日本の新たな主力ロケット「H3」1号機が7日午前10時37分頃、鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げられました。しかし、第2段エンジンの着火が確認されず、宇宙航空研究開発機構(JAXA)は約15分後、地上から指令破壊の信号を機体に送り打ち上げは失敗となりました。前回の打ち上げ中止から、僅かな期間で再度挑戦しましたが、年度内に打ち上げを成功させようとする意図は明らかでした。私は、短期間の再度打ち上げに不安要素がかなりあると思っていました。
これで、日本の宇宙技術の信頼性に疑問符が付き、搭載した地球観測用の先進光学衛星「だいち3号」は失われました。1、2号機は試験機としてJAXAが打ち上げ、早ければ3号機から三菱重工業に移管し、商業打ち上げ市場に参入する計画でした。科学目的の探査機、国際宇宙ステーション(ISS)や建設予定の月周回基地へ向かう物資補給機も搭載するべく開発してきました。日本の宇宙開発利用に深刻な打撃となった失敗でした。
今回の打ち上げ失敗の直接・間接の原因だけではなく、構造的な枠組みで議論すべきです。国の科学技術関連の軽度の投資、 研究者・技術者を志望する学生に対する弱い支援、 企業はコストカットの名目で研究費用や人材育成費用を削減、 数え上げればキリがないほど取り巻く環境に問題がありそうです。「ロケット打ち上げ失敗は、例の記者の呪いですか?」などと、問題把握に障害となるような低俗な感想もあるようです。
最近、下劣なユーチューバーなどの意見がもてはやされる風潮があります。本質的な議論からずれて、極めて個人的な意見が大手を振る現状は、今回のロケット打ち上げ失敗に対する社会全体の総意を変容させる可能性もあります。品位と教養に基づいた幅広い議論の結果として、科学立国日本の底力を高めてほしいと思います。