白磁に染付の技法を使い、花器・酒器・食器などを制作して、陶芸ファンにも人気のある伊志良光(いしら あきら)さんを、今日は取り上げます。
私自身、伊志良光さんの作品は、以下のようにかなりの数を所有しています。
食器は焼き物では雑器に分類されますが、日常の生活の中で良い焼き物を使うことは、日常生活を豊かにする一つの方法です。
釉裏紅徳利2個 1986
釉裏紅酒盃6個 1986
湯呑3個 1990
湯呑4個 1992
染付葡萄文組皿 食器 1986
染付山水文組皿 食器 1986
染付葡萄四十雀文皿 皿 1986
染付葡萄四十雀文花瓶 花器 1986
釉裏紅葡萄四十雀文花瓶 花器 1986
釉裏紅染付小楢四十雀文花瓶 花器 1986
染付葡萄四十雀文角瓶 花器 1986
筆立て 文具 1989
陶板 飾り皿1992
(釉裏紅の酒盃・・・この形を馬上盃と呼びます)
湯呑みや酒器などは、最も手ごろに焼き物を楽しむことができるので、自分のお気に入りの作家を見つけて、その作家の作品を実際に使ってみることをお薦めします。
白磁に染付を施した磁器の他に、釉裏紅の絵付もこの作家の魅力の一つです。
家にも、染付の食器があるよ、とうい方も多いと思いますが、多くは印判と言って、職人による手書きでない場合が多いと思います。
しかし、年代物の印判による染付になると、絵柄により人気が有るのですが、職人による筆遣いが白磁の器に微妙な変化を作る手書きの染付にはかなわないと思います。
【釉裏紅】
ゆうりこうと読みますが、この漢字の通り釉薬の下に紅色に発色した文様が描かれている技法です。
かつて楠部弥一の回顧展で、彼の釉裏紅の作品を見たことがありましたが、とても綺麗に発色していて、魅了させられたことを覚えています。
細かく言うと釉裏紅とは、釉下に銅化合物の顔料を使って還元炎焼成すると、赤く発色する銅の性質によって、透明釉の下に紅色の文様を浮かび上がらせる技法です。
【染付】
白色の素地に呉須やコバルト顔料で下絵付をして、その上に釉薬を掛けて焼成したものを染付といいます。
呉須が還元焼成で青色を呈し、白地に青色の文様となります。
中国では青花・釉裏青とも言われている焼き物です。
呉須とは、酸化コバルトを主成分とし鉄・マンガン・ニッケルなどを含み、還元炎により藍青色ないし紫青色に発色する鉱物質の顔料のことです。
一般的に染付は、白磁の上に描かれますが、陶器の上に描く染付をご存知でしょうか。
陶器の上に白土を塗り、その白い素地の上に絵付けをした染付があります。
陶胎染付(とうたいそめつけ)と言い、日本においても18世紀前半、波佐見町百貫窯をはじめ広く陶胎染付の日常食器碗が作られたと言われています。
胎土と釉薬の収縮率の差が大きいのか、釉に貫入が入り、独特の風合いを見せます。
話は少し変わりますが、青磁の焼き物にも、磁器ではなく陶器の青磁があります。
伊志良光の食器は、実際に使っていますが、下の大きな染付の大皿にオードブルなどを盛り付け食卓に出すと、とても華やいで見えます。
本来、陶磁器は、飾り棚などに陳列しておくだけではなく、実際に使って楽しむことにより、本当の作品の味わいや鑑賞ができるのです。
しかし、破損の危険性は常に伴いますが。
だいぶ以前になりますが、伊志良さんの窯場を、代表をしていた美学社(現美楽舎)の仲間と訪問し、お話しを伺ったことがありました。
大変な人気作家であり東京芸大の学長も務め人間国宝でもあった故藤本能道の、釉描加彩による色絵磁器の魅力とは異なる、弟子の伊志良さんの作品に、私はその後の可能性に期待を寄せていました。
奥の深い染付・釉裏紅の技法を進化させ、後世に残る伊志良作品を生み出していくことを、今後も期待したいと思います。
伊志良 光 (いしら あきら)略歴
南足柄市在住。
昭和16年(1941)、神奈川県鎌倉に生まれる。
昭和40年(1965)、東京芸術大学工芸科陶芸講座卒。
師事:藤本能道、浅野陽、田村耕一
愛媛県砥部町梅野精陶所入社。
昭和45年(1970)、東京芸術大学陶芸講座副手
伝統工芸展入選。
昭和47年(1972)、東京芸術大学陶芸講座退職
昭和49年(1974)、日本工芸会正会員。