「マッキーのつれづれ日記」

進学教室の主宰が、豊富な経験を基に、教育や受験必勝法を伝授。また、時事問題・趣味の山登り・美術鑑賞などについて綴る。

マッキーの現代陶芸入門講座(6)…加守田章二の湯飲みと茶碗

2008年03月14日 | 陶芸

昨日は、春の陽気でした。今日は、春雨に煙っている東京です。


街路樹のコブシの花。(3/13)


以前のブログではつぼみだった、ジンチョウゲの花。(3/13)


まず、この湯飲みをよくご覧下さい。




しばらく、わたしの拙文を読んで頂く前に、この作品を見つめてください。

本当は、この湯飲みにお茶を入れて、この作品とともに味わって頂けないのが残念です。

全体に荒削りに作られた湯飲みです。この作品の良さが分かるでしょうか。

磁器物の器と異なり、ざらざらした触感と、荒い土の粒子の上に施された彩陶や象眼は、とても土着的な印象を受けます。

土物を強調した荒々しい高台と、湯飲みの表面の幾何学的に彩色された文様とが織りなすハーモニーは、絶妙としか言いようがありません。

とても愛着の湧く、素晴らしい作品です。



(湯飲みの高台と、箱書き  1988年 銀座黒田陶苑にて購入)


この作品の作家名は、加守田章二です。陶芸に興味のある方には、大変知られている作家です。

この天才的な腕の持ち主が、手捻りで形成したこの湯飲みは、幾何学紋様であるにも関わらず、土の中から忽然と現れたような印象があります。


板谷波山の葆光彩磁において、いわば陶芸家が制作した、近代陶芸の磁器物の技術的頂点を見ることができます。

また、伝統的な伊万里、鍋島、九谷の磁器物についても、伝統の上に新しい技法を駆使したその地場の代表的作家の作品にも、高度な技術力を感じます。


しかし、日本独特の土物の陶器は、作り手の技術だけではなく、その人の精神性や焼成段階の偶然性が累乗され、より複雑な焼き物となっているように思います。

土物の焼き物は、技術を越えたなにか…作家の独創性や偶然性や他への依存性などが、むしろ現代美術に一脈通ずる側面を持っているようにも考えられます。

こうした土物の焼き物に、象眼し彩色するこの作家は、日本の伝統的な陶芸から一つ飛躍し、現代陶芸に大きなインパクトを与えました。

加守田章二によって、日本の現代陶芸、すなわち世界の現代陶芸が、より大きな広がりを獲得したと言っても、過言ではないと思います。

以前、加守田章二の花器等もコレクションしましたが、価格も高いのですが偽造も多いので、しっかりとした販売店で購入することをお薦めします。



(1989年・京王百貨店 遠野で制作された作品)








陶器の「用の美」を越えて、次々と新しい展開を見せたこの作家の作品は、曲線刻文や彩陶や象眼に見られる技法に目が奪われがちです。

しかし、私は、加守田を技法の作家と言うよりは、土の可能性を広げた芸術家、もしくは土の持つ生命力を引き出した陶芸家として、記憶にとどめたいと思います。

遠野で、土に向けたこの作家の情熱が、その作品から、オーラのように沸き立ってくるように、私には感じられるからです。

加守田は、遠野において修行僧のような作陶を続けましたが、49才の若さで1983年に亡くなりました。

常に鬼才加守田は、独創的な作陶の新展開を、多くの熱狂的な陶芸ファンに期待されました。

そのことも、彼の命を短くした要因ではないかと、私は感じています。



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