佐々木俊尚の「ITジャーナル」

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ライブドアへの強制捜査にからんでのうわさ話

2006-01-20 | Weblog
 ライブドアへの強制捜査にからんで、「フジサンケイグループが東京地検にネタを持ち込んだのではないか」という噂が、マスコミの中を駆けめぐっている。

 ある全国紙記者の話。「フジテレビと産経新聞は昨年春にニッポン放送問題が和解で決着してからも取材班を解散せず、ライブドアの不正を追い続けていた。その中で今回のライブドアマーケティングをめぐる疑惑をつかみ、司法クラブ記者を通じて東京地検にネタを持っていったという話が出ている」

 その噂話の出所は明らかではないが、地検がらみのこうした大事件が起きると、必ず「地検はどこからネタを引っ張ったのか?」という話題になる。地検や警視庁捜査二課が手がける経済犯罪捜査では、新聞やテレビが当局にネタを持ち込むのは決して珍しいケースではない。

 テレビ業界関係者の証言として、以下のような話もある。「年末のパーティーでフジテレビの役員に会い、『ライブドアとの提携を進めるのはたいへんなんじゃないですか』と水を向けたところ、フジテレビの役員は『われわれはライブドアへの監視の目はゆるめていないですからね』と話した。何か含みのある発言に聞こえた」

 今回の強制捜査報道に関しては、日経と産経新聞が先行したとみられている。「朝日、毎日、読売が1月中旬になってようやく、地検からライブドアへの強制捜査の意向をつかみ、取材を開始したのに対し、日経と産経は少なくとも昨年末には情報をつかんでいたらしい」(前出の全国紙記者)

 確かに日経は、強制捜査が入った翌日17日の朝刊で、<「不正取引は明らか」 傘下企業元幹部 買収策への疑問語る>という記事を掲載。リードには<株式交換による買収でライブドア傘下に入ったあるIT(情報技術)関連企業の元幹部は昨年十月から今年一月上旬まで数回にわたり、日本経済新聞の取材に応じ、同社側の買収策への疑問を語っていた>とあり、詳細な一問一答を掲載している。かなり以前からの準備がなければ、こうした記事は書けない。

 また同じ日、一面には前田昌孝編集委員の的確な論説も掲載されている。

 <不正行為の詳細は捜査中だが、風説の流布や偽計取引だけが問題になっているのではないという指摘もある。今回、特捜部が複数の関係先に突如、家宅捜索に入ったのは、「ライブドアの錬金術全体を調べたいという当局の強い意志を感じる」(証券関係者)>

 また産経新聞は同じ17日朝刊の一面で「錬金術師の虚実」という連載をいきなりスタートさせた。内容は目新しいものではないが、強制捜査が前夜16日の午後6時過ぎにスタートしたことを考えれば、かなり用意周到といえる。

 ライブドアの犯した法違反や今後の捜査の動向には何の影響もないが、しかし地検がどのようにして今回の捜査をスタートさせたのかは、かなり気になるところなのである。真相はどうなのだろう。