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ジャーナリスト。1961年生まれ。大手新聞社で警視庁捜査一課、遊軍などを担当し、殺人事件や海外テロ、コンピュータ犯罪などを取材する。その後、1999年10月、アスキーに移籍。月刊アスキー編集部などを経て2003年2月に退社。現在フリージャーナリストとして、週刊誌や月刊誌などで活動中。
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Vol.33 Web2.0的信頼の構築

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佐々木俊尚の「ITジャーナル」
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 かつて「プッシュ」ということばがインターネットの世界で流行したことがあった。1990年代後半のことである。

 「プル」というのは、ユーザーが要求を送信して初めて、情報が送られてくる情報配信の仕組み。「プッシュ」はその逆で、サーバの側が一方的に情報を送り出し、端末に表示してくれる仕組みのことだ。プル型のメディアであるウェブブラウザに対して、当時、「これからは情報がユーザーに自動的に送りつけられてくるプッシュの時代が来る」とさかんに言われた。

 プッシュの代表的なサービスだったのが、PointCastである。サービスインは1996年。無料配布されていたプログラムをパソコンにインストールすると、デスクトップ画面下部にニュースや天気予報、株価などのコンテンツが自動的に電光掲示板的に表示される。まだアナログモデムやISDNの回線が当たり前で、ネットのコンテンツも乏しかった当時、PointCast経由で流れてくるテキストデータには、多くの人が感動したものだった。PointCastは翌97年に日本法人も設立され、日本語サービスもスタートした。

 だがプッシュは、まもなく廃れた。最大の理由は、当時はブロードバンドが普及しておらず、ネットが常時接続じゃなかったからだ。ダイヤルアップで回線をいちいちつないだり切ったりするような使い方では、プッシュは現実的ではなかったのである。PointCastも2000年にはサービスを終了してしまい、プッシュという言葉は人びとの記憶から薄れていった。

 しかし2002年ごろからはブロードバンドが急激に普及するようになり、どこの家も常時接続になり、ふたたびプッシュが脚光を浴びるようになってきた。思い出したようにニュース記事で「プッシュ復権か?」なんていう観測記事が現れるようになった。

 そしていまや、プッシュは再びネット業界の表舞台へと踏み出しつつある。もちろんプッシュ的なサービスは、ここ数年いくつも現れていた。たとえばスクリーンセーバーやブラウザのツールバーにニュースを表示するソフトなんかがそうだ。しかしここに来て、プッシュにとってのあらたなパラダイム転換が起きようとしているように見える。

 それはプッシュと検索エンジンの接近から生まれてきている。つまり検索エンジンが情報のシンディケーション(配信システム)との融合を強め、プッシュ型メディアを取り込もうと試みつつある状況が生まれているのである。それはもう少し具体的に言えば、たとえば検索エンジンとブログとの連携であり、典型的なケースとしては、検索エンジンがRSS(Rich Site Summery)を取り込んでいこうとしている動きである。

 すっかりおなじみになったRSSだが、歴史はかなり古い。もともとはNetscape社がポータルサイトでパーソナライズサービスを行うための手段として、1999年にリリースしたものである。当時はRDFベースで見出しを配信する仕組みを持っており、要するに当時流行していたプッシュ型配信システムのひとつだったのである。RSSはプッシュのDNAを持っていたのである。

 そしてご存じのようにブログの大ブームとともに、RSSはコンテンツの配信システムとして大きな注目を集めるようになった。更新情報をRSSで公開するニュースサイトやブログが増え、RSSリーダーはブログの読者たちの日用品的なツールとして愛用されるようになっていった。

 そしてこのRSSが普及していけば、インターネットにおける情報の流れは、大きく変わっていく可能性がある。これは「第三の波」とも言える大きな変動になるかもしれない。

 ・ポータルサイトからのプル型閲覧
 ・検索エンジンを使ったプル型閲覧

 というこれまでの二つの潮流に加えて、「RSSリーダーを使ったプッシュ型閲覧」というあらたな潮流が加わりつつあるのである。そしてRSSの登場によって、検索エンジンはさまざまな影響を受けつつある。検索エンジンが、みずからの存在意義(もしくは定義)をあらためて問い直さなければならなくなってきているようにも思える。単なるプル型のメディアとしての検索エンジンではなく、プッシュをも取り込んだかたちでシンディケーション(情報配信)システムの一環としての検索エンジンという考え方が浮上してきているのである。これはYahoo!が2004年12月に提唱した規格で、RSS2.0を拡張し、ファイル形式や再生時間、出演者、スタッフ、著作権情報などのコンテンツ情報を制作側が記述できるフォーマットとなっている。同社はこのMedia RSSを、自社の動画検索サービスであるビデオサーチに活用し、シンディケーションと検索エンジンの融合を図ろうとしている。

 こうした状況が進んだ先にどのような青写真が待っているのかはまだわからないが、相当にスリリングな世界が出現してくることは間違いないだろう。
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 少し時間が飛んでしまったが、松下電器産業とジャストシステムの訴訟についての話をもう少し続けたい。

 松下がジャストシステムを訴えた裁判の一審判決は今春に下され、松下の勝利に終わった。「一太郎」「花子」の両製品が松下の特許権を侵害しているとして、両製品の販売差し止めを求めていたのに対し、東京地裁は松下の請求を認める判決を2月1日に下したのである。ジャストシステムは即座に控訴し、現在は設置されたばかりの知財高裁の初の合議案件として、審理が進められている。

 ジャストシステムは私の取材に対して、2点の論点を挙げている。

(1)問題の特許は89年に出願され、あくまでワープロ専用機についての特許だったということ。その特許を、ソフトウェアに適用するのが妥当かどうか。
(2)「一太郎」のヘルプの機能は、WindowsのAPIを使って開発されたものであるということ。

 ジャストの幹部は、私の取材にこう話した。「OSネイティブな機能をアプリケーションが使用した場合、その機能の実現には当然もともとのOSの機能が必須になる。OSの機能の特許権については、OSのレベルでクリアされていると今までは考えられていたし、そんな部分に特許権抵触の可能性があることに留意してアプリケーション開発をするべきだとはだれも考えていなかったはずだ。それが世界共通の認識だったのではないか」

 たしかに、ヘルプアイコンの機能はごく一般的なユーザーインタフェイスとして、昔から存在している。たとえば1991年に発売されたMacintosh System 7。バルーンヘルプという機能が搭載されており、マウスカーソルをさまざまなアイコンにフライバイさせるだけで、マンガの吹き出しのような機能説明が表示された。そしてこの機能はその後、Windowsにも採用され、そしてWindowsネイティブな機能としてさまざまなアプリケーションにも搭載されるようになった。

 1970年代にゼロックスのパロアルト研究所で最初のグラフィカルユーザインターフェイス(GUI)を持ったマシン「Alto」が作られて以来、LisaからMacintosh、そしてWindowsへとGUIの技術とデザインは素晴らしく進化してきた。技術者たちの努力の結晶としてそうした流れを見てきたソフト業界人たちにとっては、たしかに松下電器産業のライセンス供与は受け入れがたいものだったのだろう。

 一方、松下の側は、「大きく言えば、ひとつのマーケットの基盤を作るような特許に関しては、一社だけで開発をしていくのは不可能であり、各メーカーで協調していかなければならない。しかしユーザーインタフェイスやデザインに関しては、各社が権利保持をしっかり行って、それぞれの会社らしさを守っていかなければならないと思う」(松下幹部)という。要するに基盤技術は特許プール、そしてデザインは各社の特許という二本立てで考えるべきだという論旨である。

 特許プール(Patent Pooling)というのは、特定の技術に関する複数の特許について、複数の企業がライセンスを一カ所に集中させ、広く利用できるようにするというものだ。DVD-ROMやMPEG-2、IEEE1394などコンピュータ関連の規格に関してもこの特許プール制度は数多く利用されており、成功を収めている。こうした技術を使って製品を開発する際、どのメーカーも巨額の特許使用料を支払う心配なしに、製品化や新たな技術開発に取り組んでいくことが可能だからだ。

 ジャストシステムの考え方と松下電器産業の考え方――それぞれに理はあるように思えるが、しかし決して相容れない部分も多いように見える。文化の衝突ということなのかもしれない。

 そのあたりには、ハードウェアを作ってきた電機業界と、ソフト業界という文化の違いがあるのだろう。同じプログラムといっても、組み込み系からスタートした電機業界と、ひとつのプラットフォームでさまざまなアプリケーション開発を花開かせてきたソフト業界にはかなりの考え方の違いがある。

 組み込み系は各社独自の開発から始まり、その中で徐々にソフトが汎用化されていくという流れをとった。たとえば今回のアイコン特許のきっかけとなったワープロ専用機についても、当初は各社がまちまちのプラットフォームでソフトを開発し、データフォーマットさえまったく互換性がなかったのである。1990年代までは、家電というのはあくまで閉ざされた世界だったのだ。だが2000年にさしかかるころから情報家電やネットワーク家電といった枠組みが生まれ、各電機メーカーは自社製品相互だけでなく、他社の製品とも相互に接続しなければならない状況が急速に生まれてきた。そうした状況の中で特許プールのような考え方も生まれてきた。

 それに対してソフト業界は、MS-DOSやWindows、MacOSなどの共通のプラットフォームが存在し、その同じ土俵の中で多くの技術を共有しながら育成されてきた。技術はプログラマたちの共有物であるという意識は根強く、「ソフトには特許権の考え方を当てはめるべきではない」と考える業界人も少なくないのだ。
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 カカクコム問題が、波紋を広げている。社会的責任のある東証一部企業が、果たしてあのような事後対応で許されるのかどうか。セキュリティに関して、情報を開示しないのが正しいのかどうか。

 ところで私は数日前、産経新聞の連載コラム「断」に、次のような原稿を出稿した。

 
日本の企業は、何か事故を起こしても「警察が捜査中なので」「原因が究明されるまでは何もいえない」といった理由にならない理由をつけて、とにかく情報を開示しようとしない場合が多い。たとえばJR福知山線の脱線転覆事故や、あるいは昨年春に起きた六本木ヒルズ回転ドア男児死亡事故などを見ても、それは明らかだ。

 しかし「だれに責任があり、だれが責任を負うべきなのか」という追及と、客観的かつ科学的な原因の分析については、本来はきちんと切り分けて考えるべきである。責任の所在が明らかになるまでは、原因につながる情報は公開しない方がいいという考え方は激しく間違っていると思う。

 最近も、その誤りがまたも繰り返された。「カカク(価格)コム」というインターネットのショッピングサイトが五月中旬、何者かに侵入され、結果として多数の顧客がコンピューターウイルスに感染してしまったという事件である。同社はたしかに被害者で、不正侵入した犯罪者は別にいる。本当に悪いのはそうした犯罪者なのだが、しかしそれにしても同社のひどい対応はいかがなものか。

 まず侵入の具体的な手口について「捜査に支障がある」「模倣犯を招く」といった理由で情報開示を拒否し続けている。このためネット業界各社は同じ手口による侵入を警戒しつつも、対策が取れずに困惑しきっている。

 おまけに社長が記者会見で「最高レベルのセキュリティだったのに侵入された」と言い放ち、「本当に最高レベルだったのか」「何の根拠が?」と業界からは疑問の声が多数上がった。会社の経営者ともあろうものが、根拠を提示できないような軽はずみな発言をするべきではない。


 結論から言えば、この原稿は没になった。

 産経新聞の担当編集者から、次のような趣旨のファクスが突然送られてきたからである。

うちの新聞にカカクコムのインタビュー記事が掲載されています。反省の弁もあり、一般読者にはこれで充分かと感じました。佐々木さんの指摘はもっともなのですが、加害者の立場で情報を開示しない企業に対して批判の刃を向けた方が得策なのではないかと思います。今回の原稿掲載は見送らせてください。


 言及は避けるが、「セキュリティ」というものに対する無理解は相変わらずひどいとしか言いようがない――そんな感想を抱いた。

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