TOP ABOUT SITEMAP POLICY HELP
ジャーナリスト。1961年生まれ。大手新聞社で警視庁捜査一課、遊軍などを担当し、殺人事件や海外テロ、コンピュータ犯罪などを取材する。その後、1999年10月、アスキーに移籍。月刊アスキー編集部などを経て2003年2月に退社。現在フリージャーナリストとして、週刊誌や月刊誌などで活動中。
2022年1月
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31
前月 翌月
2006年03月
2006年02月
2006年01月
2005年12月
2005年11月
2005年10月
2005年09月
2005年08月
2005年07月
2005年06月
2005年05月
2005年04月
2005年03月
2005年02月
2005年01月
2004年12月
2004年11月
2004年10月
インターネットの理想と実態
顧客のコアデータに連動させるビジネス
モラル社会を取り戻せ?
国産検索エンジン「マーズフラッグ」にインタビューした
ライブドアへの強制捜査にからんでのうわさ話
『911 ボーイングを捜せ』から見えるもの
ヤフーの社風とweb2.0
ワイヤレスP2Pの行方
進化を模索するラジオ局
世の中の事象をコンピュータ上で可視化する手作業
BLOG


MATRIX

Vol.33 Web2.0的信頼の構築

URLをメールで送信する URLをメールで送信する
(for PC & MOBILE)

XML

Powerd by gooBLOG


※ご意見・ご要望は編集部へ
佐々木俊尚の「ITジャーナル」
Hotwired / Blog / 佐々木俊尚の「ITジャーナル」
 少し古いニュースになるが、松下電器産業が、ジャストシステムの「一太郎」「花子」にユーザインタフェイスの特許権を侵害されたとして提訴した裁判の判決が、2月1日にあった。東京地裁は松下の訴えを認め、「一太郎」の製造販売の中止と製品の破棄を求めたのである。

 この件について、ずっと取材を続けている。松下の特許は1989年に出願された古いもので、どうして今ごろになって裁判沙汰になっているのか、取材を始めた段階では非常に不思議に感じた。

 同様の裁判は、しばらく前にもあった。覚えている人も多いだろう。カシオ計算機がパソコンメーカーのソーテックを訴えた「マルチウィンドウ訴訟」である。カシオは「ディスプレイ上に複数の画面を重ね合わせて表示する発明」についての特許を持っていて、ソーテックが特許を侵害しているとして訴えた。もちろん実際にはソーテックの作っているハードウェアではなく、プリインストールされているWindowsのマルチウィンドウ機能が、特許侵害にあたるとされたのである。そして2003年4月に判決が出て、裁判所はカシオの特許を無効として請求を棄却している。

 ソーテックが無事勝訴したのは良かったが、しかしどうしてこんな裁判が成り立つのか、素朴な疑問を持った人は当時から多かった。私もそのひとりだ。だって、そうではないか。マルチウィンドウ機能を使っているのはWindowsを開発したマイクロソフトであって、ハードベンダーのソーテックではない。どうしてカシオ計算機はマイクロソフトを訴えずに、ソーテックを訴えたんだ?

 関係者によれば、いちおうの説明としては「特許対象が情報処理装置に限られているから」ということらしい。この特許がカシオから出願されたのは1986年で、当時はまだソフトウェアだけを対象にした特許は認められていなかった。特許の流れを時系列に並べると、次のようになる。

 1970年代=電卓型特許(あくまでハードだけに対する特許だった)
 1980年代はじめ=マイコン型特許(ハード制御用のマイコンプログラムについても、ハードとセットで付随して特許が認められるようになる)
 1980年代なかば=ワープロ型特許(ハード制御用に限らず、アプリケーションプログラムについてもハードとセットで特許が認められる)
 1990年代なかば=ソフト媒体型特許(プログラムをおさめたCD-ROMやFDを特許で保護できるよう変わった)
 2000年以降=ネットワーク型特許(媒体に記録されていないプログラムも物の発明として扱うようになった)

 カシオが出願した1986年当時は、ワープロ型特許だった。そしてこの定義通り、カシオはワープロ専用機上の機能として、このマルチウィンドウ特許を出願していた。ワープロの特許は「情報処理装置(ハードウェア)と方法(ソフトウェア)」によって構成されている。ここからソフトだけを切り離すことはできない。そしてこのマルチウィンドウ特許は「情報処理装置」に対する特許なのだから、当然、ハードを製造・販売している会社が係争の相手となる。

 だからソーテックが裁判相手に選ばれた、ということらしい。

 もっとも調べてみると、どうも理由はこれだけではないようにも見える。クロスライセンスの問題があるからだ。大手メーカー同士はお互いの特許を融通し合っていて、簡単に言えばこれをクロスライセンスという。このクロスライセンスの相手ではないところが、裁判相手には選ばれやすい。当時急成長中の新興ハードベンダーだったソーテックが、スケープゴートにされた可能性もあった。もっともこの裁判についてカシオに取材を申し込んだところ、「コメントは差し控えたい」と断られたため、真相はわからない。

 さらにいえば、マイクロソフトは国内パソコンメーカー各社に対して、驚くべき契約も行っていた。WindowsのOEM契約を結ぶ際に、Windowsに使われている技術がメーカーの特許権を侵害する可能性があっても、メーカー側は決して訴訟を起こしてはならないという「特許非係争条項」というのをOEM契約に盛り込んでいたのである。これは日本の公正取引委員会が問題にしており、「不当な拘束で公正な競争を阻害している」として是正を求められている。

 カシオに訴えられたソーテックの裁判闘争は、実に苦難の連続だったようだ。

 当たり前だが、ソーテックは単なるハードウェアベンダーである。OSどころか、ソフトの開発さえほとんど行っていない。それなのに、カシオからマルチウィンドウ特許を抵触していると裁判に訴えられてしまった。つまりマイクロソフトに代わって、「マルチウィンドウ機能はカシオの特許ではない」ということを法廷で説明しなければならなくなってしまったのである。

 通常の特許権裁判であれば、訴えられた側は社内の古い資料を引っかき回し、「ほら、うちの資料を見ると、原告が特許を出願する以前からうちではこの技術を開発して実用化していたんです。だから決して原告の発明ではない」といったことを証明すればいい。しかしソーテックの場合、当たり前だが、そんな資料は社内のどこにもない。かといってマイクロソフトがそんな機密資料を貸してくれるはずもなく、困り果ててしまったようだ。

 そこでソーテックの人びとは、図書館に行ったり、古い文献を調べたりして、マルチウィンドウという機能がいったいいつから使われていたのかを一生懸命調べ続けた。インターネットオークションで探し回って、アップルコンピュータの伝説のマシン「Lisa」を買い求めることまでしたらしい。

 そうやって苦労した末、Macintoshのグラフィックソフト「FULLPAINT」のマニュアルに、マルチウィンドウの記述があることを見つけ出した。そしてこのマニュアルが、カシオが同特許を出願する1か月前の1986年1月、サンフランシスコで開かれた展示会で公開されていたことを突き止めたのである。

 まるで考古学の世界ではないか。

 この努力は素晴らしいが、しかしソーテックというファブレスのハードベンダーにとっては、実のところ何の生産性にもつながらない。ソーテックの技術者も、まさか自分がMacintoshの発掘作業をさせられるとは夢にも思っていなかっただろう。

 このワープロ型特許問題の話は、次回も少し続けたい。
Trackback (0)


« セキュリティ...ライブドアの... »
 
コメント
 
 
 
Unknown (終始)
2005-04-21 02:40:13
今回の問題をざっと見ていた限りでは

パソコンメーカーの中では

ソーテックが会社規模として叩き易いと言う論調が多かったです。

クロスライセンスうんぬんよりも信憑性があると思うのですが…



 
 
 
Unknown (Unknown)
2005-04-21 13:14:25
マルチウンドウなんてもっとさかのぼれますし、Lisaの直接の祖先にあたるゼロックスのマシンを持ち出すだけでもカシオなんかよりずっと古いです。それをコンピュータに関わってる企業が簡単に探し出せないなんて、そっちの方が信じられないです。



松下の裁判にしてもそうですが、いくら専門外のこととは言え裁判官のトンチンカンさも目を覆いたくなりますね。

 
 
 
Unknown (はじめちゃん)
2005-04-21 14:09:38
>>コンピュータに関わってる企業が簡単に探し出せないなんて、そっちの方が信じられないです。



裁判資料として提出できるだけの証拠物件にするのは、大変なことなんだけどね。

しかし今回の話は面白いね。

次回も期待しております。
 
 
 
Unknown (Unknown)
2005-04-21 14:37:39
>裁判資料として提出できるだけの証拠物件にするのは、大変なことなんだけどね。



それはわかるけど、その前にどの時代に当たりを付ければ良いかって段階からして・・・中古のLisaって、話としては面白いかもしれないが、時代錯誤も甚だしい気がする(笑

 
 
 
Unknown (Unknown)
2005-04-21 18:42:41
>マルチウンドウなんてもっとさかのぼれますし、Lisaの直接の祖先にあたるゼロックスのマシンを持ち出すだけでもカシオなんかよりずっと古いです。それをコンピュータに関わってる企業が簡単に探し出せないなんて、そっちの方が信じられないです。



特許内容を見もせずに、名前の印象だけで想像して、人の苦労を貶すのはいかがなものかと思いますね。
 
 
 
Unknown (Unknown)
2005-04-21 21:57:20
> 「コメントは差し控えたい」

 思わず笑ってしまいましたが、対応されたカシオの中の人には少し同情しないでもないです。

 ぜひカシオや松下の「中の張本人」に直撃取材してください。なぜ、こんな馬鹿なマネをしたのか、どうして特許ゴロ行為が承認されてしまったのか、とても興味があります。
 
 
 
道連れ (Cazper)
2005-04-21 22:25:14
これからの特許裁判は、被告側が資料集めるときに、同様に被告になるであろう人を道連れにできるような仮訴訟制度があっても良いような気がしますね。(小資本会社保護を目的として)

現実的には難しいでしょうけども・・・。
 
 
 
Unknown (Unknown)
2005-04-21 22:56:06
あっしも特許内容なんて見てないけど、マルチウィンドーってそんなに細かく特許を分けるほどバリエーションあるんかいな?(笑

 
 
 
소개합니다 (moru)
2005-04-24 14:14:11
일본인에게 일본의 홈 페이지를 소개합니다.

http://www.asian-image.info/

일본인은 이와 같은 홈 페이지를 싫습니까?
 
 
 
Unknown (Unknown)
2005-04-25 19:38:51
続き、楽しみにしてます。
 
 
 
Unknown (Unknown)
2005-04-26 01:46:52
カシオのマルチウィンドウの特許は、複数のウィンドウを、左上から右下にずらして整列させて、ウィンドウタイトルを読めるようにする、というものだったようですね。

ウィンドウズでは、タスクバーの右クリックメニューから重ねて表示を実行すると、そのような整列がされます。



私は、このアイデア自体には特許性は認められると思います。(裁判で明示されたように、既に公的に発表されていた技術なので結果的に特許と認められませんでしたが)

ただ、訴訟相手にソーテックを選んでいるあたりが、なんともいやらしくてアレです。
 
 
 
Unknown (Unknown)
2005-04-26 03:55:56
カシオ-ソーテックの裁判については、おそらく法務力の弱いソーテック相手に1発勝ち、その判例をもとNEC、富士通などからもなにがしかのライセンス料をとりたい、という戦術だったのではないでしょうか。

実をいうと、この裁判の話を私が聞いたとき、ソーテックは「間接侵害」の論理を使ってやれば勝てるような気がしていました。

つまり「ソーテックマシン自体はWindows用に作られたものとは限らず、LinuxでもFreeBSDでも動くよ」と主張すればよかったのかなと。

間接侵害で有名な裁判に、カメラレンズマウントにかかわるトプコン-シグマ裁判というのが昔ありました。

この件では、REスーパーという歴史的名機を作ったトプコンが、交換レンズメーカーのシグマをレンズマウントの特許権侵害で訴えました。ところが、東京地裁は、「シグマレンズは、いろいろなメーカーのレンズに付けた場合、かならずしもトプコンマウント本来の性能を発揮するものとならない」という理由でトプコンの主張を退けました。

判決は以下のURLにあります。

http://courtdomino2.courts.go.jp/chizai.nsf/0/F2089CF3FEC89BAB49256A76002F8AFE/?OpenDocument

私自身は特許の専門家ではないので、私の書いた論理がソーテック-カシオ裁判で成立したかどうかわからないのですが、専門家の方、いかがでしょうか?
 
 
 
Unknown (Unknown)
2005-04-30 02:55:17
特許訴訟において、訴訟のもとになった特許が無効であると判断されたときは、原告側が被告の裁判費用以外に被告側においてかかった経費もろもろ負担するような制度をいれたらどうか?
 
 
 
Unknown (Unknown)
2005-05-02 21:14:03
ここのHotWiredのblogが終わってしまうという話を聞きました。佐々木さんはどうするのでしょうか?別の場所で続ける(または既に有る?)のでしたら、どこなのか教えてください。

 
 
 
Unknown (Unknown)
2005-05-06 14:43:56
おーい。最新版まだ?
 
 
 
Unknown (平田)
2005-05-09 23:32:41
>このワープロ型特許問題の話は、次回も少し続けたい。



期待して待っているのですが、いつ頃になりますか?催促するみたいですいませんが、また入院されているのではないかとか心配しています。
 
 
 
Unknown (きゃぜるぬ)
2005-06-12 06:35:17
>特許訴訟において、訴訟のもとになった特許が無効であると判断されたときは、原告側が被告の裁判費用以外に被告側においてかかった経費もろもろ負担するような制度をいれたらどうか?



敗訴のリスクが増大し、個人や小規模企業が訴訟を起こし難くなってしまう問題が出るんですよ。
 
コメントを投稿する
 
現在、コメントを受け取らないよう設定されております。
※ブログ管理者のみ、編集画面で設定の変更が可能です。
この他の先端人Web日記

高橋靖子の
「千駄ヶ谷スタイリスト日記」

田中秀臣の「ノーガード経済論戦」
goo
Hotwired Japan