テレビ朝日開局50周年記念のドラマスペシャルで、昭和の鬼刑事『平塚八兵衛』を主人公とするドラマが、6月20日・21日二夜連続で放映される予定です。
『吉展ちゃん事件』『帝銀事件』など、昭和に生きた人たちにとって、忘れ難い事件の解決に心血を注いだ、知る人ぞ知る昭和の名刑事『平塚八兵衛』の話です。
この原作は、サンケイ新聞に連載されたものが、昭和50年に単行本として刊行され、その30年後の平成16年に新潮社から新潮文庫としてリバイバルされ、再び日の目を浴びた著書名『刑事一代』です。
この本の著者である佐々木嘉信さんとは、実はだいぶ以前からの知り合いで、産経新聞の現職およびO.Bを中心とする「山酒会」でも、以前はご一緒して山に登りました。
かなり前のこととなりますが、鳳凰三山を縦走することとなり、山酒会のメンバーと出かけ、大混雑の鳳凰小屋で宿泊しました。
無論、山酒会ですから、山の後は酒・酒・酒…。
その夜は、すし詰め状態の山小屋で、しこたま酒を飲んだ隣の佐々木さんの酒臭い吐息とイビキを耳に受けながら、時折夜中に起こされたことを想い出します。
サイン入りの進呈本
新潮文庫に収められている『刑事一代』・平塚八兵衛の昭和事件史は、定価700円で書店に並んでいますので、興味ある方はぜひお読みになってください。
この時代を共有した人の、だれもが記憶している、昭和史に残る事件を、一般の方が知り得ない捜査現場の視点から、興味深く書かれた書籍です。
また、犯罪を犯した者と、そしてその真実を追究する名刑事との人間模様。
職人芸とも言われる職業意識、一途な男の生き方、そして生臭い功名心。
『ただきれい事では済まされない、そうしたデカ人生の果てに、彼自身はこの世をどの様に捉えたのか。』
この書籍の中で、戦後最大の誘拐事件と言われる吉展ちゃん事件…私も小学生でしたのでの良く記憶しています…その犯人小原保の郷里を、平塚刑事が訪ねるくだりがあります。
(以下、一部ポイントになる部分だけ抜粋。)
人間には根っからの悪党はいねえよ。なんかのきっかけで、根性がひん曲がっちまうのさ。
小原だってそうだ。…
それにしても一族から、あんなホシを出すと、苦労ってものはなみたいていじゃねえ。事件が解決してから、ヤツの兄弟がオレの家へ来てな。「これからどうしたらいいか」って、相談なんだよ。…
…兄嫁さんの話にも泣かされたよ。『世間さまに恩返ししなけりゃ、いけねえ。ちっとでも、なんかのたしにすんべかと思って、ひまなときは、針仕事やってんだ」ってな。夏の間、着られなくなった洋服やらを洗っといてな、冬の農閑期に娘さんと一緒にバラして、雑巾づくりをするのだとよ。
…村の年寄りにゃ、ただで縫い物をしたり、たいへんな気のつかいようだ。…
小原はたしか四十六年の十二月二十三日に処刑されたんだ。……処刑の日、宮城刑務所から電話があってな、看守から、「真人間になったから平塚さんによろしく」って伝言だった。…
ヤツの墓は実家から、七、八百メートルの小高い丘の上にあるんだ。…「小原家之墓」って立派な墓碑があるんだが、そこには埋葬されねえで、すぐわきに土盛りをしただけだ。…土盛りの墓に花と線香をあげたんだが、手を合わせるのも忘れちまったよ。胸をグッと突かれたようでな。オレが落とさなかったら、こんなことにゃ、ならなかったかもしんねえ…。…いろんな気持ちがまじってな。わかんめえよ。あんたらには、この気持ち。
雨上がりに咲く最後のツツジ
平塚八兵衛が警察官になった動機というのが、また面白いと思います。
旧制中学を終えてぶらぶらしていたときに、不良仲間とけんかして、相手を袋だたきにしてしまい、戦前の「オイコラ警官」にこっぴどくやられてしまう。
彼は、その奴らを見返すために「日本一の警官」になることを決意したのでした。
彼は、退職するまで「花の捜査一課」の刑事として、無試験で警視まで上り詰め、吉展ちゃん事件解決で警察功績章・帝銀事件で警察功労章を受章しますが、在職中に両章を受けたのは、警察史上平塚八兵衛だけだという。
河川敷で高齢者が育てている花
平塚八兵衛は、功なり名を遂げた人生でもあったけれども、人間の醜さや狡猾さを見続けた人生だったとも言えます。
凶悪事件をおこした、生身の犯罪者と接しても、「人間には根っからの悪党はいねえよ」という述懐が救われる思いです。
凶悪事件は、それが解決しようとも、東野 圭吾「手紙」のように、多くの人のその後の人生に、多大な影響を与え続けるものであることも、よく分かります。
またこの書籍と関連して、最近の出来事で、私が関心を寄せたことは、栃木県足利市で1990年に女児が殺害された「足利事件」のことです。
DNA鑑定の新事実により、無実であることが確実になった、受刑者・菅家利和さんは、無期懲役の刑執行が停止され6月4日釈放されました。
「刑務所に入っていると気持ちがどんよりしていたが、けさは気持ちがすごく明るいです。空も全然違います」と笑顔で語ったそうです。
こんな誤認捜査は絶対あってはならないことですが、世の中の一面を思い知らされる出来事として、考えさせられました。
河川敷の花壇の花
今回のドラマでは、主人公平塚八兵衛を演じるのは、俳優・渡辺謙。
また、原作者佐々木嘉信さんも、原作者の権利として、ちょい役で一瞬画面に出るそうです。
私も、楽しみに拝見しようと思います。(土曜日は、授業なんだけれど!)
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『吉展ちゃん事件』『帝銀事件』など、昭和に生きた人たちにとって、忘れ難い事件の解決に心血を注いだ、知る人ぞ知る昭和の名刑事『平塚八兵衛』の話です。
この原作は、サンケイ新聞に連載されたものが、昭和50年に単行本として刊行され、その30年後の平成16年に新潮社から新潮文庫としてリバイバルされ、再び日の目を浴びた著書名『刑事一代』です。
この本の著者である佐々木嘉信さんとは、実はだいぶ以前からの知り合いで、産経新聞の現職およびO.Bを中心とする「山酒会」でも、以前はご一緒して山に登りました。
かなり前のこととなりますが、鳳凰三山を縦走することとなり、山酒会のメンバーと出かけ、大混雑の鳳凰小屋で宿泊しました。
無論、山酒会ですから、山の後は酒・酒・酒…。
その夜は、すし詰め状態の山小屋で、しこたま酒を飲んだ隣の佐々木さんの酒臭い吐息とイビキを耳に受けながら、時折夜中に起こされたことを想い出します。
サイン入りの進呈本
新潮文庫に収められている『刑事一代』・平塚八兵衛の昭和事件史は、定価700円で書店に並んでいますので、興味ある方はぜひお読みになってください。
この時代を共有した人の、だれもが記憶している、昭和史に残る事件を、一般の方が知り得ない捜査現場の視点から、興味深く書かれた書籍です。
また、犯罪を犯した者と、そしてその真実を追究する名刑事との人間模様。
職人芸とも言われる職業意識、一途な男の生き方、そして生臭い功名心。
『ただきれい事では済まされない、そうしたデカ人生の果てに、彼自身はこの世をどの様に捉えたのか。』
この書籍の中で、戦後最大の誘拐事件と言われる吉展ちゃん事件…私も小学生でしたのでの良く記憶しています…その犯人小原保の郷里を、平塚刑事が訪ねるくだりがあります。
(以下、一部ポイントになる部分だけ抜粋。)
人間には根っからの悪党はいねえよ。なんかのきっかけで、根性がひん曲がっちまうのさ。
小原だってそうだ。…
それにしても一族から、あんなホシを出すと、苦労ってものはなみたいていじゃねえ。事件が解決してから、ヤツの兄弟がオレの家へ来てな。「これからどうしたらいいか」って、相談なんだよ。…
…兄嫁さんの話にも泣かされたよ。『世間さまに恩返ししなけりゃ、いけねえ。ちっとでも、なんかのたしにすんべかと思って、ひまなときは、針仕事やってんだ」ってな。夏の間、着られなくなった洋服やらを洗っといてな、冬の農閑期に娘さんと一緒にバラして、雑巾づくりをするのだとよ。
…村の年寄りにゃ、ただで縫い物をしたり、たいへんな気のつかいようだ。…
小原はたしか四十六年の十二月二十三日に処刑されたんだ。……処刑の日、宮城刑務所から電話があってな、看守から、「真人間になったから平塚さんによろしく」って伝言だった。…
ヤツの墓は実家から、七、八百メートルの小高い丘の上にあるんだ。…「小原家之墓」って立派な墓碑があるんだが、そこには埋葬されねえで、すぐわきに土盛りをしただけだ。…土盛りの墓に花と線香をあげたんだが、手を合わせるのも忘れちまったよ。胸をグッと突かれたようでな。オレが落とさなかったら、こんなことにゃ、ならなかったかもしんねえ…。…いろんな気持ちがまじってな。わかんめえよ。あんたらには、この気持ち。
雨上がりに咲く最後のツツジ
平塚八兵衛が警察官になった動機というのが、また面白いと思います。
旧制中学を終えてぶらぶらしていたときに、不良仲間とけんかして、相手を袋だたきにしてしまい、戦前の「オイコラ警官」にこっぴどくやられてしまう。
彼は、その奴らを見返すために「日本一の警官」になることを決意したのでした。
彼は、退職するまで「花の捜査一課」の刑事として、無試験で警視まで上り詰め、吉展ちゃん事件解決で警察功績章・帝銀事件で警察功労章を受章しますが、在職中に両章を受けたのは、警察史上平塚八兵衛だけだという。
河川敷で高齢者が育てている花
平塚八兵衛は、功なり名を遂げた人生でもあったけれども、人間の醜さや狡猾さを見続けた人生だったとも言えます。
凶悪事件をおこした、生身の犯罪者と接しても、「人間には根っからの悪党はいねえよ」という述懐が救われる思いです。
凶悪事件は、それが解決しようとも、東野 圭吾「手紙」のように、多くの人のその後の人生に、多大な影響を与え続けるものであることも、よく分かります。
またこの書籍と関連して、最近の出来事で、私が関心を寄せたことは、栃木県足利市で1990年に女児が殺害された「足利事件」のことです。
DNA鑑定の新事実により、無実であることが確実になった、受刑者・菅家利和さんは、無期懲役の刑執行が停止され6月4日釈放されました。
「刑務所に入っていると気持ちがどんよりしていたが、けさは気持ちがすごく明るいです。空も全然違います」と笑顔で語ったそうです。
こんな誤認捜査は絶対あってはならないことですが、世の中の一面を思い知らされる出来事として、考えさせられました。
河川敷の花壇の花
今回のドラマでは、主人公平塚八兵衛を演じるのは、俳優・渡辺謙。
また、原作者佐々木嘉信さんも、原作者の権利として、ちょい役で一瞬画面に出るそうです。
私も、楽しみに拝見しようと思います。(土曜日は、授業なんだけれど!)
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昭和の犯罪史に残る事件の現場を歩んだ刑事と、犯罪を犯した者の緊張ある関係を、私はじっくりと見たいと思います。
そして、同じ人間が、裁かれる者と裁く者にどうして別れてしまうのか、そこの所も考えてみたいと思います。
でも、土曜は授業ですので、1回目は録画で!