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ジャーナリスト。1961年生まれ。大手新聞社で警視庁捜査一課、遊軍などを担当し、殺人事件や海外テロ、コンピュータ犯罪などを取材する。その後、1999年10月、アスキーに移籍。月刊アスキー編集部などを経て2003年2月に退社。現在フリージャーナリストとして、週刊誌や月刊誌などで活動中。
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Vol.33 Web2.0的信頼の構築

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佐々木俊尚の「ITジャーナル」
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 少し古いニュースになるが、松下電器産業が、ジャストシステムの「一太郎」「花子」にユーザインタフェイスの特許権を侵害されたとして提訴した裁判の判決が、2月1日にあった。東京地裁は松下の訴えを認め、「一太郎」の製造販売の中止と製品の破棄を求めたのである。

 この件について、ずっと取材を続けている。松下の特許は1989年に出願された古いもので、どうして今ごろになって裁判沙汰になっているのか、取材を始めた段階では非常に不思議に感じた。

 同様の裁判は、しばらく前にもあった。覚えている人も多いだろう。カシオ計算機がパソコンメーカーのソーテックを訴えた「マルチウィンドウ訴訟」である。カシオは「ディスプレイ上に複数の画面を重ね合わせて表示する発明」についての特許を持っていて、ソーテックが特許を侵害しているとして訴えた。もちろん実際にはソーテックの作っているハードウェアではなく、プリインストールされているWindowsのマルチウィンドウ機能が、特許侵害にあたるとされたのである。そして2003年4月に判決が出て、裁判所はカシオの特許を無効として請求を棄却している。

 ソーテックが無事勝訴したのは良かったが、しかしどうしてこんな裁判が成り立つのか、素朴な疑問を持った人は当時から多かった。私もそのひとりだ。だって、そうではないか。マルチウィンドウ機能を使っているのはWindowsを開発したマイクロソフトであって、ハードベンダーのソーテックではない。どうしてカシオ計算機はマイクロソフトを訴えずに、ソーテックを訴えたんだ?

 関係者によれば、いちおうの説明としては「特許対象が情報処理装置に限られているから」ということらしい。この特許がカシオから出願されたのは1986年で、当時はまだソフトウェアだけを対象にした特許は認められていなかった。特許の流れを時系列に並べると、次のようになる。

 1970年代=電卓型特許(あくまでハードだけに対する特許だった)
 1980年代はじめ=マイコン型特許(ハード制御用のマイコンプログラムについても、ハードとセットで付随して特許が認められるようになる)
 1980年代なかば=ワープロ型特許(ハード制御用に限らず、アプリケーションプログラムについてもハードとセットで特許が認められる)
 1990年代なかば=ソフト媒体型特許(プログラムをおさめたCD-ROMやFDを特許で保護できるよう変わった)
 2000年以降=ネットワーク型特許(媒体に記録されていないプログラムも物の発明として扱うようになった)

 カシオが出願した1986年当時は、ワープロ型特許だった。そしてこの定義通り、カシオはワープロ専用機上の機能として、このマルチウィンドウ特許を出願していた。ワープロの特許は「情報処理装置(ハードウェア)と方法(ソフトウェア)」によって構成されている。ここからソフトだけを切り離すことはできない。そしてこのマルチウィンドウ特許は「情報処理装置」に対する特許なのだから、当然、ハードを製造・販売している会社が係争の相手となる。

 だからソーテックが裁判相手に選ばれた、ということらしい。

 もっとも調べてみると、どうも理由はこれだけではないようにも見える。クロスライセンスの問題があるからだ。大手メーカー同士はお互いの特許を融通し合っていて、簡単に言えばこれをクロスライセンスという。このクロスライセンスの相手ではないところが、裁判相手には選ばれやすい。当時急成長中の新興ハードベンダーだったソーテックが、スケープゴートにされた可能性もあった。もっともこの裁判についてカシオに取材を申し込んだところ、「コメントは差し控えたい」と断られたため、真相はわからない。

 さらにいえば、マイクロソフトは国内パソコンメーカー各社に対して、驚くべき契約も行っていた。WindowsのOEM契約を結ぶ際に、Windowsに使われている技術がメーカーの特許権を侵害する可能性があっても、メーカー側は決して訴訟を起こしてはならないという「特許非係争条項」というのをOEM契約に盛り込んでいたのである。これは日本の公正取引委員会が問題にしており、「不当な拘束で公正な競争を阻害している」として是正を求められている。

 カシオに訴えられたソーテックの裁判闘争は、実に苦難の連続だったようだ。

 当たり前だが、ソーテックは単なるハードウェアベンダーである。OSどころか、ソフトの開発さえほとんど行っていない。それなのに、カシオからマルチウィンドウ特許を抵触していると裁判に訴えられてしまった。つまりマイクロソフトに代わって、「マルチウィンドウ機能はカシオの特許ではない」ということを法廷で説明しなければならなくなってしまったのである。

 通常の特許権裁判であれば、訴えられた側は社内の古い資料を引っかき回し、「ほら、うちの資料を見ると、原告が特許を出願する以前からうちではこの技術を開発して実用化していたんです。だから決して原告の発明ではない」といったことを証明すればいい。しかしソーテックの場合、当たり前だが、そんな資料は社内のどこにもない。かといってマイクロソフトがそんな機密資料を貸してくれるはずもなく、困り果ててしまったようだ。

 そこでソーテックの人びとは、図書館に行ったり、古い文献を調べたりして、マルチウィンドウという機能がいったいいつから使われていたのかを一生懸命調べ続けた。インターネットオークションで探し回って、アップルコンピュータの伝説のマシン「Lisa」を買い求めることまでしたらしい。

 そうやって苦労した末、Macintoshのグラフィックソフト「FULLPAINT」のマニュアルに、マルチウィンドウの記述があることを見つけ出した。そしてこのマニュアルが、カシオが同特許を出願する1か月前の1986年1月、サンフランシスコで開かれた展示会で公開されていたことを突き止めたのである。

 まるで考古学の世界ではないか。

 この努力は素晴らしいが、しかしソーテックというファブレスのハードベンダーにとっては、実のところ何の生産性にもつながらない。ソーテックの技術者も、まさか自分がMacintoshの発掘作業をさせられるとは夢にも思っていなかっただろう。

 このワープロ型特許問題の話は、次回も少し続けたい。
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 前回のエントリーで書いたセキュリティの話を続けたい。

 企業でも学術機関でも、スタッフが自分で買ってきた無線LANのアクセスポイントを設置し、勝手に無線LAN環境を作ってしまっているというケースは多い。ネットワーク管理者が把握できない無線ネットワークが作られてしまうと、不正アクセスを受けたりコンピュータウイルスの感染を許したり、あるいは情報漏洩につながりかねない。だから日本の組織の多くは、無線LANアクセスポイントの勝手な設置は禁止しているというケースが大半だ。

 だが前回の冒頭に登場したもらったIT企業の幹部は、取材の折りにこんな話をしていた。

 「わたしの知っているアメリカの企業は、新しい無線ネットワークが勝手に作られた場合、すぐにその場所が特定できるような仕掛けを施しておいた。そして無線LANに誰かが接続してきたら、すぐにその会社のセキュリティポリシーが自動的にダウンロードされるような仕組みを作っておいた。『どうぞご自由に無線LANは使ってください。でもセキュリティポリシーは守ってね』というわけだ。ぼくはこれが、本当のセキュリティの考え方だと思う。日本のように何でもかんでも禁止というのは間違ってるんじゃないですか」

 このアメリカ企業の手法が正しいかどうかは別にしても、日本企業が相変わらず「リスクゼロ」を求めてしまうケースが多いのは事実だろう。

 最近はようやくセキュリティマネジメントの考え方が普及してきたとはいうものの、経営者の中にはいまだにセキュリティに対し、「リスクゼロ」を求める人が少なくないのである。「絶対に誰にも侵入されず、情報も漏洩しないシステムを作れ!」とIT部門に要求してしまうのだ。しかし現実的にはそんなことは不可能だし、安全のパーセンテージをヒトケタ上げるだけでも莫大なコストがかかってしまう。セキュリティにも当然ROI(投資対効果)の考え方が必要で、本来ならリスクとベネフィットのバランスをきちんと保たなければならない。

 日本の組織のこうした考え方は、社会のさまざまな局面に表出している。

 たとえば環境問題。

 2003年春、「ダイオキシン―神話の終焉(おわり)」(日本評論社)という書籍が話題になったことがあった。内容をかいつまんで言えば、「サリンの2倍、青酸カリの1000倍の猛毒」と喧伝されてきたダイオキシンの危険性について「根も葉もない妄想であり、ダイオキシン対策に巨費を投じるのはカネの無駄」と切って捨てている刺激的な内容である。東大生産技術研の渡辺正教授らが著した。

 ダイオキシンといえば焼却炉から排出されるものだというのが定説だとされ、このために2000年にはダイオキシン特別措置法が施行され、焼却炉を高価なハイテク設備のものへと置き換えることが求められてきた。その総予算は莫大な金額に上り、全国で約40兆円に達しているという試算もある。

 だが同書は、ダイオキシンの深刻な被害は過去に報告されていないうえ、焼却炉由来のダイオキシンは微々たる量で、ハイテク焼却炉への莫大な公費の支出はひどい無駄だったと指摘したのである。この本が出た直後、ダイオキシン問題の報道で知られたある全国紙記者は、「急性毒性の被害はこれまでの報告では生じていない。しかし、だからといって『なんでもない物質』といえるのだろうか」「被害が出てからでは遅い」と訴えた。また別の学者も「証拠がなければ何もできないという考え方は間違いで、予防原則が重要だ」と批判した。ダイオキシン反対市民運動側のリアクションは、おおむねこうした論調だったのである。

 渡辺教授らのスタンスは「環境リスクはどんなものもゼロにするのは不可能であり、費用対効果とのバランスを考えていかなければいけない」というもので、ダイオキシン反対運動の「被害が判明していなくてもリスクをゼロにせよ」という意見とは真っ向から対立したのである。

 果たしてハイテク焼却炉が40兆円に見合うベネフィットがあったのかどうかという議論はここでは置いておくとしても、マネジメントに基づいた実際的な議論は、日本社会では相変わらず乏しい。
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 「僕の考える最も素晴らしいセキュリティは、ノーセキュリティ。何にもしないけれど、でもすごく安全というのが理想です。匿名性がきちんと保持されていて、いろんなサイトを自由に歩き回ることができる。でもウイルスに感染する心配はないし、フィッシング詐欺に引っかかる心配もない」

 先日取材した大手IT企業の幹部は、そんなことを言った。個人情報保護法がいよいよ施行され、昨年春に大騒動となったYahoo!BB顧客情報漏洩事件の余波もあって、どの企業もセキュリティ対策に本腰を入れている。そんなさなかに「ノーセキュリティ」とは、いったいどういうことだろう。

 「ノーセキュリティ」というのを文字通り受け取れば、セキュリティ対策を何も取らないということになる。しかし果たして、そんなことが可能なのか。「あしたのジョー」のノーガード戦法みたいなものだろうか。しかし矢吹丈はノーガードで打たれまくった挙げ句に、結局は真っ白に燃え尽きる終末を迎えてしまっている。

 「サイバーノーガード」などというシニカルな言葉もある。セキュリティ対策をきちんといっさい施さなくても、最終的にはたいした被害額にはならないという考え方だ。もし事件が起きたら記者会見でひたすら陳謝し、あとは事件を起こした犯罪者なり元社員なりをひたすら批判すればいい。マスコミは飽きっぽいから、すぐに報道は沈静化するし、莫大な金額をかけてセキュリティリスクをゼロに近づけるのを考えれば、ずっと安くあがる――というものだ。しかも恐ろしいことに、この論理をビジネス的に完全否定できるだけの論拠は、今のところ見つかっていない。

 とはいえ、冒頭に紹介したIT企業幹部のコメントは、サイバーノーガードを意識したものではないようだ。彼は現実にノーセキュリティが今すぐ実現すると言っているのではなく、あくまで理想論としてこの言葉を口にしたのである。彼はこう続けた。

 「どうしてこんな話をするかと言えば、スイスの銀行のセキュリティが世界一素晴らしいという話を思い出したからなんですよ。スイスの銀行と取引を始めると、最初はあれこれ質問され、業務内容なども事細かに調べられて面倒だ。でもいったん取引が始まってしまうと、あとはすごく楽になるんです。電話1本、ファクス1通だけで簡単に数億円ものカネを動かすことができる。IDのチェックも、指紋認証もない。自由だけれど安全という意味では、これこそが本物のセキュリティですね」

 もちろんこれは、プライベートバンクの場合である。富裕層を対象にして、預金や株券などの金融資産の管理や運用を一手に引き受けるサービスのことである。富裕層というのは一般的には、「一億円以上の金融資産を持っている人」を指す。ちなみにメリルリンチの統計によれば、2003年末で世界の富裕層人口は770万人。当然のようにアメリカ人が最も多く、227万人に達しているが、日本人も意外に多い。なんと131万人もいて、全世界の17%を占めている。ざっと日本人100人にひとりは1億円以上のマネーを持っているという計算だ。

 このプライベートバンクにおいては、銀行側の担当者は顧客の「執事」のような役割をつとめ、お互いの信頼関係に基づき、顧客のいっさいの資産の管理・運用を任されるという。昨年、日本国内のプライベートバンクビジネス市場を制覇していたシティバンクが法令違反を犯して金融庁に追い出され、最近は日本の銀行もプライベートバンク部門に進出しはじめている。だがサービスのレベルにおいては欧米とは相当な開きがあるという。そしてプライベートバンク業界の最高峰に位置するのが、スイスの銀行だとされているのだ。

 顧客との信頼関係をじっくりと築き上げ、お互いの信頼をもとに取引を行えば、たしかに高度なセキュリティを実現できるかもしれない。だがプライベートバンクの場合には、非常に高いコストが許されている。一般向けの銀行業務では、こうしたセキュリティのあり方を導入するのは非常に難しい。結局は費用対効果の問題になる。

 それにしても気になるのは、スイスの銀行がどのようにして顧客の認証を行っているのかということだ。たった一通のファクスや電話でカネを動かせるとされているが、なりすましの心配はないのだろうか?
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