「マッキーのつれづれ日記」

進学教室の主宰が、豊富な経験を基に、教育や受験必勝法を伝授。また、時事問題・趣味の山登り・美術鑑賞などについて綴る。

マッキーの時事問題:最新版「レッドリスト」で2万900種が絶滅の危険

2013年07月06日 | 時事随想



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 最新の絶滅危惧種について、以下のような内容が、最近テレビや新聞で報道されました。


『国際自然保護連合(IUCN)は2日、世界の絶滅危惧種は2万934種に上るとした最新版の「レッドリスト」を発表した。生息状況を評価した計7万294種の約30%に当たるという。

 IUCNはニホンウナギを絶滅危惧種に指定するかどうかの検討を始めており、5日まで英国で開かれる専門家を集めた会合で議論する。同会合で指定が決まり、さらに上部機関での検討を経て正式に決定すれば、次回以降のレッドリストに絶滅危惧種として掲載されることになる。

 ニホンウナギを巡っては、2月に日本の環境省のレッドリストで絶滅危惧種に指定された。IUCNが指定しても法的拘束力はないが、漁獲や国際取引の規制を求める声が高まるとみられる。〔共同・一部抜粋して掲載〕』



 「近い将来、ウナギが食べられなくなりそうだね。」・・・このニュースから、これだけの話題しか出てこなかったなら、このニュースの本質を知ることもできないし、考えるチャンスも失ってしまいます。確かに、私たちの食文化に、「ウナギ」は重要な地位を占めていますし、「ウナギ」を食材にそれを生業(なりわい)にしている人たちも多くいます。それでも、ちょっとこの問題は置いておいて、このニュースの本質に今日は迫ってみたいと思います。

 まずこの報道を知って、子どもたちにこの話題を考えてもらうことを前提にして、私たちが認識し考えなければならないポイントを、以下の4点に整理し取り上げます。

1.発表されたデータから読み取れること、すなわち地球上に生息する野生生物の置かれている状況について、しっかりとした認識を持つ。

 昨年、英王立植物園が行った調査で、世界の植物の5分の1が絶滅の危機にあるという報道を読んで、その割合の多さに驚かされたことを、私はすぐに思い出しました。太古の昔から、長い生命の歴史の中で、多くの種が滅び、また生まれて来ました。ですから、人間の影響を受けずとも、生命の進化や変化する環境に適合できなくなった種は、滅んできたのです。

 けれども、私たちの想像を遥かに超えたスピードで、かなり広範囲にかつ多量に生物の種が存続の危機にある現実は、こうしたデータを参考に、しっかりと認識する必要があります。地球上で、過去に種が大量絶滅したことが5度ありました。直近では、6500万年前、恐竜を含むすべての種の4分の3が、地球への隕石の衝突により絶滅しました。

 こうした過去5度の大量絶滅に匹敵するほどの規模で、6度目の種の大量絶滅が現在進行しつつあると言われています。そうした兆候は、つい最近まで身近にいた生き物が、レッドリストに載って驚かされるといったことからも明らかです。例えば、ゲンゴロウ ・ハマグリ・ニホンメダカなども絶滅危惧種にリストアップされています。人間の活動により、隕石衝突と同等な破壊力で、このように多くの種が危機的状況に置かれていることを、まず私たちは自覚する必要があります。



2.絶滅危惧種と呼ばれる生物が、どういった理由により、そうした状況に追い込まれたのかを知る。

 さまざまな原因が挙げられていますが、私は以下の4点に要約して考えます。

1)角・毛皮・食用などを目的とした過度の乱獲
 象牙をとるためにゾウの頭数が減少し、美しい羽や食用のために日本のトキは絶滅しました。クジラの商業捕鯨が話題に上っていますが、食用や油をとるために捕獲されシロナガスクジラの頭数が減ったこと、また今回指摘されているニホンウナギの激減などが、この原因の例として挙げられます。

(2)森林・河川の開発・破壊による生息地の減少
 森林伐採などにより、ゴリラ・チンパンジー・オランウータン・レッサーパンダなどが減少しました。また開発による産卵地の破壊により、アオウミガメの頭数が減りました。特に、伐採・過度の焼き畑・放牧などにより、熱帯林の減少は著しく、また、再生能力以上の伐採により、広範囲に砂漠化が進行しています。そうした場所では、今まであったような生態系が失われ、そこに生息する動植物の生存が危ぶまれる状態になります。

(3)気候変動などによる生息地の環境変化
 地球温暖化による氷床の融解でホッキョクグマが減っています。また海水温度の上昇で、サンゴの白化を加速していることなどは、テレビなどの報道で知っている方は多いと思います。また、気候に絡む環境の変化として、酸性雨により湖沼のphが低下し、魚類などが生息できなくなるといったことも、この範疇に入れることができるでしょう。

(4)外来種の侵入による生息・生育環境の変化
 小笠原で、人為的に持ち込まれたグリーンアノールという小型のトカゲが、貴重な小笠原固有の昆虫の多くを食べて、絶滅の危機にあることを、最近のテレビ特番で取り上げていました。また、ハブ退治に導入されたマングースが繁殖して、有名なヤンバルクイナ・アマミノクロウサギなど、貴重な天然記念物を減少させる原因ともなりました。
 また、ブラックバスやブルーギルなど、繁殖力の強い外来種を安易に放流したために、魚や昆虫などの日本の在来種が、危機的な状況に追いやられています。娯楽目的ために放たれたこうした外来種は、全国各地に瞬く間に繁殖し、琵琶湖など各地で、無視できない問題を起こしています。密放流により、皇居のお濠に住む貴重な生き物を激減させたことも、話題にのぼりました。



3.そうした野生生物を取り巻く環境に対して、私たち人類はどのように考え、そしてどのように対処してきたのか、歴史的な視点で捉える。

 上で整理した絶滅危惧種が発生する原因の多くは、かつての隕石衝突や火山活動、そして気候変動などによって引き起こされたのではなく、地球上の単一種である人類の活動によるものです。そこで
まず、塾では小6で学習する内容である、「地球環境問題の解決にむけた取り組み」について、知っておくべきことを整理しておきたいと思います。

(1)1972年、スウェーデンのストックホルムで「かけがえのない地球」という考えをもとに、国連人間環境会議が開かれ、「人間環境宣言」が採択されました。

(2)1992年、ブラジルのリオデジャネイロで、「持続可能な開発」という考えをもとに、国連環境開発会議(地球サミット)が開かれました。

(3)1997年、地球温暖化防止京都会議が開かれ、温室効果ガスの削減目標を定めた、京都議定書を採択しました。

(4)2002年、地球サミットから10年後に南アフリカ共和国のヨハネスバーグで、環境開発サミットが開かれました。この会議では、発展途上国と先進国の意見が対立したために、期待された成果が得られず、南北問題に絡んだ問題点がクローズアップされました。



(5)住民などが、土地などを買い取り、美しい自然や歴史的建造物を守ろうとする「ナショナル・トラスト」という動きがあります。「トトロの森」を守る運動などが、その例として有名です。

(6)1997年に、環境アセスメント法が制定され、道路やダムの建設、また埋め立てや干拓などを行う場合、それが環境に与える影響を事前に調査し、その結果を公表することにより、悪影響を防いだり、代案を作ったりすることに役立てています。

(7)1971年、イランのラムサールで、水鳥の生息地として重要な湿地と、そこに生息する野生動物を保護するための「ラムサール条約」が採択されました。日本では釧路湿原・藤前干潟・谷津干潟などが有名です。

(8)1973年、ワシントン会議で条約が採択されたことで、「ワシントン条約」と一般的に呼ばれているこの条約の正式名称は、「絶滅のおそれのある野生動植物の種の国際取引に関する条約」です。国際取引を規制することで、野生生物の保護をめざすもので、対象には生物のほか、剥製、加工品、毛皮、牙なども含まれます。

 以上のように、国際的にも、国内的にも、また草の根的な市民レベルの動きも、互いに連動しながら、環境問題解決に取り組んでいるように見えます。しかし一方で、南北問題やさまざまな利害関係、そしてその結果による対策の遅れなど、指摘される問題も山積しています。そうした厳しい状況を踏まえつつ、私たちは環境問題において、遅延が許されぬ待った無しの現状を直視し、たゆまぬ努力が求められます。



4.最後に、こうした動植物に対して、私たちがこれから取り組むべき方向性と実際の行動について考える。

 まず考えるべきは、絶滅に瀕している動植物を、「費用と手間をかけてなぜ守らなければならないのか」ということです。そして、そのことが大筋合意されたらなら、国際的・国家レベルでの取り組みは、今回は脇に置いておいて、「私たち市民レベルで、何ができるのか、何をやらなければならないのか」を取り上げ、考えてみたいと思います。

(1)なぜ、絶滅危惧種を守らなければならないのか。
 この地球上から、一つの種が消滅するということは、かわいそうだといった感情的な感想も重要なことですが、もっと掘り下げて、考察する必要があります。上記したように、絶滅に瀕している動植物の多くは、人間の活動を原因としますが、そうしたことが「倫理的に許されるのか」ということが重要だと私は考えます。進化の過程を考えれば、地球上に生存するすべての生物は、人類と血を分けた仲間であり、そうした仲間を絶滅させる権利など、人間にはありません。

 自然の豊かさ、そしてそこに息づく生物の多様性を保全することは、世界遺産の如く、次の世代に引き継いでいく使命が私たちにあるといったことも、人間を中心にした目線で言えば、当然なことと言えます。夕闇にホタルが舞い、小川にメダカが遊ぶ、そんな自然を継承していく使命があることは、多くの賛同を得られるでしょう。

 また、環境が破壊されて行く過程で、まずは最も弱い適応能力のない動植物に悪い影響を与えます。そうした状況を知ることにより、私たち人類についてもいずれ悪影響を及ぼす可能性に対し、そのセンサー役として絶滅危惧種を捉えるといった、やはり人間目線の考察も可能です。動植物が健全に生育できない環境では、人類も健康に過ごすことはできない。だから、絶滅危惧種の環境を改善して行くことが重要なのだということも確かです。

 しかし、以上の人間目線で考える「絶滅危惧種を守る理由付け」より、私は地球上に生息する生き物の生殺与奪の権利など人類にはないという、極めて倫理的な判断で十分だと考えています。人類の活動に起因する多くの動植物の死滅の危機を回避するために、努力を惜しまぬ責務が私達にはあるはずです。


 私たちは、いつから、命あるものの生殺与奪の大権を持つ、神となったのか?



(2)私たちに何かできるのか。
 キーワードは、循環型社会を目指すことだと思います。ゴミを減らし、「もったいない」という言葉が表す生活態度により、無駄を無くすことが重要です。循環型社会形成推進基本法では、リデュース(減らす)・リユース(再使用)・リサイクル(再利用)の3Rの生活スタイルを提唱しています。資源やエネルギーを湯水の如く使ってきた今までの生活態度を、見直す必要があります。多少不便であっても、生活の在り方を変えていく地道な取り組みの上に、地球に優しい人類の活動の在り方が提示されるはずです。

 省エネに心がけ、日頃の空調機器の設定や照明設備のこまめなスイッチ操作も必要ですし、ゴミの分別などに、個人も社会全体も心掛ける必要があります。また、車社会を見直して、公共交通機関を再評価してみるといった、社会のあり方も再考する必要があるでしょう。(この点に関して、再び取り上げて、私の考えを論じてみたい。)劇的な処方箋が提示されるという夢想を抱くこと無く、上からのお仕着せではなく、一人ひとりが循環型社会を目指して、一歩一歩前進する必要があります。

 宇宙へ飛び出した人類は、漆黒の宇宙に浮かぶ、小さくて青い水の惑星・地球全体を俯瞰した時から、何を学んできたでしょうか。人類で初めて宇宙に飛び出したガガーリンは「地球は青かった」と叫び、人類初の女性宇宙飛行士のテレシコワさんは「私はカモメ」と、感嘆の声を上げました。それは、幼かった私も覚えているほど、印象的な出来事でした。その時から、私たちは有限で愛おしい地球号の一員であることを自覚し始めたと思います。

 今や人類の生産活動が、地球の許容量を越えてしまっているという現実を、私たちは直視する必要があります。ガガーリンが宇宙へ飛び出した時、実は人類が地球の引力、言い換えれば母なる地球の手を振り切った時だったとも言えるでしょう。母なる地球をも震撼させる存在に成長した人類、そのことをもっと自覚すべきでした。

 快楽と利便性を追求してきた生き方から、広い視野に立脚した叡智を持って、無駄だと思われる欲を抑える生き方、すなわち少なからず私達にみを伴う生き方の改革が、現在求められています。

 人類に留まらずに、共に生きる地球上の動植物に対して、その存続に配慮し、優しい気持ちで接する義務が、私たち人類にはあるのです。


4歳児(現5歳児)に買い与えた、「ぜつめつどうぶつ探検隊」(5部作)・・・思いやりや、やさしさという、「人間の気持ちのお稽古」というコンセプトで綴られている。


ひらがなで綴られ、絵本風にまとめられた絶滅動物の本だが、そうした動物たちの置かれている状況に、4歳児は関心を持って読んでいた。



 上のバラの画像はすべて、新宿御苑のばら園の花々です。花の色や形、そして立ち姿など、とても綺麗でした。驚くほどさまざまな園芸品種があり、人の持つ飽くなき探究心も知ることができます。

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2 コメント

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読み、聴かすべき情報 (tsuguo-kodera)
2013-07-06 07:35:07
 インターネットは便所の落書きと言った人がいたように、確かに、確率的に無駄な情報に溢れているのでは。それは真の情報を隠す結果だけでなく、誰かに隠す目的があるのかも。
 ゴミ情報に負けない方法も、成りすましに負けない方法はただひとつかも。取締りではなく、正しい情報を発信しまくることだと私は信じています。たくさんの人が心がけて欲しいと歳よりは願っています。
 ですから、このサイトの記事をみた先生方の多くが若者や子供に聴かせて欲しいと願っています。
 私も微力ながらお手伝い。また夢が広がります。ありがとうございました。
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Unknown (マッキー)
2013-07-06 12:37:14
 koderaさん、コメントありがとうございます。
 先日は、お会いしてさまざまなお話を伺えたことは、たいへん参考になりました。ネット上の架空とも言えるkoderaさんと、顔が思い浮かぶkoderaさんとでは、そのコメントの重みが違いますね。どんな世になっても、実際に会って話すことが重要かも知れません。
 また、koderaさんが指導に当たっている某高等学校の理事長・教頭・関係諸先生方との懇談の機会を提供して頂き、有意義な時間を持つことができました。お礼申し上げます。
 また、ネットの先輩として、お褒めの言葉よりも、辛口批評でも結構ですので、今後もご指導くださるよう、お願い申し上げます。
 ありがとうございました。
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