1.情報収集について
NYBAR関連では、受験資格の事前審査、必要な単位の取得、出願、プロボノ、受験…と様々なステップをこなさなければいけません。これらを滞りなくクリアするためには十分な情報収集が必要となりますので注意が必要です。たとえば受験資格は近年どんどん外国人LLMに厳しくなっていまして(単位数の増加、必修科目の増加など)、私の知り合いも何人か受験できなかったり、請願書を出さなければいけなくなったりしています。身近に受験者がいればその人たちに話を聞くのが一番ですが、それが難しい場合はネットの情報を探してみるといいと思います。私がざっと調べただけでも20弱くらいは日本人で受験体験記などを書いている人がいましたので是非探してみてください。(ただし上記のとおり制度が頻繁に変えられているのでその点は割り引いて考える必要があります。)
ちなみに日本のロースクール制度がスタートして旧司法試験が完全になくなってから、日本の法学部卒の資格+LLMだけでNYBARを受けられるのかという問題が良く指摘されていますが、詳細ロジックは不明なものの、2014年7月受験時点では受験はできているようです。このあたりは彼らの裁量で変わってしまう恐れも十分にありますので、その時々の最新の情報を入手してください。
(ちなみにCAの試験も資格が厳しくなったという噂をどこかで聞きました)
そのほか、日本語だけでなく適宜英語で検索をかけることをお勧めします。JD生の集う掲示板
(例えばこちら)や各予備校のNYBARの分析記事など、世の中には参考になる情報が無料でたくさん落ちています。
※以下、ただの受験生のコメントです※
2.MBEについて
ひと昔前はMBEで高めの点数を取って、エッセイの不足分をカバーするというのが基本戦略だったようです。この方針自体に異論を唱えるわけではありませんが、昔に比べると問題の長文化、複雑化、巧妙化の傾向が強まっているように思われます。したがって、MBEだけをブッチギリで対策をすればいいと思っているとたぶん足をすくわれるんじゃないかと思われます。
なお、MBEについては日本人は2000問を解くことを目標とするというトレンドがあるようです。
JD生はどうかというと上記掲示板の
アンケートによれば、こんな感じのようです(8月2日現在)。
>how many mbe questions will you have completed prior to the bar exam?
>100-300 2% [ 3 ]
>301-500 4% [ 5 ]
>501-700 4% [ 5 ]
>701-900 4% [ 5 ]
>901-1100 17% [ 18 ]
>1101-1300 9% [ 10 ]
>1301-1500 20% [ 21 ]
>1500-1800 7% [ 8 ]
>1801-2100 11% [ 12 ]
>2100+ 14% [ 15 ]
>Total votes : 102
個人的な感覚としてはミニマムが1000問で、1500問がちょうどいい感じ、2000問以上は学習効果は低減していくような感じでした。
なぜこんなに問題をこなさなければいけないかというといくつか理由があります。
・一点目はハンドアウトだけではインプット情報として不足があるという点があります。古いノートを使っている人は問題演習を通じて内容のアップデートをする必要もありますし、古い内容を使っていない人でも、そもそもMBEで出るようなすべての情報をそもそも講義などでは教えてくれていませんので、問題演習をこなさないと必要な情報をそろえることができません。
・二点目は本番の試験では3時間で100問の択一問題を解かなければいけないのですが、一問あたり1.8分というのは非ネイティブにはなかなか厳しい時間制限です。となると、早めに問題を解くためのコツをつかむ必要がありますので、練習を繰り返すしかないということになります。慣れてくれば30秒くらいで解ける問題もでてきますので(憲法のInterstate Commerce系とかFederal LawのPreemptionとか)、2分以上かかるような不動産法の問題(複数回譲渡とか)があっても、平均すれば1分30秒くらいまでには短縮が可能です(私は演習も本試験も毎回30分くらいは時間が余りました)。本試験でJD生も2時間を過ぎたあたりから少しずつ退出者が出てきましたので、3時間ギリギリにならないと解けないようには作っていないと思います。
・三点目はアウトプットイメージを知らないとどのようにインプットしていいかが定まらないという点があります。たまに誤解があるのですが、MBEは正確な理解を問う問題ですので、あやふやな理解な人が引っかかりやすいようなトラップに満ちています。他方、聞いてくる問題パターンはある程度は絞られますので、逆にいえば、そういった質問パターンを抑えておくと対策の軽重がつけやすいということになります。(Emanuelの本ではそれらのパターン分析も少しだけしていますのでお勧めです)。
但し、今回の本試験を受けてみたところ、新型や難問の類の問題が結構増量されてきている印象がありました。例えば、いままでの過去問にあったような事例を使いつつも質問する観点がぜんぜん違う角度だったり、典型的な「原告はこの事案でNegligenceの場合に被告を訴えられるか」という質問ではなく、事案だけが書いてあって、「この事案に加えてどの事実があった場合、原告に一番有利となるか」といったような、回答者側で使えそうな法理論を想像させたうえで、かつ、証明に必要な足りないファクトを答えさせるといった捻りの利いた問題が増えていました。本試験に混ざっていたCivilProcedure関連の問題は翌年以降のMBE科目追加のための実験だとは思いますが、それ以外の科目からも過去の問題パターンの丸覚えだけの受験者を落とそうという雰囲気が垣間見えました。もともと丸暗記だけで対応できる試験ではないですが、その傾向が強まっていると思います。
とりあえずお勧めすることがあるとすれば:
・自分なりになぜそのルールがそのようになっているかを納得しながら覚えていく(例:なぜこの契約類型は書面でないといけないのか、なぜこの不法行為の証明にDamagesが必要なのか、なぜこの証拠を提示するためにはDeclarantが法廷にいなくてもよいとするのか)
・この科目では何が問われるかを意識しながら情報を整理していく(例:憲法系は究極的には次の2パターンだけです。政府内権限のぶつかり合いの優先順位。政府権限と私人の権利の衝突の優先順位。)
・似たような概念、例外が多いルール、使用シーンが似通ったルール、名称だけではよくわからない概念はよく狙われるので整理しておく
・ただ問題数をこなすことだけを目標としない
・英語は英語で理解する
といったところでしょうか。
MBEの問題は非常によく練られているので、一文一文がとても中身の詰まったセンテンスになっています。例えば、当事者の属性として商人性が語られた場合、大抵は問題のポイントは各種UCCルールかTortのStrictLiability、ImpliedWarranty, Deliveryの危険負担、Commercial Leaseあたりになりますし、Minor(未成年)が出てきた場合は彼らの契約能力、不法行為の責任能力、刑法上の責任能力、裁判での証言能力あたりのどれかが問題になることが多いです。これらのようなフラグ立てをしながら問題を読んでいけば何度も読み直す必要もないですし、途中で構成要件をつぶしながら読めるので、回答時間を劇的に減らすことができます。というか、これくらいできないと1問あたり1.8分で択一を解くのは不可能です。この点からも数をこなして短時間で回答に至る練習をしておく必要があると思います。
3.エッセイについて
私が受験前にもっともおそれていたのがエッセイでした。MBEは憲法、刑法、刑訴法、不法行為法、不動産法、契約法、証拠法だけですが、論文試験はこれらに加えて様々なNY州法が試験範囲になっており、合計で20以上の法分野について問われる可能性があるからです。かつ、択一であれば、最悪適当に選択肢を選んでも1/4の確率で当たる可能性がありますが、論文はそうはいきません。
他方、グッドニュースとして同じような論点がかなり頻繁に問われていますので、それらを押さえておけば当日に何も書けないという事態は避けられると思います。(といっても、過去に1回以上出た論点を抑えるだけで500弱の論点がありますので、相当しんどいですが…。)ちなみに今年は2軍や3軍級のマイナー論点がいくつも出ていたり、新出の論点が出ていたりしたので、頻度が高いものだけを抑えておくと痛い目に合うと思います。なお内容面では40分でA4で1枚程度の問題を読んで最低500語程度の論文をIRAC形式で書けないとまずいです。(ロースクールと一緒で書けば書くほど加点式で点数が伸びるためたくさん書けるほうがいいです。)
なお、エッセイに関するTipsとしては、当事者の最初の一文字はその当事者の役割になっていることが多いということが挙げられます。例えば、Lから始まる当事者は大抵はLawyerですし、Wから始まるのはWife、Hから始まるのはHusband、Sから始まるのはSellerかSonといった形で、ある程度当事者の名前を見るだけでスト―リーが読めます。
4.MPTについて
これはいわゆるリーガルライティングの試験です。ロースクールや仕事で英語で見解書を書いたことがあればなんとかなると思います。配点も全体の10%ですし。
5.NY択一について
これはMBEと違って素直な問題が多いのですが、有効な対策方法は特にないというのが現状なので、エッセイ対策を重視するほかないと思われます。配点も全体の10%ですし。
いずれにせよ、NYBARは英語「で」受ける「法律の」試験ですので、英語の読み書きに苦手意識がある方は相当早めに準備を開始しないと辛い試験と言えると思います(早めに準備しても辛いですけど…。というか本当にいろんな意味でハードな試験なので、今後チャレンジされる方は相当覚悟して臨んでください。)
とりあえずNYBAR関連の投稿はこんな感じで、あとは何か書いておきたいことを思い出したら投稿しておこうと思います。以上、ご報告でした。明日からは気持ちを切り替えて、結果発表まで試験のことは忘れていきたいと思います!