差別に遭遇します。その重い内容を穏やかな表情でたんたんと語る。活動家の雰囲気はなく普通の人。身近な問題だと感じました」。もっと知りたいと、ユニークフェイスの活動に参加し、事務局長・理事も務めました。
見た目重視社会
現在は見た目重視社会です。「当事者は、『人間は外見じゃない、内容が大事』と思うとともに、見た目が大事という考え方があることも理解している。そうして、自分らしい生き方を求めて困難を乗り越えようとしている。その姿に感動しました」。
当事者でも当事者の親でもない外川さん。そんな立場を生かして活動したいと、０６年にユニークフェイスから独立し、「マイフェイス・マイスタイル」を設立。活動を始めました。
「当事者でない人の活動は初めて。当事者からも面白いと励まされました」
教師、医師なども症状についての知識がない人がほとんど。当事者や家族は、同じ症状の人に会うこともまれです。誤解や偏見のなかで悩み、苦しみ、どこにも相談できるところがなく孤立している人が多い。「まず情報発信が大事です」。
「見た目問題」にかかわるさまざまな団体とネットワークを組みたいと年１回のイベントなどを開催。
また、「自分らしい顔で、自分らしい生き方を楽しもう！」と、オールカラーの総合情報誌『マイフェイス』を発行しています。基本は、症状を抱える人が悩みながらも人生を楽しく切り開いていく姿を紹介すること。孤立して、暗闇から抜け出せないと思っている人に届けたいですね」。
人気のコーナーの一つは、外川さんが丁寧に思いを聞き取る「当事者がっつりインタビュー」です。毎回当事者が表紙を飾ります。脱毛症の女性は、かつらをとった、すてきな笑顔で登場。「プールもスノーボードも温泉も、みんなで行けば怖くないっ！」と語っています。
１冊６００円の機関誌は２千部で採算がとれるので、購買予約が２千部に達したら発行します。次号のテーマは「仕事」。内容はもう出来上がっています。
法律事務所をやめて１０年から活動に専念している外川さん。「経済的には大変で、持ち出しになることも。でも私は彼らのファンなんです」といいきります。
「みんなと出会って、人間にとって顔って何だろうかと、見た目を入り口に、自分に真剣に向き合う姿勢を教わりました。私の人生を深めてくれたと感謝しています」。
（しんぶん赤旗 日曜版 ２０１２年１０月２１日号 ときめきカフェ）
とがわ・ひろこ＝１９６７年生まれ。９５年慶応大学卒業。２００１年市民団体ユニークフェイスに参加。０３年理事・事務局長に。０６年マイフェイス・マイスタイル設立、１１年ＮＰＯ法人格取得。
『マイフェイス』の表紙には毎号、当事者が登場。オールカラーでおしゃれ。内容も豊富です。
◇ＮＰＯ法人マイフェイス・マイスタイル
℡03（6658）5580、ファクス03（6658）5581
「見た目問題」解決ＮＰО法人マイフェイス・マイスタイル
http://mfms.jp/
