佐々木俊尚の「ITジャーナル」

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ニッポン放送買収問題が露わにしたもの

2005-02-20 | Weblog
 ニッポン放送買収問題がますますホットになり、マスコミ報道も過熱しつつある。私のところにも、いくつかの雑誌編集部や新聞社から連絡があった。

 昨夜、ある新聞社の記者と電話で話した。彼は言った。

 「財界やマスコミ、政治家の中にはライブドア、とりわけ堀江貴文社長に対する恐ろしいほどの拒否反応があるようです。でもその反発は、一般の人たちの感じる堀江社長への気持ちとはどうも乖離しているようにも見える」

 その記者氏は一昨日、都心の街頭で通行人にインタビューを試みたのだという。

 「聞いたのはわずか数十人だったんですけどね、見事に感想が二分されたので驚きました」

 立派なスーツに身を包んだ中年ビジネスマンたちの多くは、「ああいうルール違反なやり方で株を買うのはけしからんね」「ああいう無責任な男にマスコミを任せて、本当に大丈夫なの?」という回答だった。

 ところが、インタビューに応じてくれた若者のほぼ全員は「もっとホリエモンには頑張ってほしい」「変な圧力には負けないでほしい」という回答だったという。

 中にただひとりだけ、堀江社長に対して批判的な意見を述べた若者がいたという。記者氏は、「あなたの職業を教えてもらえますか?」と試みに聞いてみた。

 すると若者は「いまは大学生ですが、もうすぐ就職です」と答え、某超優良大手企業の名前を挙げた。

 一方で中年男性の中にも、数は少ないが「ホリエモンがんばれ」と答える人たちもいた。全員ではないが、そうした人たちに職業を聞いてみると、「リストラされて無職で求職中」「子会社に転籍されて苦労してる」なんて返事を返す人が多かった。

 インタビューは決して無作為抽出だったわけではないし、客観性が担保されているわけではない。だが記者氏が行った取材結果を聞くと、そこにはなにがしかのデバイドも生じてきているように思える。

 ライブドアがニッポン放送株取得を明らかにした際、フジテレビの日枝久会長は報道陣に聞かれて「(堀江社長は)会ったこともない。いきなり株主になられても……」と答えた。

 また、十九日の日経新聞朝刊コラム。こう書いてあった。「(ライブドアには)メディア支配への野心を懸念する声もある。冒険に危うさはつきものだが、ゲーム感覚の経営で社会の共感は維持できるのか」

 株主になるのに、事前に「会わなければならない」と考えるフジテレビ会長。いまだに「ゲーム感覚」などという言葉を使い、ライブドアの手法を揶揄している気になっている日経新聞。こうした古臭い感覚と、ネット業界の間に横たわっている深い溝が埋まるとは私にはとうてい思えない。